三振の多い投手の特徴
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1.はじめに
投手の特徴を挙げるときに,「あの投手は打たせて取るタイプだ」とか「三振の取れるタイプだ」という分類をすることがよくあります。この分類を客観的にできないか?ということでこれまで分析をしてきました。
分析の結果,投手の特徴を大きく4つに分類することができました。
・平均的なタイプ ・三振が多いタイプ
・フライが多いタイプ ・ゴロが多いタイプ
今回はこの中で,三振が多いタイプに注目して分析していきたいと思います。
三振が多いタイプには更に2つのタイプがあります。ゴロが多い三振Ⅰ型と,フライの多い三振Ⅱ型です。
表1には,打者との対戦成績(本塁打・四死球・三振・ゴロ・フライ・ライナー)の割合を示します。

これらのデータをグラフ化したものを図1に示します。()内の数値は人数です。

6つのデータの中で,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の特徴を分けているのがゴロとフライの割合であることがわかります。
2.三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の投手の比較
それでは,これら2つのグループの成績はどのようになっているのでしょうか。表2に各グループの防御率と被打率を示しています。

2つのグループの成績にわずかな差はありますが,統計的に見れば誤差の範囲に収まる成績です。つまり,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の成績は同程度であるといえます。ということはやはり,この2つのタイプの違いはちょっとした個性に過ぎないのでしょうか。
結論を出す前にもう少し分析をしてみたいと思います。三振Ⅰ型と三振Ⅱ型に分類された投手125名を対象に,投手を分類する際に用いた6つの打者との対戦成績(本塁打・四死球・三振・ゴロ・フライ・ライナー)のデータと防御率,被打率との相関分析を行ってみました。結果を表3に示します。

これらのデータをいくつか散布図にしてみます。図2-1と図2-1には,本塁打と三振と防御率の関係を示します。


これら図より,三振型の投手は本塁打が少ない,または三振が多いと防御率が低いことがわかります。本塁打と三振は三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の間で差の小さいデータだったのですが,図を見てもわかるように,両グループが混じり合っていることがわかります。
それでは,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の間で差の大きかったゴロとフライのデータではどうなるでしょうか。図3-1と図3-2にデータを示します。


これらの図より,三振型の投手はゴロが多い,またはフライが少ないと防御率が低いことがわかります。そして,本塁打と三振のデータとは異なり,こちらでは棲み分けがはっきりしています。ゴロとフライと防御率の関係を見る限り,三振Ⅰ型の特徴の方が優れていると見ることができます。
続いて,被打率についても同様に分析します。図4-1と図4-1には,本塁打と三振と被打率の関係を示します。


