OPS
Baseball Lab [ 著者コラム一覧 ]
プロ野球は勝率の上下によって順位を決定している。そのため、勝率を高めることが重要である。しかし、勝率を高めるのに何が必要な能力か。
現在、セイバーメトリクスの発展によりさまざまな指標が提案され、米国ではそれが利用されています。このサイト上でもさまざまな指標が使われていますが、今回は打撃指標OPSを用いて、根本的な考えについて触れていきます。
紹介する前に認識してほしいのが2つあります。1つ目は1試合や1カ月などなど短い期間でチームの強さや選手の能力などを正確に測ることは難しいことです。例えば、ある打者の打率を初めの10打席で決定することは、“たまたま”半分が安打になってしまったり、“たまたま”全打席凡打になってしまったりするので、10打席だけでは全くあてになりません。この“たまたま”の要因を取り除き実力を把握するためには、長い期間で考察をしなければなりません。取り除く期間に明確な基準はありませんが、今回は1シーズン毎のデータを用いて話を進めていきます。
認識してほしいことの2つ目は相関係数についてです。相関係数とはある2つの物事に関する関連の強さを表す指標で、絶対値が1に近いほど関連が強いことを表します。次の図は関係数の異なる散布図です。



図の中の直線は散布図の真中を通る直線であり、相関係数が大きければこの直線の近くに分布しやすくなります。つまり、相関が大きいというのは「横軸の値が大きければ縦軸も大きく、横軸が小さければ縦軸も小さい」という結論がより強く言えるということです。
さて、ここから本題の「勝率を高める」に入っていきます。勝率と関連が強いのが“得失点差”です。図は、横軸に平均得失点差、縦軸に勝率を取って、1980年から2010年のデータを用いてシーズン終了時の勝率と平均得失点数を散布図に表したものです。

勝率と平均得失点数との相関係数をみると0.918と非常に大きな関係があり、直線のあてはまりも良いです。当たり前のことですが、得点の多いチームは勝率が高く、失点の多いチームは勝率が低いという関連があることが分かりました。
では、より多くの得点をするのに何が必要かを考えていきましょう。得点と関連がありそうで、セイバーなどになじみがない方がすぐに思いつく指標と言えば、“打率”だと思います。まずは、打率と得点の関係を調べていきましょう。図は横軸に打率、縦軸に平均得点を取り、1980年から2010年までの打率と平均得点を散布図に表したものです。

打率が大きければ得点数も多いという傾向があることが分かります。しかし、シーズンの平均打率と平均得点の相関係数は0.776とそこまで大きくはなく、直線に対して散らばりが大きくなっています(特に打率が高いところ)。したがって、「打率を高くすると平均得点も大きくなる」とはっきり言えないのです。
では、打率より得点数を確実に大きくできる指標は何か?この問いに答えるのがOPSです。OPSは長打率と出塁率の和という非常にシンプルな指標になっています(長打率と出塁率が分からない方は用語集をご覧ください)。次の図は1980年から2010年までのOPSと平均得点を、横軸にOPS、縦軸に平均得点を取り、散布図に表したものです。

OPSと平均得点との相関係数は0.941と非常に大きな値で、直線の近くに分布していて散らばりが小さくなっています。これより、OPSは平均得点に対して打率よりも大きな関連があり、OPSが高いと平均得点も確実に大きくなることが分かります。
“勝率を上げるには、得失点を大きくする。得点を大きくするにはOPSを大きくする。”今回は失点については割愛させていただきましたが、得点に関してはOPSを大きくするような打線にすれば良いことが分かったと思います。
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現在、セイバーメトリクスの発展によりさまざまな指標が提案され、米国ではそれが利用されています。このサイト上でもさまざまな指標が使われていますが、今回は打撃指標OPSを用いて、根本的な考えについて触れていきます。
紹介する前に認識してほしいのが2つあります。1つ目は1試合や1カ月などなど短い期間でチームの強さや選手の能力などを正確に測ることは難しいことです。例えば、ある打者の打率を初めの10打席で決定することは、“たまたま”半分が安打になってしまったり、“たまたま”全打席凡打になってしまったりするので、10打席だけでは全くあてになりません。この“たまたま”の要因を取り除き実力を把握するためには、長い期間で考察をしなければなりません。取り除く期間に明確な基準はありませんが、今回は1シーズン毎のデータを用いて話を進めていきます。
認識してほしいことの2つ目は相関係数についてです。相関係数とはある2つの物事に関する関連の強さを表す指標で、絶対値が1に近いほど関連が強いことを表します。次の図は関係数の異なる散布図です。



図の中の直線は散布図の真中を通る直線であり、相関係数が大きければこの直線の近くに分布しやすくなります。つまり、相関が大きいというのは「横軸の値が大きければ縦軸も大きく、横軸が小さければ縦軸も小さい」という結論がより強く言えるということです。
さて、ここから本題の「勝率を高める」に入っていきます。勝率と関連が強いのが“得失点差”です。図は、横軸に平均得失点差、縦軸に勝率を取って、1980年から2010年のデータを用いてシーズン終了時の勝率と平均得失点数を散布図に表したものです。

勝率と平均得失点数との相関係数をみると0.918と非常に大きな関係があり、直線のあてはまりも良いです。当たり前のことですが、得点の多いチームは勝率が高く、失点の多いチームは勝率が低いという関連があることが分かりました。
では、より多くの得点をするのに何が必要かを考えていきましょう。得点と関連がありそうで、セイバーなどになじみがない方がすぐに思いつく指標と言えば、“打率”だと思います。まずは、打率と得点の関係を調べていきましょう。図は横軸に打率、縦軸に平均得点を取り、1980年から2010年までの打率と平均得点を散布図に表したものです。

打率が大きければ得点数も多いという傾向があることが分かります。しかし、シーズンの平均打率と平均得点の相関係数は0.776とそこまで大きくはなく、直線に対して散らばりが大きくなっています(特に打率が高いところ)。したがって、「打率を高くすると平均得点も大きくなる」とはっきり言えないのです。
では、打率より得点数を確実に大きくできる指標は何か?この問いに答えるのがOPSです。OPSは長打率と出塁率の和という非常にシンプルな指標になっています(長打率と出塁率が分からない方は用語集をご覧ください)。次の図は1980年から2010年までのOPSと平均得点を、横軸にOPS、縦軸に平均得点を取り、散布図に表したものです。

OPSと平均得点との相関係数は0.941と非常に大きな値で、直線の近くに分布していて散らばりが小さくなっています。これより、OPSは平均得点に対して打率よりも大きな関連があり、OPSが高いと平均得点も確実に大きくなることが分かります。
“勝率を上げるには、得失点を大きくする。得点を大きくするにはOPSを大きくする。”今回は失点については割愛させていただきましたが、得点に関してはOPSを大きくするような打線にすれば良いことが分かったと思います。
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Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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