スターマップ
大里隆也 [ 著者コラム一覧 ]
1.スターマップの考え方
~近年、データ環境の改善と統計分析の介入によって、野球に対する様々な指標が生み出されている。しかし、選手のタイプや能力を読み取るにはいくつもの指標を調べなければならない。数字を読みなれている人にはたいした事のない作業かもしれないが、数字嫌いの人は数字が並んでいるだけで嫌になるであろうし、多大な労力を費やす羽目になる。今回、取り上げる“スターマップ“とは選手のタイプと得点能力が一目で分かる図のことである。数字嫌いな方もこの図で選手のタイプや得点能力や近年の野球の傾向などについて理解してもらえるはずだ。~
選手タイプと得点能力の理解は、その選手をより知れるだけではなく、周りの選手との比較やチームの傾向などを知ることができる。この「タイプ」と「創出した得点数」が一目で理解できる出来る図“スターマップ”を紹介し、2010年度の打撃の傾向を見ていく。
まず、スターマップについて紹介する。なお、このスターマップはJohn Burson氏が作成したもので、ACTA SPORTSのGRAPHICAL PLAYER2008を参考にしている。スターマップは円の位置で“タイプ”を、円の大きさで“創出した得点数”を表す図である。打撃タイプは「長打タイプ」「出塁タイプ」「俊足タイプ」に大きく分けられると考え、これらを表す指標である長打力(=長打率-打率)、出塁率、盗塁率(=盗塁数/ 出塁数)を軸に取り各選手の位置を決定する。特徴のある選手は中心から離れて分布するため、例えば長打力が飛び抜けて高い選手は長打力の軸の先の方へ分布される。円の大きさはwOBAを基にしたwRCを用いる(詳細は用語集を参照)。
wRCは
wRC=(((対象選手のwOBA-リーグwOBA) / 1.15) + (リーグ総得点/リーグ打席数))×対象選手の打席
wOBA= (0.72×敬遠を除いた四球+0.75×死球+0.90*単打+0.92×失策出塁+1.24×二塁打+1.56×三塁打+1.95×本塁打) / 打席数)
によって算出される指標であり、「打者が“シーズン中”そのチームにもたらした総得点数」を表している。打席多いほど与えられる機会が多いため“打席あたり”の得点能力ではないことに注意してほしい。図では、円が大きいほどその選手の創出した得点数が高いことを表している。
2.2010年のプロット
実際に2010年度のスターマップについて見ていこう。2010年度打数300以上の選手で作図したのが次の図である。

ラミレス周辺の選手は長打タイプ、青木周辺の選手は出塁タイプ、石川周辺の選手は俊足タイプ、中心周辺の選手は全てをこなす万能タイプ、和田周辺の選手は出塁能力も長打能力も高いタイプをそれぞれ表している。また、円の大きさから創出した得点数が把握でき、最も高い得点数を有しているのは和田である。
余談だが、マートンの位置に疑問を感じるかもしれない。マートンは出塁タイプに分類されている青木や西岡と同じく200安打を達成しているが、位置は中心に近い。この様に分布する原因は四球が少ないため出塁率が突出して高くはないからである(出塁率、マートン:0.395、青木:0.435、西岡:0.423、和田:0.437)。
3.チーム別のプロット
次に、チーム別の傾向を見ていく。チーム別に分けたのが次の図である。


これらから、2010年度の各チームの傾向が見られる。巨人は円の大きい選手が上方に多く分布していることから長打力の高いチームであることが分かる。広島は俊足タイプが多いが、各選手の円が小さいことから創出した得点数に欠けている。広島が今の戦力で上位になるには打撃面、特に長打の強化は必須なのである。ロッテの傾向も分かりやすい。西岡や井口などロッテの選手は出塁軸付近に分布していることから、長打で走者を返す戦術ではなく“出塁して点数を取る”戦術であったことが分かる(井口が西岡と同じ位置にいるのは四球が非常に多いため出塁率が高いから)。全体の傾向としては、両リーグの3位以上のチームには円の大きい選手が多いことから、上位に入るためにはある程度の打撃力が必要であることが分かる。
4.ポジションの傾向
最後に、ポジション別での傾向を見る。ポジション別で分けたのが次の図である。

