フライの飛距離とチームの得点力
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1.はじめに
今回はUZRのデータを使った分析をしてみたいと思います。以前はゴロの分析をしたので,今回はフライを分析してみたいと思います。
いきなりで申し訳ありませんが,以下に示すのは,2009年から2010年のNPB12球団,計24チームの総得点と総フライ数の関係です。

図から見て取れるように,チームの総フライ数が多いほど得点力は高くなっています。このような関係は他のゴロやライナーといった打球では見られないものです。
さて,フライには内野フライと外野フライがありますが,総フライ数のデータを内野フライと外野フライに分けてそれぞれチームの得点との関係を示すと以下のようになります。


内野フライと外野フライを別々に見ると,どうやらチームの得点力と関係がありそうなのは外野フライの方のようです。では,なぜ外野フライが多いチームの得点力は高いのでしょうか?外野に打球をたくさん飛ばす力があれば,長打や本塁打が増えるからでしょうか?
以下の図2には各チームの外野フライの数と本塁打の数の関係を示しています。

相関分析をしたところ,一応正の相関関係が認められましたが,ごく弱い相関関係であり,データ数も少ないことから,このデータでは外野フライが増えれば本塁打が増えるとはいえないと思います。
ということは,外野フライが多いからといって,打球を遠くに飛ばす能力が高いわけではないのでしょうか?
これを調べるにはフライの数だけを数えていてはわかりません。そこで,UZRのデータを用いて,各チームのフライの飛距離を分析してみたいと思います。
2.チーム別に見たフライの飛距離
では,各チームのフライの飛距離と本塁打,総得点を以下の表1-1と表1-2に示します。


まずはこの中で最高得点だった2010年の阪神(740得点)と,最少得点だった2009年の横浜(497得点)を比較してみたいと思います。データを図3-1に示します。

図を見ると,距離4以降のゾーンと本塁打は阪神の方が多いことがわかります。このデータより,外野フライの多い阪神は,長距離のフライが多いわけではなく,全体的にフライが多いことがわかります。
次は,最少得点だった2009年の横浜(497得点)と最少得点の次点だった2010年の横浜(521得点)を比較してみたいと思います。データを図3-2に示します。

2009年と比較して,2010年の横浜は得点力がやや向上しましたが,フライの飛距離を見ると,距離4以降のゾーンのフライ数は2010年の方が多くなっています。本塁打の数は2009年の方が僅かに多いのですが,チームとしての得点力が向上したのはこのフライ数のお陰でしょうか?
2009年と2010年は得点力の低さに悩まされましたが,2011年は得点力だけ見れば横浜はまずますの成績を残しています。2011年のフライの飛距離のデータはまだ出ていないのですが,今年はどのような結果になっているのでしょうか。
さて,最後に2009年の横浜と2010年のロッテとの比較をして見たいと思います。2009年の横浜は24チーム中最もフライ数が少なく,得点は最少の497点です。一方,2010年のロッテは最もフライの多いチームで,得点は3位の708点です。興味深いことに,これらのチームの本塁打数はほとんどかわりません。では,フライの飛距離はどのようになっているでしょうか?データを図3-3に示します。

図を見ると,距離4以降のゾーンはロッテの方が多いことがわかります。特に距離7で差は顕著となっています。
以上の分析結果をまとめると,フライの数が多いからといって,長距離のフライが増えるわけではなく,距離4以降のフライが全体的に増えることがわかりました。
3.まとめ
以上,フライの飛距離とチームの得点力の関係を分析してみました。先にも書きましたが,まだ2年分のデータしかないのでこの分析結果は参考データくらいに思っておいてください。今後データが蓄積されてくれば安定した結果も示すことができると思います。
さて,今回の分析結果より,外野フライが多いからといって,本塁打が多くなるわけでも,長距離のフライが増えるわけでもないことがわかりました。外野フライが多いからといって,打球を遠くに飛ばす能力が高いわけではないということです。では,なぜ外野フライが多いと得点力が高いのでしょうか?
考えられる可能性としては,たくさんフライを打てば,その分ヒットになる可能性が高くなる,つまり,数打ちゃあたるようなことになっているのかもしれません。
これを検証するためには,フライの飛距離だけではなく打球の飛んだ方向もわかった方が良いと思いますので,次回は各チームのフライの飛距離と飛んだゾーンをより詳しく分析してみたいと思います。
今回はUZRのデータを使った分析をしてみたいと思います。以前はゴロの分析をしたので,今回はフライを分析してみたいと思います。
いきなりで申し訳ありませんが,以下に示すのは,2009年から2010年のNPB12球団,計24チームの総得点と総フライ数の関係です。

