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岡島秀樹の功績と今後の行方

SHINGO [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/06/06(月) 10:00rss

 今回もまたレッドソックス関連の話題となりますが、今度はリリーフの岡島秀樹投手(以下敬称略)がDesignated For Assignment(略してDFA)の措置を受け、その後マイナーリーグへの降格が決まりました。岡島といえば、チームが2000年代にヤンキースと互角以上に渡り合った時代の名リリーバーとして活躍し、また日本のファンからもメジャーに移籍してからの成績がNPB時代と遜色が無いという高い評価をされるなど、輝かしい実績を持つ著名な中継ぎ投手の一人です。そのデビューから僅か4年後に戦力外とされてしまい、メジャーリーグの厳しさを改めて実感します。
 
ここで岡島がMLBで残してきた実績について、一度振り返ってみましょう。
 

1、セットアッパー岡島の誕生と活躍
 
 2006年のオフ、NPBでフリーエージェントとなった岡島は交渉先の視野をMLBにまで広げ、レッドソックスと2年契約を結びました。日本人メジャーリーガーとして大きな期待が寄せられる中、最初から重要な役割を任される予定ではなく、どちらかというと中盤でのショートリリーフか或いは役割処が決まっていない立場だったように思います。2007年のシーズンではチーム内にベテランのマイク・ティムリン、エンジェルスで実績を作ってきたブレンダン・ドネリーの両右腕がリードした展開で投入されるリリーバーとして考えられていて、岡島の方は実際、開幕してからの5試合ではリードを許していた状況(3度)と大量リード(2度)での登場で、その扱われ方は様子見という感じでした。
 
その岡島が最初に脚光を浴びたのは、4/20の対ヤンキース第一戦でした。この日、終盤に勝ち越したレッドソックスはクローザーのジョナサン・パペルボンに3連投させることを回避する目的で、7-6と僅か1点リードの9回に岡島をマウンドに立たせました。しかも打順はデレク・ジーター、ボビー・アブレイユ、アレックス・ロドリゲスと並ぶ上位打線。この状況はクローザーでも酷な場面だと思いましたが、アブレイユに四球を与えた以外は全て打者を打ち取り見事な火消し役を敢行し、ホールドの前にメジャー初セーブを記録しました。
 
試合後、レッドソックスのテリー・フランコーナ監督は、「相手打者にはまだ対面したことはない未知の戦力だし、コントロールが良くストライクが投げられる投手。よくがんばった」というコメントを残していましたが、この後の2試合でも終盤リードした場面にショートリリーフとして抑え、今度は立て続けにホールドを記録しチームの勝利に貢献しました。加えて、ヤンキースとの次シリーズでも2ホールドを記録。宿命のライバル球団相手に5勝1敗という絶好のスタートを切ったチームの中で、1セーブ4ホールドを荒稼ぎして最高のアピールと共に大きな実績を作ったことにより、フランコーナ監督は早くも岡島をセットアップ役に指名。クローザーのジョナサン・パペルボンに繫げる大事な仕事を任されるようになりました。
 
 以降も活躍は留まるところを知らず、メジャー1年目にしてオールスター選出、チーム最多ホールド、そしてチームの3年振りワールドチャンピオンに貢献と、デビューイヤーに最高の結果を出しました。特にオールスター選出は中継ぎ投手としては異例で、この年の岡島以来選ばれている投手はどの球団にもいません。
この働きによって自身の立場を確立しただけでなく、その後の日本人リリーフ投手に対する価値を高めることにも貢献したのは間違いの無いところです。
 
 
2、ホールド数から見る岡島の価値
 
では、データ上から岡島が貢献してきた仕事振りを見てみることにします。
 
 先発やクローザーと違い、中継ぎが大変地味な役割であることはMLBもそれほど変わりありません。セットアッパーなる言葉は、あくまでもクローザーに繫げるポジションを約束された立場の投手だけが授かる称号で、その地位を確保している投手は1球団につき1名もいないというのが現状です。力量の差といえばそれまでかもしれませんが、通常ブルペンに待機している7名の投手の内、
 
クローザー・・・・・9回
セットアッパー・・・8回
シチュエーション(ショート)リリーバー・・・6~8回
ミドルリリーバー・・・5~7回
モップアップ・・・・・敗戦処理
スウィングマン・・・・先発代行、ロング救援
 
 と役割があり、クローザーはどのチームも固定するとして、それ以外はチーム事情によって負担、分担が変わってきます。ここで中継ぎ投手用のセーブ記録といえるホールドの概略について説明しますが、
 
1、リードした場面で1アウト以上取り、リードを保ったまま降板(6回以降3点差以内)
2、上の状況で6回以降4点差なら2走者、5点差なら満塁の場面で登板
3、点差に関係なく、3イニング以上
 
となっています。



 セーブ記録とは違い、一つの試合で何人もの投手に記録されるのがホールドの特徴です。このホールドが最も付きやすいのはセットアッパーと呼ばれる主に8回を締める役割で、昔日本でも「勝利の方程式」と呼ばれた勝利パターンでの継投策に組み込まれたものです。セットアップの仕事を随時任されていれば、ホールド数はチーム内で最も多く稼ぐことが可能といえる中、岡島は2007~2009の3年間続けてチーム最多ホールドを記録してきました。過去10年間(2001年から)の集計でも、ティムリンに次ぐ2番目の多さです。これだけでも岡島が残してきた結果は十分だといえますが、表を見ても解かるとおり長期に亘ってセットアップを務める投手はいなかったというのが実情でもあります。ですが、これはレッドソックスに限らずどのチームもセットアッパーは短命で、大抵は3年を目途に新しいスタッフに切り替えているのも確かです。
 


