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内野守備の隙間

Student [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/07/27(水) 10:00rss

0.お詫びとお知らせ
 

 コラムの前にお詫びとお知らせからさせていただきます。これまで「打球の行方」,「続・打球の行方(ゴロ・フライ・ライナー別)」のコラムで使用したUZRデータに誤りがあったので修正いたしました。修正後のデータはサンプル数が増えていますが,データの傾向としては大きな変化はなかったので,論旨に変更はございません。
 
 謹んでお詫び申し上げるとともに,今後はこのようなミスのないよう気をつけたいと思います。


1. はじめに
 
 ここのところは, Ultimate Zone Rating(UZR)という守備指標を用いて打球の行方を分析しています。
 
 日本版のUZRはフィールドに飛んだ打球を22(C~X)×8(1~8 1が最もホームベースに近く、8はフェンス際)の176ゾーンに切り分けて,各ゾーンに飛んだ打球を処理した野手の守備力を評価します。ゾーンは以下の図に示されているように分割されています。
 

 
 さて,このようにフィールドを分割したゾーンの中で,距離別に打球の飛んだ割合を示すと以下の表1のようになります。
 
 データは2009年から2010年までのUZRデータ,計93571打席の結果を使用しています。内訳は,2009年が46582打席,2010年が46989打席です。ただし,記録に不備があったデータは除いていますので,全ての打席のデータではありません。
 

 
 データを見ていただければわかるように,距離3のゾーン,つまり内野手の守備位置にあたる場所に飛んだ打球が全体の3割を占めます。さらに,この距離3のゾーンに飛んだ打球をゴロ・フライ・ライナー別に集計したデータを表2に示します。
 

 
 打球別の内訳を見ると9割弱がゴロであることがわかります。これは分析した打球全体に占める割合でも3分の1を越えるほどの値です。バットに当たった打球の3分の1は内野ゴロになっているわけですから,このゴロがアウトになるかヒットになるかは試合の帰趨を大きく左右すると考えて良さそうです。
 
 これまでの分析では,ゴロ・フライ・ライナー別にアウトになった打球とヒットになった打球の分析をしましたが,距離3に飛んだ打球自体が多いために,このゾーンはアウトもヒットも多いゾーンという結果になってしまっています。
 
 というわけで今回の分析では,打球を「距離3のゾーンに飛んだ内野ゴロ」に絞って,アウトになりやすいゾーンやヒットになりやすいゾーンをもう少し詳しく分析していきたいと思います。
 
 分析は,2009年から2010年までの2年分のデータを用いました。以降は,1・2塁間のゾーンと2・3塁間のゾーンに分けて分析します。
 
 
2. 12塁間のゾーン
 
 まずは1・2塁間のゾーンから分析していきます。先に示したUZRの図では距離3のゾーン付近が小さいので,距離3で1・2塁間のゾーン付近を拡大した模式図を図1-1示します。
 

 
 あくまで模式図ですので,以降の分析でゾーン毎にヒットやアウトになる割合を示していくのですが,その際の位置関係の把握に使っていただければと思います。
 
 では,1・2塁間の各ゾーンの結果を図1-2に示します。結果は,アウト・ヒット(単打・二塁打・三塁打・ランニングホームラン)・犠打・エラー・野選です。
 

 
 各結果を割合にせず,打球数をそのままにすることで,どのゾーンに打球が飛びやすいか(総打球数が多いか)と,各ゾーンでのヒットになりやすさを見て取れると思います。
 
 このデータからまず言えることは,ゾーンによってアウトになりやすい所と,ヒットになりやすいところがあるということです。
 
内野手は投手が投げるたびに同じ場所に構えるのではなく,打者やサインによってポジションを変えるといわれています。内野手の守備位置が一定でなければ,各ゾーンでのアウトになりやすさの差がなくなることが考えられます。しかし,この結果を見ると,内野手は守備位置を微調整しているが,それでもヒットになりやすいゾーンができてしまうということが考えられます。
 
 
3. 23塁間のゾーン
 
 続いて,2・3塁間でも同様の分析をしてみます。まずは模式図を図2-1に示します。
 

 
 各ゾーンの結果を図2-2に示しました。図2-2の位置を参考にしつつ見てください。
 

 
 こちらも,1・2塁間と同じくアウトやヒットの数にムラがあるようです。また,ボールが飛びやすいゾーンと飛びにくいゾーンがあることもわかります。そして,全体的に2・3塁間に飛ぶ打球の方が,1・2塁間に飛ぶ打球よりも多いことがわかります。
 
 
4. 内野守備の隙間
 
 ここまで,各ゾーンの結果を見てきましたが,1・2塁間と2・3塁間の詳細な打球数を表3-1と表3-2に示します。
 



 
 この2つの表で,ゴロが多く飛んだ上位5つのゾーンの合計の値を赤字に,下位5つのゾーンの合計の値を青字にしています。さらにヒット数の値を,ヒットになる確率が5割以上のゾーンを赤字に,1割以下のゾーンを青字にしています。
 
これらのデータを見ると,
 
 ・打球が飛びやすくて,アウトになる確率が高いゾーン(例:ゾーン“I”)
 ・打球が飛びやすくて,ヒットに確率が高いゾーン(例:ゾーン“G”)
 ・打球が飛び難くて,アウトに確率が高いゾーン(例:ゾーン“D”)
 ・打球が飛び難くて,ヒットに確率が高いゾーン(例:ゾーン“N”)
 
 があることがわかります。広いグラウンドをほぼ4名(+投手と捕手)で守るのですから,「打球が飛びやすくて,アウトに確率が高いゾーン」と「打球が飛び難くて,ヒットに確率が高いゾーン」ができるのは合理的な判断だと思います。打球がたくさん飛んでくるゾーンを優先的に守るほうが効率的だからです。
 
 一方,「打球が飛びやすくて,ヒットに確率が高いゾーン」は,2・3塁間でいえば“G”のゾーン,1・2塁間でいえば“U”のゾーンが該当するでしょうか。この位置を図1-1と図1-2で確認すると,一般に一二塁間,三遊間と呼ばれるエリアに当たるようです。
 
 守る方としてはこういうゾーンを無くしたいところですが,4名の内野手で守る以上,こうした隙間ができてしまうのも仕方のないことなのかもしれません。しかし,1・3塁線上に飛ぶ打球は他のゾーンと比較して少ないので,走者がおらずベースカバーの必要もなければ,一塁手と三塁手は定位置よりも思い切ってセカンド寄りに構えても良いのかもしれません。
 
 ただし,1・3塁線上へのゴロは長打になりやすいので,一塁手と三塁手の定位置というのは飛んでくる打球の多さよりも,長打を警戒したシフトになっているのではないかと考えられます。したがって,飛んでくる打球が少ないからといって,1・3塁線上を空けても良いとは一概にはいえないのかもしれません。
 
 
5. まとめ
 
 以上,今回は内野ゴロについて分析してみました。この分析の結果,ヒットになりやすいゾーンが明らかになったからといって,打者にそこを狙うよう指示しても,正確に実行することは難しいでしょう。そういう意味では,打者にアドバイスをするためのデータとしてはあまり役に立たないと思います。
 
 私としては,今回の分析結果と,1人の打者の内野ゴロの飛んだゾーンの分布を見ることで,その打者の運の良さを判定できるのではないかと考えています。その打者の打った内野ゴロが,平均よりも多くヒットになりやすいゾーンに飛んでいれば,その打者は運が良いと見ることができますし,逆にアウトになりやすいゾーンに多く飛んでいれば,その打者は不運であるといった判定ができないものかと考えています。

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