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Baseball Lab優秀守備者賞~総評Part1

Baseball Lab [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/01/27(木) 10:00rss

 先週からデータに基づいて各ポジションの評価を行ってきましたが、読者の皆さまはどう感じたでしょう。今回はゾーンデータというNPBではあまり扱われなかった視点からの解析が加わり、これまで(レンジデータおよびBatted Ball Stats)よりも多角的に守備を見つめられたのは大きな成果と考えています。ゾーンデータの優れた点は、守備者の周辺に飛んできた打球を分母と出来る事です。これは打撃に例えると、打席の様なものでBatted Ballデータからさらに踏み込んで守備の力を計る事が出来ます。しかし、まだまだゾーンデータも解析が始まったばかりで心もとない内容とも言えます。そのような状況では、レンジやBatted Ballなどの違った視点を組み合わせることで、守備評価を立体視できるとおもわれます。
 
今回のBaseball Lab優秀守備者賞とゴールデングラブ賞の比較です。
優秀守備者賞では基本的にポジションで最もうまいであろう選手を選出しましたが、ゴールデングラブ賞との比較の為、リーグで最も投票結果の良かった選手をそれぞれのポジションに加えています。
 

 
 外野手は選出規定が違うため参考程度になりますが、選手が一致するポジションがやや少ないように見えます。これは、評価する基準が等しくないため当然の結果とも言えます。これまで守備は上手いと漠然とイメージされたものでしたが、各種データを分析することで、守備力とイメージされてきたものを見える形(数値として)に変えて捉える割合は増えていきます。これまでのアウトを取った数やゴロ・フライ・ライナーの処理割合にゾーンデータをプラスする事はまさに階段を一つ上がる行為になります。ゾーンデータを上手く分析することで選手の能力をより評価出来るようになるでしょう。
 
 
今回の守備評価について各著者は全体を見つめ次のようにコメントしています。
 
◎蛭川氏総評
 
数値評価の結果全体を見ての感想だが、なかなか守備指標の特性をよく伝えてくれる選手たちが良い成績をおさめているという印象である。何人か特徴的な選手を取り上げてみたい。
 
 まず当方が捕手の1位に選んだのは阿部慎之助だが、阿部はかつて守備を酷評されることが多かったが、当方の評価にいわゆる「リード」は含めないものの特定の面を冷静に数値化する分には決してチームにマイナスをもたらしてきた捕手ではない。1位は阿部にしては出来過ぎにしても、はたして捕手の守備というものが従来言われているほど重要であるかどうかを含め指標を取り入れて多面的に守備を考える上で示唆を与える結果である。
 
 内野の花形である遊撃手でトップになったのは鳥谷。鳥谷は何故か働きのわりに印象が地味な選手で、以前から過小評価を感じていた。四球が多く打率のわりに攻撃面での貢献が大きいのに加え、守備でも平均以上の働きはしてきた選手である。このレベルの選手が継続的に出場することによってチームが得る利益は、大方のファンが想像するより大きなものである可能性が高い。ファインプレーの数をかぞえるような見方からすれば地味でも、確実にアウトを奪っていれば守備指標では良い結果を残せる。
 
 センターでトップにランクされた赤松はホームランキャッチで名を馳せたが、指標では以前からずば抜けた成績を叩き出している。去年出場が多くなかったのは守備指標的には不運なことだったが、それでもさすがの数値を残した。現実は意外と単純なものというか、外野の守備指標に関しては細かい技術云々よりも脚力・若さと正の相関が強いように思われる。技術論も大切だが野球でも基本的な運動能力は重要な位置を占めるようである。赤松は卓越した脚力の裏打ちがあり、今後もどれだけの数字を出すか楽しみな選手である。
 
 ライトの廣瀬は守備範囲もさることながら、肩による進塁阻止(アームレーティング)で非常に優れた結果を出している。走者を警戒させる肩といったものは従来「数字に表れないもの」のような扱いをされてきた。しかし慎重にデータを集めればUZRのように定量的に評価することが可能である。このような評価をするかしないかで、表れてくる選手の価値は確実に違うものになる。
 
 最後に、なんといっても今回ゾーンベースの指標であるUZRによって評価を行なえたことの意義を非常に重く感じている。守備は数字で評価できないとする考え方は根強くあるが、レンジファクターのように運の介入が大きい指標はともかくとして具体的に守備者の周辺に飛んだ打球を数えてそれをどれだけ処理したかによって評価を行なえばその結果は無視できないところがある。いくらプレーを見る限り上手く見える選手でも、実際に打球を処理し失点を防ぐことに貢献できていなければ意味がない。各選手の優劣だけでなく、野球全体を見る上で守備がどのくらい重要かなどを考える材料にもしていきたいところである。
 
 なお、以前コラムに書いた守備得点とUZRの関連性だが、2010年のデータに関しては相関係数で二塁手.68、三塁手.55、遊撃手.69、左翼手.60、中堅手.59、右翼手.23。UZRを「正解」として守備得点を代用と考えるには苦しい数字だが、それぞれに異なる特性があり別の角度から守備の真実に迫っていることを考えるとある程度納得がいくところかもしれない。サンプルサイズを大きくした場合に両者の関係がどうなるかも今後調査したいところである。この種の関連をどう捉えるかでWin Sharesなどの数字から受け取る意味も違ってくるだろう。
 
 指標を理解することはわずらわしく感じられるかもしれないが、根本的には野球の世界で起きている出来事をいかに整理し解釈していくかという広い意味の問題である。客観的に野球を分析しようとするとき、UZRなどの指標は強力な武器になり得る。
~蛭川氏の総評引用終わり~


◎森嶋氏の総評(一部)

 まず現在のあらゆる守備指標が完全ではないことは当然として、そうであっても一定の結論を出せたことに意義はあるのではないかと思います。いわゆる「野球通」の間で守備力に関する統一見解が存在すれば、それほど需要のあることをやっているとも思えません。がしかし現状を見れば、素人が数字いじりを始めようと思う動機として、「ともかく何か意味のある結論を出してくれよ」というのは結構重要なことであろうと思います。
 
 同時に、総合評価だけでなく、「ゾーンだからこそわかること」を見てもらえるよう意識しました。その一例が、コラムの遊撃手の分類です。遊撃手評価担当に決まった時点で「よし、遊撃手をタイプ別に分類しよう」というのは考えていたのですが、実は分け方の基準として、本稿で示した「二遊間型」「三遊間型」以外に、以前自分が自身のHPで行った分類「堅実型」と「ファンタジスタ型」というのも考えておりました。
 
 例えば、グラフを見るとわかるのですが、荒木雅博などは定位置のゴロで強い割に守備範囲外縁のゴロにあまり強くない、という傾向があり、「堅実型」と言ってもよかったかもしれません。「堅実型」と「ファンタジスタ型」という分類があり得た場合、このタイプの差がzone系指標とrange系指標の差の一因となっている可能性があるので,このへんも後に機会があればコラムの続編で突っ込んでみようかなとは思います。
~森嶋氏総評の引用終わり~


 蛭川・森嶋両氏が振り返っているように、ゾーンデータは選手の守備をより鮮明にイメージさせます。まだまだ改善する点はありますが、もたらすものの大きさも各著者のリポートから感じ取っていただけたのではないでしょうか。
あすは具体的に問題点・概ね一致した見解・今後期待される事などを少し細かく見ていきましょう。

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