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楽天・聖澤選手の四球数

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/05/20(金) 10:00rss

 東北楽天ゴールデンイーグルスは開幕から攻撃陣が振るわずなかなか得点が入りません。6日の西武戦から7試合連続1得点以下と41年ぶりの不名誉な記録を作ってしまいました。ルイーズ・岩村両選手を登録抹消するなど活躍を見込んでいた長距離砲の不振が目立ちます。ルイーズ・岩村両選手の不振は明らかですが、今回は気になる数字が出てきた、トップバッターの聖澤選手を取り上げます。
 
 
1.聖澤選手の四球数
 
 聖澤選手の成績を見比べて気になるのは四球の数です。昨年は577打席で32個の四球を選んでいますが(四球率5.5%)、今季は114打席で1つしか四球を選んでいません(四球率0.9%)。4月16日オリックス戦の第一打席で四球を選んでから、96打席連続で四球がありません。もともと四球を多く選ぶタイプではありませんし、打席数も114とそれほど多くはないですが、この割合は少し気になるところです(データはすべて5月16日終了時点)。





 規定打席に到達した選手のなかで比較的四球が少ない選手と比べても四球数・四球割合ともに少なくなっています。今季の出塁率は3割に届かず、四球を選ぶ割合が昨年の出塁率との差を生んでいます。打席が最も多いトップバッターを務め、盗塁を数多く記録している聖澤選手が四球を選べていないのはちょっとした損失です。
 
 聖澤選手が114打席で1つしか四球を選んでいないのをどうとらえるべきでしょう。これまでのプロ成績を参考にその確率を考えてみました。下のグラフは聖澤選手の通算・2011年・2009年それぞれの四球率を基に114打席でどれくらい四球を選ぶ割合になるのかを表しています。打席数の少ない2009年を入れたのは、最も四球率が悪かったためです(聖澤選手の四球を選ぶ能力がかなり低い場合を想定)。聖澤選手の四球を選ぶ能力を、昨年の四球率(打席に対して5.5%)と仮定すると114打席で1四球になるのは1.0%、キャリア通算で考えた場合でも1.79%と小さい数字になります。2009年の四球率ならば10.26%と1つしか四球を選んでいなくても違和感はありません。
 

 
 ここまで114打席の結果でしかなく、この値は信頼できるものではありません。以前三宅氏のレポートで指摘されていましたが、МLBでは少なくとも200打席くらいの四球率でなければ、数字に信頼性がないようです(NPBでも四球率は安打率などに比べれば比較的信頼のおける数字です)。今後もう少し打席を積み増さないと聖澤選手の四球を選ぶ能力に迫れません。そういった意味でも現時点で聖澤選手に変化が起こっているかは不明としておいた方が良いでしょう(ここから四球を連続して選ぶことも考えられます)。しかし、攻撃への貢献が大きく、今後のキャリアを考えると少し気をつけて四球割合を見た方が良いかもしれません。能力とは別にこまで四球を少なくさせている要因について考えてみましょう。
 
 
2.聖澤選手の打撃スタイルの変化?
 
 昨年の聖澤選手はレギュラー1年目ながらある程度の四球を選べていたのは事実です。打席でのアプローチが変わってしまったのでしょうか?
 最初に確認するのはボールゾーンのスイング率です。一般的にボールに手を出す割合が増えるれば、空振りや凡打になる割合が増えることになります。聖澤選手は打席全体ではリーグの平均よりややボールを振る割合が多いようです。この点は昨年とそれほど変わりません。これを2ストライク後に絞ってみると、今季は2ストライク後のボール球の2/3近くに手を出しています。追い込まれるとストライクゾーンを広げて対応するのは理解出来ますが、リーグ成績と比べてもかなり高い割合で手を出しているようです。この点は四球を減らしている要因と言えそうです。
 ボールゾーンのコンタクト率も聖澤選手が四球を選ぶ選択を狭めているようです。バットコントロールの良い聖澤選手は、リーグの平均に比べボールゾーンでもバットに当たる割合が高いです。今季はボール球でも7割をバットに当てています。コンタクト率は基本的に高い方が良いですが、ボールを振る割合が高いとその能力があだになる場合があるかもしれません。ボールをスイングしてフェアゾーンに飛んでしまえば、ストライクゾーンを打つのに比べアウトになる割合が高くなる悪い面が存在します。1打席あたり相手投手に投げさせる割合が4.05から3.87になっているのは、振らなくてもよいボールを振って、フェアゾーンに飛んでしまった打席が昨年より多いからかもしれません。
 

 
 次に聖澤選手の打球別の結果を見ていきましょう。ゴロ・ライナー・フライを見ていくと、昨年に比べゴロの割合が増え、フライの割合が減っているのがわかります。ゴロが増えることは、足の速い聖澤選手にとって有利に働くと考えたくなるかもしれませんが、結果(BABIPや長打率)に結びついていません。ゴロを打つ割合の増加は先ほどのボール球への対応が原因のひとつかもしれません。ライナーを打つ割合が昨年に比べ多くなっているので打率にさほど違いはありませんが、ライナーを高い割合で打ち続けられる保証はないだけに心配です。四球を選ばずに、ゴロとフライがこのままの割合だと得点への貢献(wOBA)はそれほど上昇しないでしょう。昨年はリーグの平均的な打者並みの得点貢献(wRAA-2.6)でしたが、今季の成績を基に昨年と同じ577打席を担当するとリーグの平均的な打者に比べ-6.4とマイナスの幅を広げてしまう見込みです。
 

 
 さらに、具体的に打つ割合が変化したゴロ・フライについて細かく見ていきましょう。
打つ割合の増えているゴロですが、安打になる割合や得点への貢献で見ても昨年とほとんど変わっていません。聖澤選手がゴロを打つことにそれほどメリットはなく、相手バッテリーの思惑通りになっているのかもしれません。

 打つ割合の減っているフライはどうでしょう?ここまでフライを多く打っているわけではありませんが、少なくともゴロよりも有効な打球と言えそうです。昨年に比べ安打になる割合・得点への貢献は下がっていますが、わざわざゴロを打つ(打たされる)よりも良いでしょう。
 

 
 
3.聖澤選手の復調に必要なもの
 
 ここまで四球の割合から聖澤選手の打撃について考えてきました。打席でボールを振る割合やボールゾーンのコンタクト割合によって色々な面で影響がありそうです。チームは積極打法でバットを振っていくことが基本方針のようですが、聖澤選手はスイングする前のボールの選定がポイントになりそうです。今季は盗塁数を順調に伸ばしているだけに、四球・フライ増による出塁が増えれば得点への副次的な効果も期待出来ます。チームの得点力不足解消は主力選手の復調が欠かせませんが、聖澤選手がサポート出来る面はまだまだありそうです。
 

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