図から見て取れるように,チームの総フライ数が多いほど得点力は高くなっています。このような関係は他のゴロやライナーといった打球では見られないものです。
さて,フライには内野フライと外野フライがありますが,総フライ数のデータを内野フライと外野フライに分けてそれぞれチームの得点との関係を示すと以下のようになります。


内野フライと外野フライを別々に見ると,どうやらチームの得点力と関係がありそうなのは外野フライの方のようです。では,なぜ外野フライが多いチームの得点力は高いのでしょうか?外野に打球をたくさん飛ばす力があれば,長打や本塁打が増えるからでしょうか?
以下の図2には各チームの外野フライの数と本塁打の数の関係を示しています。

相関分析をしたところ,一応正の相関関係が認められましたが,ごく弱い相関関係であり,データ数も少ないことから,このデータでは外野フライが増えれば本塁打が増えるとはいえないと思います。
ということは,外野フライが多いからといって,打球を遠くに飛ばす能力が高いわけではないのでしょうか?
これを調べるにはフライの数だけを数えていてはわかりません。そこで,UZRのデータを用いて,各チームのフライの飛距離を分析してみたいと思います。
2.チーム別に見たフライの飛距離
では,各チームのフライの飛距離と本塁打,総得点を以下の表1-1と表1-2に示します。


まずはこの中で最高得点だった2010年の阪神(740得点)と,最少得点だった2009年の横浜(497得点)を比較してみたいと思います。データを図3-1に示します。

図を見ると,距離4以降のゾーンと本塁打は阪神の方が多いことがわかります。このデータより,外野フライの多い阪神は,長距離のフライが多いわけではなく,全体的にフライが多いことがわかります。
次は,最少得点だった2009年の横浜(497得点)と最少得点の次点だった2010年の横浜(521得点)を比較してみたいと思います。データを図3-2に示します。

2009年と比較して,2010年の横浜は得点力がやや向上しましたが,フライの飛距離を見ると,距離4以降のゾーンのフライ数は2010年の方が多くなっています。本塁打の数は2009年の方が僅かに多いのですが,チームとしての得点力が向上したのはこのフライ数のお陰でしょうか?
2009年と2010年は得点力の低さに悩まされましたが,2011年は得点力だけ見れば横浜はまずますの成績を残しています。2011年のフライの飛距離のデータはまだ出ていないのですが,今年はどのような結果になっているのでしょうか。
さて,最後に2009年の横浜と2010年のロッテとの比較をして見たいと思います。2009年の横浜は24チーム中最もフライ数が少なく,得点は最少の497点です。一方,2010年のロッテは最もフライの多いチームで,得点は3位の708点です。興味深いことに,これらのチームの本塁打数はほとんどかわりません。では,フライの飛距離はどのようになっているでしょうか?データを図3-3に示します。

図を見ると,距離4以降のゾーンはロッテの方が多いことがわかります。特に距離7で差は顕著となっています。
以上の分析結果をまとめると,フライの数が多いからといって,長距離のフライが増えるわけではなく,距離4以降のフライが全体的に増えることがわかりました。
3.まとめ
以上,フライの飛距離とチームの得点力の関係を分析してみました。先にも書きましたが,まだ2年分のデータしかないのでこの分析結果は参考データくらいに思っておいてください。今後データが蓄積されてくれば安定した結果も示すことができると思います。
さて,今回の分析結果より,外野フライが多いからといって,本塁打が多くなるわけでも,長距離のフライが増えるわけでもないことがわかりました。外野フライが多いからといって,打球を遠くに飛ばす能力が高いわけではないということです。では,なぜ外野フライが多いと得点力が高いのでしょうか?
考えられる可能性としては,たくさんフライを打てば,その分ヒットになる可能性が高くなる,つまり,数打ちゃあたるようなことになっているのかもしれません。
これを検証するためには,フライの飛距離だけではなく打球の飛んだ方向もわかった方が良いと思いますので,次回は各チームのフライの飛距離と飛んだゾーンをより詳しく分析してみたいと思います。
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Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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