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2000本安打の見通し

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/08/05(金) 10:00rss

1.1500安打達成者
 
 今シーズンは開幕から通算1500安打を4名の選手が記録しています。最初に1500安打に到達したのは、4月20日、オリックス戦の7回に二塁打を放った日本ハムの金子誠選手です(18年目での達成となっています)。続いて7月10日広島戦の5回に巨人・高橋由伸選手が左翼線に安打を放ち、プロ入り14年目で史上108人目となる1500安打を達成。さらに後半戦が本格的にスタートした26日に楽天・松井稼頭央選手(すでに日米通算2000安打を記録しています)が、ソフトバンク戦の6回に中前打を放ち、NPB通算1500安打に到達。西武時代から1233試合での達成は史上最速記録となっています。最後に阪神・新井選手が、7月30日横浜戦で須田幸太投手から左翼線へ二塁打を放ち、通算安打を1500まで積み上げています。各選手の状況は異なりますが、節目の記録として多くのメディアに取り上げられました。1500安打達成から次は2000安打と期待が膨らみます。実際に2000安打達成の見通しはどのくらいあるのか考えていきましょう。
 
 
2.高橋由選手と新井選手のキャリア安打数
 
 2000安打の見通しを考える上で1500安打を達成した高橋由選手と新井選手がどの様に安打を積み重ねてきたのか確認しましょう。
 
◎高橋由伸選手の場合
 

 
 高橋由選手は入団から即レギュラーを獲得し、1年目から140安打を記録しています。20代では最低でも125安打以上を記録し、29歳で1000安打に到達しています(当時歴代8位のスピード記録)。20代でも故障で離脱するケースはありましたが、30代に入った2005年は肩や足首の故障で初めて規定打席に届かなかったシーズンとなります。翌年も脇腹や肩を痛め出場機会は横ばいでした。2007年は一番打者として起用され、3年ぶりに規定打席に到達、自身3度目の150安打を記録し復活を印象付けました。しかし、翌年から腰痛に悩まされ2009年は僅か1打席しか出場できませんでした。入団から最初の7年間で3613回打席に立っていますが、それ以降の7年間では2105打席と出場機会を減らしています。これに伴って20代は毎年140安打以上あったペースが落ち込んでしまいました。
 
 
◎新井貴浩選手の場合
 

 
 新井選手は高橋由選手とは違いレギュラー獲得までにしばらく時間がかかりました。入団4年目の2002年に初めて規定打席に到達しレギュラーを獲得しました。しかし、2003年金本選手が阪神に移籍し、4番に指名されると不振に陥り2004年までスランプが続きます。2005年に復調し、その後は毎年安定した安打数を記録しています。阪神に移籍した2008年に腰痛で一時的に出場機会を減らしますが、2010年に自己最多の177安打を放っています。1999年からの6年で記録した安打は492本ですが、2005年からの6年で倍近い929安打を打っています。今年もまずまずのペースで安打を打ち続けています。
 
 高橋由伸選手はキャリアの前半で大きく安打数を稼ぎましたが、故障で安打のペースが大きく落としています。対して新井選手はキャリアの序盤こそ躓きましたが、20代後半からペースを上げています。
 
 
3.2000安打に必要な打席数
 
 今後2000安打を達成する上で高橋・新井両選手はある程度まとまった打席を確保しなくてはなりません。高橋選手は36歳、新井選手は34歳で両者ともベテランと呼ばれる時期に差し掛かっています。故障やスランプに陥った場合は、容赦なく若手に替えられる可能性もあります。非常にシンプルな方法ですが、選手の残り打席数を考える上で参考になる数字を見てみましょう。これは、BEYOND THE BOXSCOREでChris St. John氏がNick Markakis: 3,000 Hit Club Member?で使用した方法です。3000安打達成者のキャリア終了年が41歳だったのを基に、対象選手が1年あたりに立った打席と41歳までの年数を掛け合わせ、残りの打席を見積もっています(非常に楽観的な予測ですが、選手の可能性に幅を持たせる考え方かもしれません)。日本の2000安打達成者の平均引退年は39.8歳ですが、最近では40歳を超えて活躍する選手が多いため、MLBと同じく41歳を引退年と考えて、(かなり選手に好意的な)残りの打席を算出しています(今季は0.5年として計算)。
 