本塁打と三振と被打率の関係は,防御率とほぼ同じです。では,ゴロとフライについてはどうでしょうか。図5-1と図5-2にデータを示します。


これらの図より,三振型の投手はフライが多いと被打率が高いことがわかります。フライが多いとヒットになり易いということです。一方,ゴロと被打率の間に相関関係は認められませんでした。この結果は,ゴロの多さはヒットになり易さとは関係がないと言うことです。
3.まとめ
以上の結果をまとめると,三振型の投手は
・本塁打が少ない,または三振が多いと防御率が低い
・ゴロが多い,またはフライが少ないと防御率が低い
・本塁打が少ない,または三振が多いと被打率が低い
・フライが多いと被打率が高い,ゴロの多さはヒットになり易さとは関係がない
ということがわかりました。そして,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の違いは,
・防御率,被打率の成績に差はない
・本塁打,三振のデータでは大きな違いは見られない
・ゴロ,フライのデータでの違いが大きい
ということがわかりました。以上のデータをまとめると,
三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の間に大きな成績の違いは無いが,ゴロが少なくフライの多い三振Ⅱ型の方が,防御率・被打率が高くなりやすいといえます。したがって,どちらかといえば三振Ⅰ型の投手の方が優れているといえると思います。
4.このデータをどのように活かすか
最後に,今回の分析の結果をどのように活かして行けば良いのかを考えてみたいと思います。
まず,今回の分析からいえることは,三振が多い投手の中にも,どちらかといえばゴロが多いタイプとフライが多い2種類のタイプがいるということです。そして,フライよりはゴロの多い方が優秀であるということがわかりました。
この結果から,投手の特徴を理解するときに「三振の多さ」だけにこだわるよりも,それに加えてゴロとフライの割合にも注目した方が良いといえると思います。フライが多くなると被打率が高くなることは示しましたが,本塁打も増える(相関係数= .309)ので,できれば三振が多く,ゴロが多い投手の方がお勧めです。
このようなデータがあると,これまでの分析で用いているように投手の特徴を6種類の打者との対戦成績から見ていくことの重要さが確認されたといえるのではないでしょうか。
しかし,三振Ⅰ型の投手も三振Ⅱ型の投手も普通の投手の成績よりは優秀であることは前回の分析からわかっていることを忘れてはいけません。基本的に優秀な投手の中でも更に優秀なのは三振Ⅰ型であると理解しておいた方が良いと思います。
今回の分析からではよくわからないのが三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の関係性です。三振Ⅰ型の選手が衰えると三振Ⅱ型の投手になるのでしょうか。それとも,これらの投手は全く別物なのかは今の段階ではよくわかりません。これを確認するためには,現在使用しているデータは,2008年から2010年の3年分のデータでは少し期間が足りないです。もう少しデータが蓄積される未来のための課題としておきたいと思います。
また,三振Ⅱ型の防御率,被打率,被本塁打率を高める要因となる,フライが増える原因もよくわかりません。彼らはなぜ,フライを打たれやすいのでしょうか。球速・球種・コース・配球・走者の状況・得点差などいろいろ考えられますが,今のところよくわかりません。この原因がわかれば対策もできるかもしれません。
最後に,ゴロの割合とヒットになり易さとの間に関係が無かったことについては,思うところもあるのですが,次回はゴロの多い投手の分析をしようと考えているので,そちらで考えていきたいと思います。
投手の特徴を挙げるときに,「あの投手は打たせて取るタイプだ」とか「三振の取れるタイプだ」という分類をすることがよくあります。この分類を客観的にできないか?ということでこれまで分析をしてきました。
分析の結果,投手の特徴を大きく4つに分類することができました。
・平均的なタイプ ・三振が多いタイプ
・フライが多いタイプ ・ゴロが多いタイプ
今回はこの中で,三振が多いタイプに注目して分析していきたいと思います。
三振が多いタイプには更に2つのタイプがあります。ゴロが多い三振Ⅰ型と,フライの多い三振Ⅱ型です。
表1には,打者との対戦成績(本塁打・四死球・三振・ゴロ・フライ・ライナー)の割合を示します。

これらのデータをグラフ化したものを図1に示します。()内の数値は人数です。

6つのデータの中で,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の特徴を分けているのがゴロとフライの割合であることがわかります。
2.三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の投手の比較
それでは,これら2つのグループの成績はどのようになっているのでしょうか。表2に各グループの防御率と被打率を示しています。

2つのグループの成績にわずかな差はありますが,統計的に見れば誤差の範囲に収まる成績です。つまり,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の成績は同程度であるといえます。ということはやはり,この2つのタイプの違いはちょっとした個性に過ぎないのでしょうか。
結論を出す前にもう少し分析をしてみたいと思います。三振Ⅰ型と三振Ⅱ型に分類された投手125名を対象に,投手を分類する際に用いた6つの打者との対戦成績(本塁打・四死球・三振・ゴロ・フライ・ライナー)のデータと防御率,被打率との相関分析を行ってみました。結果を表3に示します。

これらのデータをいくつか散布図にしてみます。図2-1と図2-1には,本塁打と三振と防御率の関係を示します。


これら図より,三振型の投手は本塁打が少ない,または三振が多いと防御率が低いことがわかります。本塁打と三振は三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の間で差の小さいデータだったのですが,図を見てもわかるように,両グループが混じり合っていることがわかります。
それでは,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の間で差の大きかったゴロとフライのデータではどうなるでしょうか。図3-1と図3-2にデータを示します。


