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勝利投手のカラクリ~Part1

SHINGO [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/07/21(木) 10:00rss

 前コラム「エース対決」では勝敗に拘ったリポートでしたが、今回はそのシステム(規定)が現在プロ野球のゲーム上で、どのように生産されているのかを検証するものです。尚、当サイトにて同じような分析が既に行われています。そのコラムも合わせてご覧いただければさらにご理解を深めていただけるものかと存じます。
 
ダルビッシュは20勝できるのか?Part.1
ダルビッシュは20勝できるのか?Part.2
 
 
 このコラムでは、著者のStudent氏が防御率と援護率(援護点)について説明されておりますが、私の方では対戦相手となった先発投手の防御率(以下、対戦防御率)を軸に展開させていただきます。これはもちろん、味方の打線が何点援護するかではなく相手の投手が何点にまで抑えたのかを示すものですから、「投げ合い」という視点に向くことになります。対峙する投手達の顔ぶれによっては攻略し易くもなり、また逆の場合もあります。既に前コラムでは、「マッチアップについてはランダム性が非常に高い」と分析しており、意図的に厳しい相手と対峙するわけではないとの結論は得ています。しかし、ランダムといっても偶然の産物により他チームのエース級と当る回数が多かったり、また谷間の先発要員や不調な投手との対決に恵まれたケースもあるかもしれない。具体的には、所属チームや年度によって不平等が生じている可能性も考えられます。
 
前回と同じく、ここではパ・リーグのエース級投手のデータを基に検証を進めていきますが、
 
「4年連続防御率1点台のダルビッシュが昨年12勝だったのはどうして?」
「2008年に岩隈が20勝したのは実力?」
「成瀬が16勝1敗だった2007年のデータは?」
「各年度の最多勝投手は対戦相手に恵まれていたのか?」
 
といった疑問が解決すれば良いかなと思います。
 
  
1.ダルビッシュ有のケース
 

 
グラフは全ての投手に同じデータを摘要していますので、先ずはその説明から入ります。
 
①該当する投手の年間防御率
②相手側投手の対戦防御率(対戦相手防御率)
③リーグ平均防御率
④対戦投手の年間防御率(平均)
 
 さて、2007年から4年連続して防御率1点台を記録しているダルビッシュ個人の勝敗は2010年だけが12勝8敗とやや平凡な成績となっています。その理由は②の対戦間防御率を見れば明らかで、この年だけが2.64と遥かに高くなっており、それはサポートすべき打撃陣の不振だったのか、それとも対戦相手(投手)に恵まれなかったのか、この理由も④で判明しています。
 
 つまり、ダルビッシュと対戦した投手は毎年リーグ平均からそれほど離れない程度のごく標準的な組み合わせにも関らず、どういうわけが2010年だけは奮闘が目立ったということになります。もちろん、これは打撃陣の不振に理由を求めることも可能でしょう。この年のイメージが「ダルビッシュの登板時に限り得点力が落ちてしまう」といった定説を産み出した根拠であり、これまでに20勝に届かなかったとか最多勝のタイトルを獲得した歴が無いといった理由が打線のサポート不足にあるのかというと、少なくとも2010年以外はリーグ平均とほぼ同等の援護はしているのです。
 
 Student氏のコラムによると、防御率1点台の投手が平均3.00~5.00の援護点を得ると12.8~16.0勝という計算を行なっておられますが、過去4年間のダルビッシュの勝利数はまさにこの範囲で収まっていて、基本的にはリーグ平均並みのサポートは受けていると思って良いでしょう。20勝に届かない、最多勝のタイトルが無いという理由はこの後に出てくる投手の分析で次第に現れてきます。
 
 今季は打線がリーグ平均以上のサポートをしていると断定し、対戦間防御率は昨年の0.85から1.67にまで上昇しています。その結果ここまで13勝2敗というかなりのペースで勝ち星を量産しています。
 
 
 
2.岩隈久志のケース
 

 
 21勝4敗という記録を残した2008年、岩隈の対戦相手防御率はリーグ平均3.83(グラフ④)とほぼ変わりなく、これを楽天打線が攻略したことで対戦間での防御率は3.32ポイント(グラフ①-②)という大きなアドバンテージを作ったことが勝敗に大きな影響を及ぼしました。翌年は岩隈自身も若干成績を落としたため、対戦間防御率の差は縮まり勝ち星も13勝に留まりました。
 
 さらにその次の年は防御率2.82に盛り返した岩隈に対し、対戦相手も3.32と数字を上げてきたため対戦間防御率は0.52から0.40へとさらに縮まり、それに併行して勝敗関係も悪化していきます(10勝9敗)。2009年と2010年は対戦相手のレベルがリーグ平均を0.5ポイントも上回っていることがわかり、過去2年間は比較的厳しいマッチアップを余儀なくされていたこともわかります。こうしたことから、仮に2008年の対戦相手防御率がその年のダルビッシュ(3.78)と同じ水準だったとしたら、20勝に届いた可能性は極めて低いものだと判断出来そうです。
 
今季は故障によりサンプルケースが少ないため、今後の動向に注目しましょう。
 

3.杉内俊哉のケース
 

 
 ダルビッシュと並び過去4年間で一定して高水準の成績を残していますが、2008年は防御率2.66で10勝8敗、2010年は防御率3.55で16勝7敗という数字の逆転現象が起きています。これもグラフにした結果が鮮明に出ていますが、2008年はリーグ平均より0.52もポイント高い相手と対峙し、杉内自身よりも良い結果を残されてしまった影響が反映してしまった様子です。反対に、2010年はリーグ平均から0.17ポイント上回る相手を打線が攻略し、対戦相手防御率を5.50にまで落としたことが勝利数に結びついていたといえるでしょう。
 
今季は出足で躓いたように見えましたが、5月以降は5勝2敗とデータに沿った成績に近付きつつあります。
 
 
4.涌井秀章のケース
 

 
 2007年から17、10、16、14勝とやや隔年傾向のある成績です。毎年リーグ平均を上回る相手との組み合わせから「エース対決」の項でもあったように、他球団の主力投手との対戦が多かったことを表しています。味方打線は常に平均以上のサポートをしていますが、涌井本人の防御率に浮き沈みがあるため勝利数もそれに準じたものとして結果が出ていたものと考えられます。言うなれば、自己責任の度合いが強い傾向だといえるでしょう。
 
 今季は対戦間での防御率(グラフ①-②)が0.07と極めて小さく、相手投手を上回る内容とはいえない点が負け越している原因にもなっています。

 
本日はここまでにして、明日は田中・成瀬・金子投手のデータと勝利という指標について考えていきましょう。

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