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Batted Ballデータで見る投手がコントロール出来る範囲

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/08/17(水) 10:00rss

 各著者から様々なリポートが出ていますが、BABIPに関する面白いリポートが続いているので補足的な見方を紹介します。それはBaseball Labでよく使用されるBatted Ballデータです。このデータが表しているもの、さらにデータから投手がコントロール出来る範囲について考えていきましょう。
 
 
1.能力を反映した指標(年度間の相関)
 
 一般的に投手の能力を測る指標として真っ先に名前が挙がるのは防御率でしょう。野球中継やメディアにも掲載されるなど定着しています。しかし、防御率は投手の能力を評価出来ているのでしょうか?
 
 指標全般に言えることですが、基本的に良い投手は安定して優れた能力を発揮しているはずで、ある年の前後の能力が極端に変わる可能性は少ないと考えられます。能力を表す指標がしっかりと働いているか見極めるには、選手の前後のデータを比較して数値の相関を取ることが一般的です。これはYear to Year Correlationと呼ばれ、指標が選手の能力をどのくらい表しているのかと同時に、選手の影響がどの程度及ぶのか推察するベースとなります。
 
 例えば下の表は2008~2010年に連続して350人以上の打者と対戦した投手の各種指標が、年を跨いでどのくらい相関があったかを表したものです(サンプル数は67名。サンプル数が多くありませんが、350打席としたのは後ほど取り上げるMLBとの比較のためです)。防御率は、前年(あるいは翌年)の成績に対して相関が0.29とそれほど強い訳ではありません。各種コラムで指摘されていますが、防御率は能力を表す部分もありますが、それ以外の要素が入り投手の能力を判断するのにそれほど適した指標ではないと考えられます。対して相関が高かったのは、奪三振率や与四球率になります。これはFIPの構成要素で、被本塁打率も含めFIPがなぜこのような項目から作られたのか理解することが出来ます。今回のデータはわずか3年ほどで、打者も含めもう少しまとまった分析をBaseball Labの蛭川氏が行っています「指標の年度間相関」「指標の年度間相関(2010)」ので、こちらで確認いただけるとさらに理解が進むでしょう。
 

 
 
2.投手の打球割合
 
 年度間の相関についての考え方は、一般的な防御率だけでなく、もう少し細かいデータにもあてはめることが出来ます。Baseball Labでよく使われる、ゴロ・フライ・ライナーなどのBatted Ballデータは投手の能力が及ぶ範囲を階層的に理解する上で欠かせません。この打球種別のデータと年度間の相関を使うことで、投手のコントロール出来る範囲をおおまかに理解することが出来ます。
 

 
 上の表は、投手がバットにボールを当てられた打球割合の年度間の相関を表しています。NPB①は350以上の打者、NPB②は300以上の打者と2年連続で対戦した投手を参考にしています。MLBのデータは2002~2005年に2年連続で350以上の打者と対戦した投手のデータになります(MLBのデータは、The Hardball Times Baseball Annual2007でDavid Gassko氏のDo Player Control Batted Balls?を参考にしています)。
 投手が打たれる打球については、NPB・MLBともに同じような傾向が出ています。これを見ると三振や与四球の他に投手が影響力を行使出来るのはゴロを打たせる割合のようです。MLBでは相関が0.84と非常に高く、NPBでも最も高い値になっています。
 
 ゴロと同様にフライを打たせることに関しても投手は多くの影響があるようです。(ほぼアウトを見込める)内野フライと(危険な打球である)外野フライを打たれることは投手の主体的な責任と見ることができそうです。ここまででゴロとフライは投手がコントロール出来る範囲が大きいと捉えることが出来ます。
 
 次はライナーについてです(ちょっと特殊です)。ライナーを打たれる割合に関してはNPB・MLBともに関連が見当たりません。しかし、前述のGassko氏のリポートによると、ゴロの割合とエアボール(ゴロ以外の空中に飛んだ打球)のうちライナーを打たれる割合には相関があります(NPBでも同様で、0.42の相関があります)。このことから投手がライナーを打たれることに対して、ある程度の影響(責任)があると考えられています。Gassko氏は1年間のライナーデータだと、ゴロを多く打たせる投手がエアボールを打たれるのが少ないにもかかわらず、フライボール投手と同じくらいのライナー数になってしまい、年度間の相関で影響がないと見てしまうと指摘しています。
 
 
3.投手の影響範囲(打球種別毎の内容)
 
ここまでは投手が打たれた打球割合を見てきましたが、打球種類毎にさらに細かく見ていきましょう。
 
◎外野フライ
 

 
 上の表は外野への飛球割合に加えて、フライがシングルヒットになる割合、フライが二塁打・三塁打になる割合、フライが本塁打になる割合、フライが安打になる割合の年度間の相関を表しています。外野フライが安打になる割合について、投手がコントロールできる部分はわずかなものになりそうです(ただ、MLBよりも少しは関与できる幅があるのかもしれません)。
 外野フライで最も注目するべきは、外野フライが本塁打になる割合です。当サイトでもHR/外野フライのデータを掲載していますが、投手は外野フライが本塁打になる割合をほとんど制御できません。失点に対して本塁打は大きなイベントですが、それが偏って出現してしまった場合、投手の能力を誤って把握してしまう可能性があります。この点、防御率はもちろんFIPでも同じようなリスクが存在します。そのためFIPの本塁打部分を、はじめから打たれた外野フライに一定の本塁打を見込んで計算したのがxFIPです。これにより絶対数が少ない本塁打による偶然の揺らぎが排除され、より投手の能力を予測するのに適した形になっています。
 
 
◎ライナー
 

 
ライナーも外野フライと同じように、その打球が安打になるかアウトになるかに投手はほとんどコントロール出来ないようです。
 
 
◎ゴロ
 

 
 投手はゴロを打たれる割合に関しては影響力を行使できますが、それ以外についてはほとんど関与できません。フライとゴロの安打になる割合についてNPBとMLBで数字が異なるのは何が影響しているのか今後検討したいところです。
 
 
4.まとめ
 
 打球種類別の年度間相関データを見てきましたが、投手は打たれる打球の種類に対して影響力を行使(ゴロ・外野フライ・内野フライ・ライナーの順番)できます。また、一部例外はありますが、その打球が安打になるか凡打になるのかまではコントロールが及ばないようです。
 
 Batted Ballデータを理解することは、投手の力を把握する助けになります。さらに、投手の成績が妥当なものなのか、それとも幸運や不運によってもたらされたのか理解するのに不可欠です。投手能力を見極める試みに対してBABIPの問題は常に存在します(改めてBABIPについて蛭川氏Student氏のコラムを確認してください)。Batted Ballを基にした年度間の相関を見ると、BABIPの揺らぎの基になるものを理解できるかと思います。投手の能力を表す指標として、防御率に代わりFIPが使われ、Batted Ballデータを利用したxFIPが登場します。さらに、当サイトでも蛭川氏がリポートした、投手が打たれた打球性質から導かれた「真の防御率tERA」(他にも新しい投手指標が生まれています)につながっていきます。今後も投手の能力を味方の守備や環境・運などから分離していく上で、Batted Ballデータは大きな役割を果たしていくと思われます。このデータをしっかり理解出来ると、投手の見え方が変わるかもしれません。
 
 
参考文献
The Hardball Times Baseball Annual2007
David Gassko「Do Player Control Batted Balls?」

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