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外野手の肩~Part1

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2010/12/07(火) 10:00rss

1.測定する状況の確認
 
 外野手の守備を評価する上で、肩の強さは外せない要素と考えられます。外野手の肩の強さを測る上で補殺数は引き合いに出される事が多くあります。しかし、補殺数だけの比較では機会数に対する補殺の割合が考慮されません。補殺が多い外野手でも肩が弱く走者に次の塁を狙われる機会が多いかもしれません。また、次の塁を狙おうとする走者を抑止した場合の評価は、補殺数では計れません。
今回はプレーごとのデータを使って、今シーズン走塁を最も良く制御した外野手を探ってみましょう。
 
使用するデータは

 ①走者が一塁にいて単打を打たれたケース(二塁に走者がいる場合は除外)
 ②走者が二塁にいて単打を打たれたケース
 ③走者が一塁にいて二塁打を打たれたケース
 ④走者が三塁にいて外野フライを打ち上げられたケース
 
さらにアウトカウント、打球が飛んだ位置(レフト・センター・ライト)に分けて選手・チームの評価を行います。
最初にライトのデータを例にして、それぞれの項目を説明します。



 上の表は①~④の状況でライトに打球が飛んできた場合のデータになります。「機会数」はその状況で打球が飛んできた数。「抑止」は走者に2つ(二塁打の場合は3つ)以上の進塁をとどまらせた数(「抑止できず」はその逆)。「抑止率」は「抑止」した数を「機会数」で割っています。一番上の表の「走塁死」は2つ以上の進塁を狙った走者をアウトにした数。2~4番目の表の「失点」は2つ(二塁打の場合は3つ)以上の進塁を狙われて、本塁生還を許した数になります。「補殺率」は「抑止できず」から「失点」を引いた数(補殺)を「抑止できず」で割っています。今回はリーグを分けて抑止・補殺割合をそれぞれ算出しています。これは、投手が走者になるケースが多いセ・リーグは、抑止部分でクレジットが多くなる事が予想されるためです。
 走者が二塁にいてライトへの単打で本塁生還をあきらめる割合は、0アウトで61.9%、1アウトで53.7%、2アウトで27.4%となっています。特に2アウトでは、バットにボールが当たった瞬間に走者がスタートを切り、0・1アウト時に比べ走者を三塁にとどめるのが非常に難しくなっています。他の走者状況でも、アウトが増えると走者が進塁を狙うケース(特に本塁)が増えるようです。補殺率は無死ではアウトになったケースが無く、走者が無理をしなかったのがうかがえます。
 
 
2.測定方法
 
それではこのデータを基に選手の評価をしてみましょう。



 上の表は広島・広瀬選手がライトのポジションを守った時の成績です。状況別で広瀬選手が走者にどのような走塁をされたかが分かります。一塁で単打を打たれたケースを見てみると、0アウトでは広瀬選手は13回中8回走者を二塁にとどめています(抑止率61.5%)。それに対して、リーグの平均的なライトなら同じ13回で9.1回(13回×70.3%)走者を抑止しているはずです。0アウトのケースで広瀬選手は1.1回余分(抑止±)に次の塁を狙われたと見る事が出来ます。
 同じように1アウトのケースでは、広瀬選手は32回中26回走者を塁にとどめ、リーグの平均的なライトの19.7回に比べ、6.3回も多く走者に進塁を試みさせなかった計算になります。補殺率も同じように計算し、平均的なライトに比べ状況ごとに補殺が多かった(少なかった)のか比較できます。
 今季の広瀬選手は、一塁からの単打・二塁からの単打で走者に2つ目の進塁をあきらめさせるケースが目立ちます(2つの状況で平均的なライトに比べ11.4回も進塁を断念させています)。これは、広瀬選手の肩に対して走者や三塁ベースコーチが敬意を払っていたと言えそうです。さらに、進塁を狙った走者に対して、平均的なライトに比べ5.1回多く補殺を記録しています。進塁する機会を減らし、2つ以上の進塁を狙われてもアウトにする割合が高い優れた外野手である事が分かります。
 
 
3.肩による抑止・補殺の失点化
 
 もちろん、抑止±や補殺±だけでも肩の強さを計る事は出来ます。しかし、広瀬選手の強肩が、どれだけ失点を防いだか算出する事は出来ないのでしょうか。これもおなじみになった得点期待値を使う事で、失点をどの程度減らしたか(増やしたか)を算出する事が出来ます。



 上の表は状況別に、「抑止に成功」か「抑止に失敗」した場合、「補殺に成功」か「補殺に失敗」した場合の得点期待値の変化を表しています(走者状況は簡略化しています)。失点換算は状況別に走者をとどめられなかった場合の得点期待値から、走者をとどめた場合の得点期待値を引く事(補殺のケースも同じ)で、どのくらい失点を防げたかを算出できます。
 一死一塁で単打を打たれた場合、一三塁になると得点期待値は1.185になります。走者に進塁をあきらめさせて一二塁なら得点期待値は0.940です。走者をとどめる利得(失点を防ぐ働き)は1.185-0.940で0.245と見積もれます。補殺も同じような計算方法になります。同じケースで一三塁になると得点期待値は1.185、走られても補殺を記録すれば、アウトカウントが増え二死一塁に状況が変わり、得点期待値は0.226になります。先ほどと同じように、1.185-0.226で失点を減らす価値は0.959となります。二塁からの単打など失点を伴う場合は、抑止できなかったケースや補殺を記録できなかったケースの得点期待値に得点1を足して計算します。例えば、一死一塁で二塁打を打たれた場合、生還を許せば1得点+一死二塁の得点期待値を足して1.711、一塁走者を三塁にとどめ一死二三塁だと期待値は1.375になります。1.711から1.375を引く事で、一塁走者に本塁突入をあきらめさせた事を、0.335失点減じる働きと評価する事が出来ます。さらに補殺なら、1.711(得点1+一死二塁の得点期待値)から二死二塁の得点期待値0.333を減じて、1.377となります。このケースの補殺は非常に価値の高いプレーである事が分かります。
 



 それぞれの状況で失点換算と抑止±、補殺±を掛け合わせる事でどのくらい失点を防いだかを見る事が出来ます。上の表を見ると広瀬選手の肩は、4つの状況すべてで失点を減らす働きを見せ、リーグの平均的なライトに比べ合計で9.5失点を防いでいます。やはり広瀬選手は走者を良く制御した外野手と言えそうです。他の外野手と比較する事で、より実力が鮮明になりますが、本日は表や数字が多かったのでここまでにしましょう。
 
 明日は、各ポジションの選手成績および外野手で最も失点を防いだ選手とチームについて見ていきたいと思います。
 
 

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