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人工芝の張り替え

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/04/04(月) 10:00rss

 このサイトでは各著者が統一球や球場の影響について触れてきました。今季最も注目され、影響が大きいのは統一球で間違いないでしょう。オープン戦を見ていると、昨年に比べ失速したのではないかと思われる飛球がかなり多かったように思われます。この統一球に加えて、ロッテ・オリックス・横浜・中日の4球団はさらに環境の変化にさらされます。この4チームに共通することは、本拠地の人工芝を張り替えている点です。
 
 
1.人工芝の張り替え
 
 人工芝は耐久性に優れるとはいえ、経年劣化するのは致し方ないところです。人工芝の寿命がどの程度なのかは各社の製品により違うのでしょうが、安全性などを考慮し一定の期間が過ぎると張り替えるサイクルのようです。下の表は2003年以降に人工芝の張り替えを行った球場と人工芝の種類をこちらで確認できた範囲で記載したものになります(異なっている場合はご指摘いただけると幸いです)。


 
12球団の主要球場で少なくとも4つ以上のメーカーが参入し、同じメーカーでも違った人工芝を採用しているケースもあるようです。詳細は各メーカーのHPをご覧ください。
 
グランドターフ   http://turftech.otsukac.co.jp/frame_aboutgrandturf.html
アストロターフ   http://www.construction-biz.com/products/ast/web079.html
ハイブリッドターフ http://www.hibrid-turf.com/products/index.html
フィールドターフ  http://www.fieldturf.jp/
 
近年ではより天然芝にちかいロングパイルの人工芝を採用する球団が多いようです。
 
 
 
2.人工芝の張り替えと安打割合
 
 人工芝を張り替えることで最も影響を受ける打球はゴロであることに異論はないかと思います。新品の人工芝ならば、劣化して硬くなった人工芝よりも打球の勢いを殺す可能性は高まりそうです。さらに最近の毛足の長い人工芝なら、より打球の勢いを削ぐと考えたくなります。下の表はゴロの安打割合の変化についてみたものです(ホームチームが守備をしている視点のデータになります)。出塁割合は安打に失策出塁で走者を許したケースを加えています(人工芝を張り替えた年度に色をつけました)。はなはだ簡単ですが、前後と比べて簡単な傾向を見ていきましょう。
 
 

 ゴロの安打割合や出塁割合を見るとそれほど変わらなかったケース・下がっているケース・上昇したケースと様々です。前後年度との単純な比較だけでは環境の影響を測るのは難しそうです。
 
 そこで人工芝を張り替えたホーム球場とリーグ内の主要球場との差を比較することで、ゴロが安打になる割合が変化するのか見ていきましょう。これはパーク・ファクターの手法と同じですが、本拠地球団の成績のみを対象にしている点が異なるところです。同じ年度に同一リーグ内で複数の球団が人工芝を張り替えていないだけに、単純に比較したケースよりもう少し人工芝の影響を測ることができるかもしれません。
 
 下の表はホームとそれ以外の主要球場の安打と出塁割合を表しています。さらにホーム球場の安打割合(出塁割合)をそれ以外の主要球場の安打割合(出塁割合)で割ったものを加えました(1が平均で、1を割り込むならホームのゴロが安打になりにくく、1を超えるとホームのゴロが安打になりやすい)。

 

 かなり興味深いのが札幌ドームとナゴヤドームになります。日本ハムは前年度との比較ではやや安打になる割合が下がっていましたが、その他の球場の成績を見ると大きな変化があるのがわかります。2004年は札幌ドームでの安打割合がその他の主要球場の安打割合を上回っていました。しかし、人工芝を張り替えた2005年以降はこれが逆転し、以後ホームでゴロが安打になりにくい状況になっています(張り替えの年に内野の主要メンバーは変わっていません)。
 中日は日本ハムほど劇的な変化はありませんが、人工芝を張り替えた年はホームの数字がかなり良くなっています。この2球団は人工芝の張り替えの前後から失点を抑止する方向にチームの舵を切っていきますが、グランドターフを使用している点、(おそらく)低反発のボールを採用した点など面白い共通点があります。ゴロの安打割合(出塁割合)については、ボールの影響がどのくらいあったのかはわかりませんが(かなり大きいと思われます)、人工芝の張り替えも影響を与えたのかもしれません。
 
 楽天のKスタ宮城も人工芝の張り替えでゴロが安打になる割合が変化しています。張り替え翌年に数字が大幅に悪化していますが、その後はKスタでのゴロ安打割合はその他の主要球場に比べ低い値になっています。日本ハム・中日同様にボールの影響がどの程度あったのかは不明ですが、失点を抑止する方向を目指していた可能性があります。
 
巨人・ヤクルトに関しては前後の年度とそれほど大きな変化はありません。
西武は人工芝を張り替えた年度にゴロが安打になる割合が上昇しています。これは非常に興味深い数字の変化です。実はこの年、西武はリーグ全体の得点が入らない状況を打破すべく、得点を取りに行く方向を目指したのではないかと考えています(飛ぶボールへの選択があった)。この年の西武は得点力を前面に押し出しリーグ優勝を成し遂げ、日本一まで駆け上がっています。数字の変化を見ると人工芝はゴロを増やしたように見えますが、飛ぶボールの選択でゴロが安打になりやすくなる要因を人工芝の張り替えで抑えたかもしれません。タイミング的には絶妙で、このような方針で決定がなされたのならリーグ制覇の助けになったと思われます。
 
 ヤフードームは2009年にグランドターフからロングパイルのフィールドターフに変更しています。毛足の短いショートパイルを長年使用してから、ロングパイルの人工芝に変更した威力が表れているのかもしれません。人工芝のメーカー変更は人工芝の劣化や異なるメーカーの人工芝を比較する有力な情報になりそうです。
 
 
3.球団の影響力
 
 今回のデータを見て球団が人工芝の選定にどれくらい影響があるのか興味があるところです。自前の球場を持つ球団はそれほど多くなく、球場側は野球以外のイベントも顧客になります。球場の利便性を保つためには球団側の要望が全て通るとはかぎりません。反面、一部の球団は人工芝の張り替えをうまく利用しているようにも見えます。環境を味方につける戦略を意図的に取っているのなら、まったく行わない(行えない)球団に比べ有利に働くのは間違いないでしょう。今シーズン人工芝を張り替えた球団が、球場側にどの程度要望を飲ませることができたのかは気になるところです。
 今回の内容は各球団の使用球が不明なため、多分に不確定な要素が大きく、少量のデータから私が想像で仮説を立てたにすぎません。しかし、統一球の導入は、これまで深い霧に包まれていた球場や人工芝の影響を測るまたとない機会を提供してくれます。この影響が明らかになるにはまだ年数はかかります。しかし、こういった影響が明らかになるとチームや選手の能力をデータで現せる割合がもう一段増えることになります。小さな変化を数値化する努力を続けることで、野球の構造理解が進んでいくと思われます。
 

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