 
 2000安打に最も近い現役選手を取り上げていますが、1500安打以上を放っている選手はかなり加齢が進み、残された打席がそれほど多いわけではありません。出場機会が少なくなっている選手もいるだけに、記録到達は難しい選手が大半かもしれません。
 
 
4.キャリア・ターゲット
 
 残りの打席数ではキャリア全体の数字が基になっていましたが、現在のシーズンに近いデータを使った方がより選手の実情を反映させられます。ビル・ジェームズは毎年Bill James Handbookで節目の記録に到達する見通しを示しています。
 
算出は、

①直近3年間の安打数(年度ごとに重みづけ)
②引退までの年数(42歳を引退する年度と見込んでいます)
 
この2つが基本となります。ビル・ジェームズは、安打を打つ能力や残りの選手寿命などをよりシビアにみています。下の表は1500安打以上の選手のキャリア・ターゲット(選手が2000安打に到達する見込み)を表しています。今シーズンの半分が過ぎているので、現在の安打割合から来季開幕前の見通しまで算出しています(選手の年齢よりもひとつ多く年を取った見通し)。
 

 
 2000安打への視界が良好なのは日本ハムの稲葉選手です。2000本まで残り80安打を必要としますが、打撃能力・出場機会ともに充分と見積もられています。次に有力なのは巨人のラミレス選手です。2000安打まで210本と2年の出場機会は確保できそうです。外国人選手初めての2000安打達成の見通しは良いようです。3番目はソフトバンクの小久保選手です。残り56本と最も2000安打に近い存在ですが、残りのキャリアが短いと判断されこのような評価に落ち着いています。今季は好調を維持し、球団のサポートも得られそうで2000安打到達は濃厚です。ヤクルト・宮本選手の見通しが悪いのは年齢の影響です(42歳をキャリア終了としているため)。今季は順調に安打を重ね、来季も出場機会をある程度確保出来そうです。そのため、もう少し可能性は高くなると思われます。

 そのほかにも福浦選手などは2000安打の可能性を残しているようです。一方で谷選手はキャリア中盤まで順調なペースでしたが、ここ数年の不振で一気に2000安打の可能性がしぼんでしまいました。キャリア後半の失速は取り返しのつかない事態になる証左と言えます。
 

 
 その他の選手も見通しはかなり厳しいようです。高橋由伸選手は有力候補でしたが、度重なる故障で厳しい状況に追い込まれています。1500安打以上を記録している中で、新井選手は2000安打の有力候補です。今のペースを維持し、大きな故障がなければ年齢的にも達成は十分可能な見通しとなっています。余談ですが、毎年多くの安打を記録する青木選手は、さらに高い達成見通しとなっています。
 
 
5.2000安打の価値
 
 2000安打は表彰や名球会の加入条件になるなど何かと注目される記録です。ファンにとっても切りの良い数字で、選手を直感的に評価できる基準と言えるかもしれません。もちろん、プロで2000本もの安打を記録する選手が一流ということは間違いないでしょう。しかし、2000本という節目以外にその値が意味することはそれ程多くありません。安打1本でも時代や環境が違うだけでその価値に大きな違いがでます(この点は道作氏のコラムを参照ください)。2000安打に届くか届かないかで、選手としての評価が大きく変わってしまうのは残念なことかもしれません。安打数はもちろん大切ですが、安打数では見落とされがちな選手を、他の視点から再評価する仕組みは考えた方が良いかもしれません。
 

 
参考
BEYOND THE BOXSCORE Chris St. John Nick Markakis: 3,000 Hit Club Member?
Bill James Handbook2011

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