一塁手は出塁と長打の軸付近に分布していることや二塁・遊撃手は長打の軸に分布しづらいことなどから、守備位置ごとに傾向がある。長打を求められている一塁手、出塁や守備を求められている二塁・遊撃手、ポジションによってチームが求めている最低限の打力が存在することが読み取れる。しかしながら、上位のチームは同じポジションの中でも創出した得点数が高い選手が多い。特に、図の下位に分布しやすく円が小さくなりやすい捕手の中での“阿部”の長打力の高さと円の大きさや、俊足タイプに分類されやすい二塁・遊撃手の中での“西岡”や“井口”、“坂本”の打撃力などは他のチームにない強みであり、その選手の影響はシーズンの結果からも大きいことが分かる。
~近年、データ環境の改善と統計分析の介入によって、野球に対する様々な指標が生み出されている。しかし、選手のタイプや能力を読み取るにはいくつもの指標を調べなければならない。数字を読みなれている人にはたいした事のない作業かもしれないが、数字嫌いの人は数字が並んでいるだけで嫌になるであろうし、多大な労力を費やす羽目になる。今回、取り上げる“スターマップ“とは選手のタイプと得点能力が一目で分かる図のことである。数字嫌いな方もこの図で選手のタイプや得点能力や近年の野球の傾向などについて理解してもらえるはずだ。~
選手タイプと得点能力の理解は、その選手をより知れるだけではなく、周りの選手との比較やチームの傾向などを知ることができる。この「タイプ」と「創出した得点数」が一目で理解できる出来る図“スターマップ”を紹介し、2010年度の打撃の傾向を見ていく。
まず、スターマップについて紹介する。なお、このスターマップはJohn Burson氏が作成したもので、ACTA SPORTSのGRAPHICAL PLAYER2008を参考にしている。スターマップは円の位置で“タイプ”を、円の大きさで“創出した得点数”を表す図である。打撃タイプは「長打タイプ」「出塁タイプ」「俊足タイプ」に大きく分けられると考え、これらを表す指標である長打力(=長打率-打率)、出塁率、盗塁率(=盗塁数/ 出塁数)を軸に取り各選手の位置を決定する。特徴のある選手は中心から離れて分布するため、例えば長打力が飛び抜けて高い選手は長打力の軸の先の方へ分布される。円の大きさはwOBAを基にしたwRCを用いる(詳細は用語集を参照)。
wRCは
wRC=(((対象選手のwOBA-リーグwOBA) / 1.15) + (リーグ総得点/リーグ打席数))×対象選手の打席
wOBA= (0.72×敬遠を除いた四球+0.75×死球+0.90*単打+0.92×失策出塁+1.24×二塁打+1.56×三塁打+1.95×本塁打) / 打席数)
によって算出される指標であり、「打者が“シーズン中”そのチームにもたらした総得点数」を表している。打席多いほど与えられる機会が多いため“打席あたり”の得点能力ではないことに注意してほしい。図では、円が大きいほどその選手の創出した得点数が高いことを表している。
2.2010年のプロット
実際に2010年度のスターマップについて見ていこう。2010年度打数300以上の選手で作図したのが次の図である。

ラミレス周辺の選手は長打タイプ、青木周辺の選手は出塁タイプ、石川周辺の選手は俊足タイプ、中心周辺の選手は全てをこなす万能タイプ、和田周辺の選手は出塁能力も長打能力も高いタイプをそれぞれ表している。また、円の大きさから創出した得点数が把握でき、最も高い得点数を有しているのは和田である。
余談だが、マートンの位置に疑問を感じるかもしれない。マートンは出塁タイプに分類されている青木や西岡と同じく200安打を達成しているが、位置は中心に近い。この様に分布する原因は四球が少ないため出塁率が突出して高くはないからである(出塁率、マートン:0.395、青木:0.435、西岡:0.423、和田:0.437)。
3.チーム別のプロット
次に、チーム別の傾向を見ていく。チーム別に分けたのが次の図である。


これらから、2010年度の各チームの傾向が見られる。巨人は円の大きい選手が上方に多く分布していることから長打力の高いチームであることが分かる。広島は俊足タイプが多いが、各選手の円が小さいことから創出した得点数に欠けている。広島が今の戦力で上位になるには打撃面、特に長打の強化は必須なのである。ロッテの傾向も分かりやすい。西岡や井口などロッテの選手は出塁軸付近に分布していることから、長打で走者を返す戦術ではなく“出塁して点数を取る”戦術であったことが分かる(井口が西岡と同じ位置にいるのは四球が非常に多いため出塁率が高いから)。全体の傾向としては、両リーグの3位以上のチームには円の大きい選手が多いことから、上位に入るためにはある程度の打撃力が必要であることが分かる。
4.ポジションの傾向
最後に、ポジション別での傾向を見る。ポジション別で分けたのが次の図である。

一塁手は出塁と長打の軸付近に分布していることや二塁・遊撃手は長打の軸に分布しづらいことなどから、守備位置ごとに傾向がある。長打を求められている一塁手、出塁や守備を求められている二塁・遊撃手、ポジションによってチームが求めている最低限の打力が存在することが読み取れる。しかしながら、上位のチームは同じポジションの中でも創出した得点数が高い選手が多い。特に、図の下位に分布しやすく円が小さくなりやすい捕手の中での“阿部”の長打力の高さと円の大きさや、俊足タイプに分類されやすい二塁・遊撃手の中での“西岡”や“井口”、“坂本”の打撃力などは他のチームにない強みであり、その選手の影響はシーズンの結果からも大きいことが分かる。
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Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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