これらの図より,三振型の投手はゴロが多い,またはフライが少ないと防御率が低いことがわかります。そして,本塁打と三振のデータとは異なり,こちらでは棲み分けがはっきりしています。ゴロとフライと防御率の関係を見る限り,三振Ⅰ型の特徴の方が優れていると見ることができます。
続いて,被打率についても同様に分析します。図4-1と図4-1には,本塁打と三振と被打率の関係を示します。


本塁打と三振と被打率の関係は,防御率とほぼ同じです。では,ゴロとフライについてはどうでしょうか。図5-1と図5-2にデータを示します。


これらの図より,三振型の投手はフライが多いと被打率が高いことがわかります。フライが多いとヒットになり易いということです。一方,ゴロと被打率の間に相関関係は認められませんでした。この結果は,ゴロの多さはヒットになり易さとは関係がないと言うことです。
3.まとめ
以上の結果をまとめると,三振型の投手は
・本塁打が少ない,または三振が多いと防御率が低い
・ゴロが多い,またはフライが少ないと防御率が低い
・本塁打が少ない,または三振が多いと被打率が低い
・フライが多いと被打率が高い,ゴロの多さはヒットになり易さとは関係がない
ということがわかりました。そして,三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の違いは,
・防御率,被打率の成績に差はない
・本塁打,三振のデータでは大きな違いは見られない
・ゴロ,フライのデータでの違いが大きい
ということがわかりました。以上のデータをまとめると,
三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の間に大きな成績の違いは無いが,ゴロが少なくフライの多い三振Ⅱ型の方が,防御率・被打率が高くなりやすいといえます。したがって,どちらかといえば三振Ⅰ型の投手の方が優れているといえると思います。
4.このデータをどのように活かすか
最後に,今回の分析の結果をどのように活かして行けば良いのかを考えてみたいと思います。
まず,今回の分析からいえることは,三振が多い投手の中にも,どちらかといえばゴロが多いタイプとフライが多い2種類のタイプがいるということです。そして,フライよりはゴロの多い方が優秀であるということがわかりました。
この結果から,投手の特徴を理解するときに「三振の多さ」だけにこだわるよりも,それに加えてゴロとフライの割合にも注目した方が良いといえると思います。フライが多くなると被打率が高くなることは示しましたが,本塁打も増える(相関係数= .309)ので,できれば三振が多く,ゴロが多い投手の方がお勧めです。
このようなデータがあると,これまでの分析で用いているように投手の特徴を6種類の打者との対戦成績から見ていくことの重要さが確認されたといえるのではないでしょうか。
しかし,三振Ⅰ型の投手も三振Ⅱ型の投手も普通の投手の成績よりは優秀であることは前回の分析からわかっていることを忘れてはいけません。基本的に優秀な投手の中でも更に優秀なのは三振Ⅰ型であると理解しておいた方が良いと思います。
今回の分析からではよくわからないのが三振Ⅰ型と三振Ⅱ型の関係性です。三振Ⅰ型の選手が衰えると三振Ⅱ型の投手になるのでしょうか。それとも,これらの投手は全く別物なのかは今の段階ではよくわかりません。これを確認するためには,現在使用しているデータは,2008年から2010年の3年分のデータでは少し期間が足りないです。もう少しデータが蓄積される未来のための課題としておきたいと思います。
また,三振Ⅱ型の防御率,被打率,被本塁打率を高める要因となる,フライが増える原因もよくわかりません。彼らはなぜ,フライを打たれやすいのでしょうか。球速・球種・コース・配球・走者の状況・得点差などいろいろ考えられますが,今のところよくわかりません。この原因がわかれば対策もできるかもしれません。
最後に,ゴロの割合とヒットになり易さとの間に関係が無かったことについては,思うところもあるのですが,次回はゴロの多い投手の分析をしようと考えているので,そちらで考えていきたいと思います。
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