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日本ハムは中田選手と長期契約すべき?

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/08/10(水) 10:00rss

 日本ハムの中田選手が開幕から全試合に出場し、チームの主軸としてまずまずの成績を残しています。入団からここ数年の起用を見ると、編成や現場がチームの主軸として育てようという意図を感じましたが、その期待に中田選手が応えています。今回はチームの主軸に成長し、これから全盛期を迎える中田選手と長期契約を結ぶべきかを考えていきたいと思います。
 
 
1.中田選手の成績
 
 中田選手は2007年の高卒ドラフトで入団し、4年目のシーズンを迎えています。今季の成績は打率/出塁率/長打率が.261/.309/.463と統一球が導入されたにも関わらず、前年の成績を上回っています。特に長打力が魅力で、ISOは.200を超え長距離砲として順調に成長しています。入団3年目まではリーグの平均的な打者レベルに到達していませんでしたが、今季はwOBAが跳ね上がりリーグの平均的な打者に比べ11.3得点(wRAA)も利得を稼ぐ打者となっています。
 

 
 このままの成績で今季を終えると、22歳までに800打席を消化する見通しです。22歳までに800打席を記録したのはNPB史上でも僅か(NPB創成期を含め過去110名あまり)で、過去に王貞治・張本勲・野村克也・イチロー・松井秀喜・清原和博・松井稼頭央・掛布雅之・柴田勲・土井正博などが存在し、エリート・プレーヤーといえます。中田選手はチームの期待もありましたが、一定の成績を残し実力を示しています。入団4年目で現在の年俸は1800万円(推定)とチームにとってコストパフォーマンスの優れた選手になりつつあります。日本ハムは年俸総額が限られているので、コストパフォーマンスが良い時期をなるべく長くしたいところです。そのため中田選手が今後どのくらいの活躍をし、年俸がどの程度上昇するのか目途を立てておかなければなりません。
 
 
2.過去選手の22歳までの成績とその後
 
 中田選手の今後を考える上で、これまでの成績がどのくらい参考になるのでしょう。22歳までに800打席以上の出場機会を得た選手を見てみましょう(主な活躍が2リーグ制以降の選手89名を参照)。
 
 ここでは、打率・四球割合・ISO・OPSを扱っています。打率は打撃能力、四球割合は安打以外の出塁能力、ISOは長打力、OPSは攻撃全体について大まかに見ると考えてください。
 

 
 最初に22歳までと23歳以降の打率の関係です(横軸が22歳までの打率、縦軸が23歳以降の打率)。打率に関して参考にはなりそうですが、信頼を置くには心もとない値となっています。
 
 次にISOと四球割合です。


 

 
 ISOや四球割合は打率に比べ、23歳以降も同じような能力を発揮する割合が大きいようです。長打を打つ力や選球面に関して22歳までの数字はまずまず信頼出来そうです。
 
最後にOPSとなります。
 

 
 ISO・四球割合の相関が高くOPSもそれなりの数字になっています。今後の中田選手を考える上で、ISO・BB%・OPSなどはある程度参考になりそうです。特に長打面で高い能力を持っている中田選手は、将来の見通しが立てやすくなるかもしれません(反面、四球を選ぶ割合は将来もあまり期待出来ないと考えておくのが無難でしょう)。
 
 
3.同じようなタイプの選手
 
 もう少し過去選手を参考に中田選手がどのような選手になっていくのか考えられないでしょうか?以前のコラムで選手をタイプ別に分類したものがありましたが、今回も選手をタイプ別に分けて将来を予測する参考にしましょう。選手のタイプを分類するのに使用したのは以下の項目です。これはBaseball Prospectusの選手予測モデル(PECOTA)を参考にしています。
 
・打率
・四球割合
・Isolated Power
・三振割合
・守備位置
・盗塁数
・身長
・体重
・投打
 
 22歳までに800打席以上の出場機会があった選手に中田選手を加え、22歳までの成績や身体情報を基に分類したのが下の図になります。選手の分類表を合わせて掲載したので参照してください。
 


 (あくまで参考程度ですが)この分類で中田選手は、表の黄色とオレンジの選手に体格や22歳までの成績が似ています。その中でも、大杉勝男・加藤俊夫・香川伸行・田中幸雄・中村武志・城島健司選手に近い選手像となっています。基本的に立派な体躯、ある程度の長打力、高い三振割合、やや少ない四球割合、盗塁の少ないグループといえそうです。全体の傾向ももちろん参考になりますが、このグループの選手キャリアはより具体的に中田選手の未来を考える材料になるかもしれません。
 
このグループの選手が年齢別にどのくらい打撃で貢献したのかを見たのが下のグラフです。
 


 
 このタイプで最も貢献のあった大杉勝男氏は22歳から一気にその打撃力を開花させています。城島選手も捕手ながら早い時期から打撃での貢献を始めています(田中選手も主に遊撃手を務めましたが、求められる攻撃力を上回っています)。加藤・中村両選手はほとんどチームに貢献していない様に見えますが、捕手というポジションを考慮すると全盛期(24~30歳)はリーグの平均的な打者レベルの力を持ち十分な貢献をしています。
 香川選手は早い段階で引退に追い込まれています。(サンプルは少ないですが)このグループはチームに貢献出来た選手は多いですが、長期契約を考える上で一定のリスク(香川選手のような例)は存在するようです。
 
 全体を見るとこのグループはキャリアの長い選手が非常に多いです(その中でも20代中盤から後半がもっとも貢献を見込めます)。恵まれた体格がそれを可能にしているのかもしれません。長い間貢献を続けた選手が多いのは、日本ハムにとって好材料といえそうです。単年契約を続けることより、早い時期の(割安な)長期契約はコストに対してリターンを多く作れる可能性があります。選手にとっても、若い不安定な時期にある程度の年俸と時間を保証されるので、一方的に不利になる話ではありません。
 
 
4.まとめ
 
 ここまで過去の選手を参考にしながら中田選手の将来を考えてきました。まだまだ不確定な要素が多く、長期契約を検討するには材料が足りないかもしれません。しかし、NPBでは選手の年俸を一度上げてしまうと、球団が取れるオプションは一気に狭まります。今回の分類でも実績(プロ年数)が増えれば(参考になる選手の数が多くなり)信頼度は上がっていくでしょうが、契約の最適なタイミングを逃す可能性はあります。活躍に見合う年俸を払うのは当然ですが(年俸を早い段階で上げすぎるリスクが生じます)、今後の見通しを考えて先行投資をしていくのは、資金に限りのある球団の有力な選択肢になるはずです。以前もお話ししたようにMLBでは若手のエリート選手に対して、若い時期から長期契約を結ぶケースが増えています(大きな投資だけに様々な検証ののち判断されています)。(優秀な)若手選手の見返りの大きい時期を(安く)確保をできなければ、資金に限りのある球団が優位に立つことは難しいでしょう。
 
 中田選手は多くの実績を残したわけではなく、現在の年俸を考えるとそれほど急ぐ必要がありません(ただ判断は数年後にしなくてはなりません)。さらに、出塁面で課題があること、守備位置がレフト・ファーストとスキルポジションでない点が、長期契約を検討する際のマイナスになります。ただし、22歳という年齢(と現在の年俸)は魅力的で、3~5年程度の契約なら十分検討する価値があると思います。先進的な編成を続ける日本ハムが、これからチームの中心となっていく中田選手とどの様な契約を結ぶのか注目したいところです。
 


参考文献 Baseball Between the Numbers/Baseball Prospectus

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