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スカウトの価値~Part1

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/03/30(水) 10:00rss

 先日、ツイッターで広島のシュールストロム駐米スカウトが非常に優秀で、中国新聞で特集されていた事をフォロワーの方から伺いました。この情報が今回スカウトの価値を評価する試みのきっかけとなりました。良い外国人選手をたくさん連れてくることは、海外担当スカウトにとって死活問題です。しかも、外国人選手は即戦力として期待され年俸もそれなりの投資額になるだけに責任重大です。今回は良いスカウトを「年俸は安く、多くの勝利に貢献する選手と契約する」と定義し、スカウトの能力や価値を測っていこうと思います。
 
 
1.広島・シュールストロム駐米スカウト
 
 冒頭の中国新聞で掲載された広島・シュールストロム駐米スカウトの特集記事はこちらになります(http://www.chugoku-np.co.jp/Carp/Cw201012030084.html)。2004年以降、開幕前に獲得した外国人選手について選手・年俸・在籍年・成績などが詳しく載っています。
 
 
 
 こちらでも簡単にまとめてみました。初年度の年俸は最高でも2008年ルイスの85万ドル(当時およそ9500万円)で、それ以外の選手は50万ドル以下になっています。これはNPBで一般的な外国人選手の年俸相場に比べるとかなり低い金額になります。成績も併記していますが、打者ではラロッカ・シーボル、投手ではルイス・ベイル・シュルツ・ジオ・ダグラスといった選手がかなりお買い得な成績を残していると感じます。しかし、こういった選手がどのくらい利益(勝利への貢献や金銭として)をもたらしたのか、この成績だけではわかりません。
 選手の活躍を勝利への貢献という形に変換することができれば、この問題は一気に解決します。以前このサイトで紹介したチームの勝利を選手の貢献度に応じて分割していくWin Sharesという指標なら、一つの参考になるのではないでしょうか(Win Sharesはリーグで全く価値のない選手に比べ、チームにどれだけ勝利をもたらしたのかを現します)。下の表は、シュールストロム駐米スカウトが獲得した外国人選手のWin Shares(WS)です。野手は打撃と守備、投手は投球が対象になります。最後の列は年俸をWin Shares(WS)で割ったもので、1WSあたりに要した金額を表します。WSは3でチームに1勝をもたらしたとカウントするので、この値を3倍すれば1勝あたりに要した金額ということができます。スカウトの能力を見ることから今回は1年目の成績のみを対象にしています。これは、1年目で一定の成果を残さなければならない外国人選手の特殊事情(成績が振るわない場合は解雇)と2年目以降はコーチの指導などスカウト以外の影響がより大きくなるのためです。
 

 
 Win Sharesを見るとやはりラロッカやルイスはかなりチームの勝利に貢献していることがわかります(ベイルもまずまずの値です)。Win Sharesは野手なら30を超えればMVP、投手なら20を超えれば超一流とされている指標です。両名はリーグでも勝敗に影響を与える指折りの選手だったと考えられます。さらに年俸/WSの項目を見ると、ラロッカの1年目は25万ドルに対して、WSが24と1WSがおよそ1万ドル(110万円)と少ない投資で勝利に貢献していることがわかります(およそ330万円でチームに1勝をもたらした計算)。ラロッカの投資効率は突き抜けていますが、そのほかにもベイル・ロマノ・ルイス・シーボルなどが1WSで5万ドル(550万円)を切る値でチームに貢献しています。フェルナンデス・ドーマンといった全くチームに貢献できなかった選手を加えた合計でも1WSあたり5.5万ドル(605万円)。1勝に換算しても1815万とかなり良い投資に見えます。
 
 
 
2.投資に対する評価
 
 シュールストロム駐米スカウトが獲得した外国人選手の1WS(1勝)あたりのコストは算出できました。この投資を評価するには、NPB全体で1WS(1勝)あたりどのくらいのコスト(年俸)を払っているのか調べる必要があります。下の表は、12球団の過去5年間の総年俸・野手年俸・投手年俸と全体・野手・投手のWin Sharesを算出したものです。右側の3列は1WS当たりの年俸を全体・野手・投手それぞれ現しています(順番はWin Sharesが大きい順。WSは勝利×3、引き分け×1.5で算出しています。WSが大きい方が、勝率も高いと思って頂いて結構です)。
 


 過去5年で総年俸が最も多かったのは2008年巨人の52.8億です(1WSあたりで最もコストが高かったのは、2006年巨人の1WS=2118万)。同じ2008年に広島は15.5億と過去5年で最も少ない総年俸でした(1WSあたり最もコストが少なかったのも2008年広島の722万)。もちろん、総年俸が多い方が選手の選択肢が広がるため有利といえますが、お金をかけて選手を確保していることを一概に非難することはできません。また、日本ハムや西武などある程度総年俸を抑えながら優勝している球団もあるため、年俸の差だけでチーム成績に優劣がつくと考えるのも早計でしょう。
 12球団の過去5年を合計すると打者は1WSあたり1123万円、投手は1680万円となります。この値がシュールストロム駐米スカウトを評価する基準となります。
 

 
 広島の新外国人選手のWSはすでに算出しています。このWSに1WS当たりの平均年俸を掛け合わせることで活躍から想定される年俸をはじき出せます(打者・投手を分けてWSに掛け合わせます)。この想定年俸と実際の年俸を比べることで、その差額がプラスなら良い投資、大きなマイナスを計上するなら悪い投資として判断できます。為替レートがここ数年大きく変わっているので、それぞれで差額を算出しています。
 2004年のラロッカ・ベイルの獲得はシュールストロム駐米スカウトにとってのハイライトです。この年のレートはおよそ1ドル110円で2人の想定年俸と実際の年俸の差は合計で3.85億となっています。2007年もルイスの貢献を筆頭に3億程度の差額を生み出しています。2004年から13人の外国人を獲得していますが、初年度の年俸合計5~6億に対して、7~8億の利得を出している計算になります。外国人選手なので活躍が当たり前と考えるかもしれませんが(リーグ全体との比較なのでやや過大評価な部分もあります)、スカウトとしてそれほど裁量(年俸の限度額に幅がない)がない中で、契約した選手が活躍したことは評価して良いと思います。

 さらに他球団の外国人獲得事情と比較することで、よりその価値が鮮明になるかと思います。次回は年俸総額が近い球団の外国人獲得を参考にして、スカウトの価値をもう少し考えていきましょう。

コメント


中国新聞では?

Posted by aki at 2011/03/30 13:13:35 PASS:

>akiさま

ご指摘ありがとうございます。
お恥ずかしい限りです。修正させていただきました。
引き続きよろしくお願いいたします。

Posted by 岡田友輔 at 2011/03/30 14:08:25 PASS:
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