 もう一つの表は、MLB全ての投手を対象にした2007年以降(2011年5月25日まで)のホールド数10傑ですが、ここでも岡島は6番目に位置しており、メジャーリーグでも有数のセットアップマンだったことが証明されています。ただ、この中ではセットアップからクローザーに昇格したカルロス・マーモル(カブス)などこのランク的には損をしている投手や、実績まだ3年目のルーク・グレガーソン(パドレス)が10傑に入っているなど、ホールドはセーブほど稼げない記録としても捉える必要があり、ホールド数だけで評価し切れないのは言うまでも無いです。また、チームの勝敗成績やゲームメイキングによってもホールドの輩出状況は異なるため(これはセーブ記録についても同じことがいえます)、ここに載っている投手達は力量もさることながらより恵まれた環境で仕事をしてきたのではないかという検証もする必要があります。
 
 とはいえ、岡島がメジャーで通用した中継ぎ投手だというのは疑う余地も無く、しかもア・リーグ東地区という投手にとって(打者有利な球場が多い理由で)過酷な環境の中で積み残してきた結果については、今後のキャリアにも有利に働いてくれるものと思います。
 
 
3、役割とホールドの中味についての移り変わり
 
 メジャー初年度の岡島は完璧ともいえる仕事振りでしたが、翌2008年は前半戦だけで救援失敗(ブロンセーブ)が6度もあり、一旦は信用が潰え掛けました。その後、ポストシーズンでの好投などによりチームに留まることが出来ましたが、年を重ねる毎に立場は微妙に変化してきました。
 

 
 これは岡島が登板した試合で、マウンドに登ったときのスコア状況を集計したものです。
 
 中継ぎ投手として大事なのは「僅差の場面でどれだけ登場したか」と判断すべきだと思いますので、セーブ、ホールド、救援失敗、タイ(スコア)が占める割合を中心に見て参ります(「リード」と記されているものはセーブ、ホールドが付かない状況での登板ということになります。主に4点差以上開いている比較的楽な場面ということです)。2007年はこれらの状況で59%、2008年は64%、2009年も56%だったのが2010年では35%にまで落ち込んでいました。それに伴い、獲得したホールド数も激減しています(表2参照)。チームとしては次期クローザー候補のダニエル・バードを優先的に起用するためこうした結果は止むを得ないのかもしれませんが、同じ中継ぎでも役割処が変わったところで結果を残せなかったことが、今シーズンに入っての戦力外を予知させるものと捉える必要があると思います。特に昨季はビハインドでの登板機会が増えており、今季は戦力外となる前までの7試合で5登板がビハインド展開での登場でした(残り2回はリード、タイスコアでの場面)。チーム全体でもブルペン陣が不調な中で結果を残せませんでした。
 
 

 
 データとしてもう一つ、岡島がホールドを獲得した状況でのアウトカウント数をイニング別で比較したものです。2007年は全体の約80%が8回によるもので、2008年も70%を超える数字だったのに対し、2009年頃から徐々にセットアップの立場から離れていったことが確認できます。前述のバードがデビューしたのもこの年ですが、8月に本来はクローザーとして著名な投手のビリー・ワグナーをトレードで獲得したことも大きな理由の一つでした。翌2010年はバードが完全セットアップ固定となり、より登板状況の読めなくなった立場で防御率はもとよりWHIPが大幅に悪化(1.72)。この数字以外にも昨年は先頭打者に対する結果が芳しく無いと感じていたので、それについ調べてみたのですが、
 
先頭打者被打率.346、
被OPS.998
(56試合登板の内、52打数18安打3本塁打6二塁打)
 
 という結果では、ショートリリーフにも適さないという判断を下されたとしても仕方の無いことだったように思います。そして今季は対左打者被打率.364、被OPS.916という結果のまま今回のマイナー降格に至ることとなりました。
 
 年間成績を見る限りでは極めて悪い成績とも思えなかったのが、部分的なデータを解くと途端に見えてきた状況の中、岡島の今後はどのような展開になっていくのでしょうか。現実的にはマイナーオプション(降格措置の制限。一選手につき3年間分の猶予がある)が摘要される間は40人枠に入るためには有利な材料となりますが(今季初めてオプションを摘要)、キャリアを積み直すには良い環境に巡り合うことも必要かと思います。レッドソックスがそうした球団であるかどうかは断言出来ませんし、かといって投手有利な球場を持つチームがベストともいえません(飽くまでもロスター状況によります)。一つだけいえることは、岡島がメジャーで再び活躍するためには這い上がらなければならないということです。

コメント


コメント欄にて一件補足させていただきます。
中央部分、岡島投手の登板時状況と題したグラフ内で「リード」と記されているものはセーブ、ホールドが付かない状況での登板ということになります。主に4点差以上開いている比較的楽な場面ということです。

Posted by SHINGO at 2011/06/06 16:17:34 PASS:

>SHINGOさま

追記しておきました。
引き続きよろしくお願いいたします。

Posted by 岡田友輔 at 2011/06/06 16:39:01 PASS:
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