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スピードとコントロールの効能

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/04/18(月) 10:00rss

 投手を評価する上でスピードとコントロールは欠かせない要素になるでしょう。ストレートに限って言えばプロで活躍していくには必須の条件です。今回はスピード・コントロールあるいはその双方が打者を抑えるのにどのように働いているのか考えていきましょう。
日本ハムのダルビッシュ投手がビルドアップしオープン戦から常時150キロを超えるストレートを投じています。「球が速い・コントロールが良い」ことで何が変化するのでしょう。それぞれがどのような影響をもたらすのか、単純に切り離して考えてみましょう。下の表は2005~2010年を対象にした球速別のストレート成績になります。
 
 
1.スピードの効能
 

 
 NPB投手の平均球速は140km/h前後になります(計測出来たストレートを対象)。球速が増すほどOPSが良い数字を残しているのは予想通りと言ます。しかし、球速の影響を理解する上で最も興味深いのはBABIP(フィールドに飛んだ打球が安打になる割合)でしょう。球速が上がってもバットにボールが当たり、インプレーとなった場合はヒットになる割合にほとんど差はありません。そして球速が増すことの最も大きいメリットは、三振を奪う割合が上昇することです。球速が上がりバットにボールを当てさせないことがOPSを下げさせている一番の要因です。さらに本塁打を打たれる割合(HR/[打数+犠飛])を見ても、球速が高い投手に有利に働いているようです(後ほどもう少し詳しく考えます)。
 
 
2.コントロールの効能
 
コントロールに関しては球速に比べやや多様な関係になっています(表参照)。
 

 
 真ん中のいずれのコースも「ヒットが出やすい・長打になりやすい・三振を取れない」というのが分かります。四隅のうち外角の低め・内角の低め・内角の高め(外角高め)はOPSなどを見ると打者を良く抑え込んでいるコースになります。しかし、コース別に打者を抑える仕組みは異なっているようです。まず配球の基本と言われる外角低めですが、その特性は「三振が取れる・ヒットを打たれにくい・本塁打を打たれない」と良いことばかりです。この傾向はスピードの効能と良く似た働きで、その影響も大きいことが分かります。内角の低めも同じような特徴があります(やや効能は落ちます)。
 内角高めが打者を抑える仕組みは他と一線を画しています。被打率・三振%は平均的な数値ですが、BABIPが優れています。低い三振%などからバットにボールを当てられてしまうコースということは想像出来ますが、その打球が安打になりにくいようです。外角の高めも同じようにBABIPが低くなっています。
 
内外角低めのコースは三振増・長打減とスピードの効能に近い働きをみせ、内外角高めのコースはBABIPの低さが好影響をもたらしているようです。
 
 
3.球速とコースの組み合わせ
 
これまで球速とコースの影響を別々に確認してきました。ストライクゾーンを9分割にして、球速と合わせOPSを並べたものが下の表になります。
 

 
 外角低めの136~138km/hのストレートは152km/h以上の内角真ん中のストレートとほぼ同じ威力を持っているなど、スピードとコントロールがもたらす効能を把握することができます。例えばNPBの平均的な球速の投手(139~141km/h)で考えると、内外角の低めのOPSはほぼ6割と有効になるのが分かります。基本的にはコースの影響が強めに出ていますが、球速があるとコースを広く使えるのが分かります。最も顕著なのが真ん中高めになります。このコースは平均でOPS.8割5分前後と危険なゾーンですが、152km/h以上のボールなら打ち返すのが困難になります。ストライクゾーンを大きく使うのに速いボールは欠かせず、逆に限られた球速ではストライクゾーンを限定的にしか使用出来ないことになります。
 
 
4.打球種別からのさらなる検証
 
 ここまでは大まかにストレートのスピードとコントロールの効能について考えてきました。しかし、内角の高めなどコースの効能についてはもう少し掘り下げないと、その働きを理解することはできません。そこで、球速やコースの効能が、バットにボールが当たった際の打球種別を考慮して考えていきましょう。
 
 

 上の表は2008年以降にスピードを計測出来たストレートの成績になります。前述の通り球速が増すと三振を取れる割合が大きくなっていきます。外野に飛んだ飛球が本塁打になる割合(HR/外野F)もスピードが増すと低くなっていきます。もうひとつ特徴的なのは、バットにボールが当たった場合、スピードのあるボールはゴロの割合が多く(外野フライの割合が少なく)なる傾向があるのかもしれません。ゴロは得点に与えるインパクトが小さく、逆に外野フライを多く打たれることは、得点を許す可能性が高まります。外野フライが本塁打になる割合などと併せて考えると、スピードの効能の一部と考えて良いかもしれません。
 
 
続いてコースについてもバットにボールが当たった際の打球種別を考慮して考えていきましょう。


 
 最も良い数字を残している外角低めから見ていきましょう。外角低めは三振を取れ・本塁打を少なくする働きは前述のコントロールの効能で見てきました。打たれた打球種別を見ると新たな効能が見られます。バットにボールが当たった場合は、その半数以上がゴロになっています。前述の通りゴロが増えることは得点のインパクトを小さくするので良いことです。「三振を取れ・本塁打を抑え・ゴロを多く打たせる」と外角低めが投球の基本となるのは納得のデータです。内角の低めはゴロを打たせる割合の差が、OPSの差になって表れていると考えられます(外角低めに劣りますが非常に有効なコースです)。
 次に内角高めについてみていきましょう。コントロールの効能部分で本塁打を打たれにくい・BABIPが低いことで打者を抑えているコースでした。BABIPが低い理由がこのデータから伺えます。内角の高めはインプレー打球のうち12.5%も内野フライになっています。内野フライはほぼアウトを見込める打球で、BABIPを落とさせた主要因と思われます。さらにゴロも一般的な割合を打たせているので、得点に対して影響の大きいライナーと外野フライをコース別で最も少なくしているのが分かります。高めのボールは内野フライの割合が増えることが一つのメリットですが、内角はそのメリットを最も多く受けています。外角高めは内野フライを打たせることは同等ですが、外野にフライを飛ばされる割合やその外野フライが本塁打になる割合で内角高めに及びません。
 
 
5.打球種別を考慮した上での評価
 
 最後に2008年以降のスピード・コントロールの効能を打球種別も加味したものになります。これまで取り上げたスピード・コントロールの働きをより理解出来るかと思います。
 

 
 投手が自分の思い通りのコースに全て投げることは不可能でしょう。コントロールをつけるためにスピードを犠牲にしすぎても、その反対でも打者を打ち取るのが難しくなります。変化球の影響について今回は考慮していませんが、それでも投手が打者を抑える上でスピード・コントロールのバランスが働いているのを各種データが示しています。

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