HOME > コラム一覧 > コラム

コラム

西武ライオンズ中村剛也選手のホームランについて

時光順平 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/08/24(水) 10:00rss

1.はじめに
 
 今回は、西武ライオンズの中村剛也選手のホームランについて考えていく。8月18日現在、中村選手はリーグトップの30ホームランを放ち、2位の松田選手(ソフトバンク)に12本の差をつけている。中村選手は、2008年と2009年にホームラン王を獲得。昨年はけがの影響から85試合にしか出場できなかったが、チームトップの25本のホームランを打った。今年は、このままいけばおそらくホームラン王のタイトルを獲得できるだろう。同時に、どのくらいの本数でタイトルを獲得するのかも注目の1つである。そこで、中村選手が残りの試合でどのくらいの確率でシーズン55本を達成するかを考えていこう。
 
 
2.残りの打数から単純計算
 
 まずは、残りの試合で中村選手が何回打席に立つかを計算していく。ここでは、打席ではなく四死球などを除いた打数から計算をしていく。8月18日現在でチームは94試合を消化している。つまり、残り試合数は50試合である。中村選手の1試合当たりの打数は約3.73である。残り試合数50試合と1試合当たりの打数3.73をかけると、残りの打数は約186.7である。つまり、残り約186打数と考えられる。
 
 次に、中村選手が1打数あたりにどのくらいの確率でホームランを打つか計算していく。ここまで、351打数で30本のホームランを放っている。つまり、本塁打数を打数で割ればよい。計算結果は約0.085となった。
 
 残りの打数と1打数あたりのホームラン率をかけると、残りの試合数で何本のホームランを打てるか予測できる。計算結果は15.81となった。今現在のホームラン数は、30本なのでシーズン終了時には45本前後という予測ができ、55本には10本届かない計算となる。
 
 しかし、この方法には問題点がある。問題点とは、予測したホームラン数がどのくらいの確率で起こるか分からないことである。中村選手が15本ホームラン打つというのは、あくまでも予測であり、16本、17本打つ可能性もあれば、14本、13本打つ可能性もある。そこで、次に15本打つ確率はどのくらいあるのかを計算していく。

 
3.二項確率
 
 先ほど計算をして導き出した15本という数字がどのくらいの確率で起こるかを計算してみよう。計算の方法は、二項確率というものを使用して計算する。二項確率とは、可能な結果が2つしかない時にその片方の確率を求める時に使用するものである。今回のテーマから考えると、ホームランを打ったか打たないかという2つの結果から、ホームランを打つ確率を求めることになる。計算をするにあたって、中村選手がどのくらいの割合でホームランを打つかを知る必要がある。今回のホームラン率は、先ほど導き出した1打数あたりのホームラン率を使用する。つまり、ホームラン率が0.085の中村選手が残り186打数で15本のホームランを打つ確率を求める。計算した結果は、約10%であった。表3.1は残り186打数でのホームラン数の確率である。
 

 
 中村選手が55本を達成するには残り186打数で25本打たなければならない。上の表から25本以上打つ確率は約1.4%である。
 
 しかし、この方法にも問題点がある。ここでの中村選手のホームラン率は2011年のデータから算出したものである。残りの試合もこのホームラン率のままホームランを打ち続けるだろうか。そこで、次に中村選手のホームラン率について考えていき、新たにホームランを打つ確率を予測していく。
 
 
4.ホームラン率
 
 先ほどの確率は、2011年のホームラン率を基に算出した。これは、中村選手の本塁打を打つ本当の能力ではない。実際の中村選手のホームラン率は、過去のホームラン率から本当の能力に近い値を導けるかもしれない。過去のホームラン率と新しいデータつまり、2011年のデータから新たにホームランを打つ確率を求めていく。ここでは、ベイズの公式というものを用いる。ベイズの公式とは、新たなデータや情報を取り込むために確率の値を更新する公式である。今回の新たなデータとは、351打数で30本のホームランを打つことである。
 
 まず、中村選手の過去のホームラン率から、今現在の本塁打を打つ能力を推測する。表4.1は中村選手の年度別のホームラン率である。
 

  
 今回は、ホームラン率を低い順に並べ3つのグループに分けた。そして、各グループの本塁打率の平均値を算出する。計算の結果、平均値は0.02、0.08、0.09であった。2003年のホームラン率は0であり、先ほどの平均値の算出の際には2003年も含んでいたが、含まないで考えた場合でも平均値は0.03とほぼ変わらない値となった。よって、以後は0.03、0.08、0.09の3つのパターンを考える。そして、各ホームラン率の確率を推測する。表4.1から年度ごとの本塁打率の割合を求め、先ほど同様に低い順に並べ3つのグループに分ける。各グループの割合の和をホームラン率の確率とした。各ホームラン率の確率は表4.2である。


  
 この確率と、新たなデータでの各ホームラン率による二項確率との積を求め、新たなホームラン率の確率を求める。その確率が表4.3である。
 

 
 ホームラン率が0.03の確率が0であるため、ホームラン率は0.08と0.09の時を考えていくことになる。よって、新しい確率は表4.2の確率と各ホームラン率における二項確率から算出する。例えば、残り186打数で15本のホームランを打つ確率を求めるには、ホームラン率が0.08の時と0.09の時の確率の和となる。求めた結果は4.3である。
 

 
 中村選手が残りの試合で55本のホームランを打つには、あと25本必要である。表4.3から25本以上打つ確率は約2%である。
 
 
5.まとめ
 
 今回は、中村選手のホームランについて分析をしていった。中村選手が今シーズン55本のホームラン打つ確率を計算していったが結果は、極めて低い確率となった。

 


 
 表5.1と上のグラフは、中村選手の今シーズンにおけるホームラン数の90%信頼区間である。縦軸がホームラン数、横軸が試合数を表している。例えば、信頼区間が(61、32)である時は、ホームラン数が32本から61本の間である確率が90%であることを表している。グラフ上の赤い線はシーズン記録である55本を表している。試合を消化していくたびに予測区間が狭くなっていることが分かる。シーズンの半分である70試合が終了した時点では、予測区間がまだ55本に含まれており、シーズン記録更新の可能性は十分にあったと言える。シーズン終了時は、44本から46本である確率が高い事がグラフから読み取れる。
 
 今回の分析から今シーズンの中村選手のホームラン数は、45本前後であると言えるだろう。この記録は、ホームラン王を獲得した2008年(46本)と2009年(48本)とほぼ同じと言えるだろう。今シーズンから統一球を導入し、ホームランが出にくくなっていると言われているが中村選手に関してそのような影響が無いのではと感じる。そこで、次回は中村選手が統一球の影響を受けているかについて考えていこうと思う。

コメント

名前:
メールアドレス:
コメント:
評価:
star2.gif star2.gif star2.gif star2.gif star2.gif
580bceb1be234cf76eb24fa5563a9e4f.png?1503134119
画像の英字5文字を入力して下さい。:

トラックバック一覧

Baseball Lab「Archives」とは?
 
Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。

野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。