歴代ロッテ遊撃手と比べた小坂誠
岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]
2010年10月4日楽天に所属する小坂誠選手は楽天の公式サイトで「この身体でどこまで出来るのか挑戦してまいりましたが、皆さまの要求に見合う結果を以前よりも残せなくなった為、身を退く決断を致しました。現役最後は仙台でプレーするチャンスをいただき、14年間でたくさんの経験をすることが出来ました。関係者の方々、ご声援いただいたファンの皆さまには、心から感謝申し上げます。本当に有り難うございました」と引退を表明した。
1996年ドラフト5位でロッテに入団し、1年目から遊撃手として活躍し新人王を獲得。2度の盗塁王、4度のゴールデングラブ賞を受けています。2005年にはロッテの31年ぶりの日本一にも貢献した名遊撃手です。
1.ロッテの歴代遊撃手
故郷の楽天で引退を表明した小坂ですが、その活躍の大部分はロッテ在籍中で、特に守備面での貢献は印象深いものです。小坂がロッテにとってどの様な遊撃手だったのか、歴代のチーム遊撃手と比べることで明らかにしていきましょう。
毎日オリオンズ時代から遊撃手としてシーズン100試合以上に出場した選手は以下の通りになります。
球団設立から20年余り遊撃手として長い期間君臨する選手はいませんでした。1974年から5年連続で100試合以上出場した飯塚佳寛が遊撃手のレギュラーとして長く活躍した最初の選手と言えるでしょう。その後、水上善雄・南渕時高をへて1997年から2005年まで小坂がロッテの遊撃手を務め、翌年から今オフにポスティングでミネソタへの移籍が決まった西岡にバトンを渡しています。遊撃手として100試合以上出場したシーズンは水上と並んで歴代最多の7度記録しました。
2.遊撃手としての貢献
毎日~大毎~東京~ロッテ時代の遊撃手の系譜を見てきましたが、各選手がどれくらいチームに貢献したのでしょう。ただ単に打撃成績や守備成績を比べるだけでは、チームへの貢献は測れません。前回紹介したWin Sharesの視点から、各選手がどのくらいチームの勝利に貢献したのか見ていきましょう。今回重要になる遊撃手の守備Win Sharesは補殺を取った数・併殺を記録した数・失策数・刺殺数が元になっています。それぞれに重みづけをし、リーグ全体の遊撃手の数字と比べて守備を評価しています。
下の表は主な遊撃手のWin Sharesとなっています。総合評価はWS(Win Shares)で右端(SS)は遊撃手として記録した守備での貢献を表しています。Win Sharesは3毎に1勝分の貢献となるように設計されています。それでは具体的に選手の貢献を見てみましょう。
■飯塚 佳寛
前述したように、チームで初めて遊撃手として長くプレーした飯塚選手は、64WSを記録しています。およそチームに21.3勝分の貢献と見ることが出来ます。最盛期は1976~1977年にかけて、この時期の成績はチームの主力として恥ずかしくない成績を残しています。
■水上 善雄
小坂と並んで遊撃手で7度シーズン100試合以上出場した水上選手は、守備面での貢献が攻撃を上回っています。1980~1987年にかけてコンスタントに高い守備WSを記録しています。遊撃手の攻撃力がそれほど求められない時代背景もあり守備的な遊撃手としてロッテを支えました。
■佐藤 健一
水上の陰に隠れる形だった佐藤選手も守備型の遊撃手として一定の成績を残しています。
■小坂 誠
入団1年目から守備WSが9.80とキャリアハイの成績を残し、以後も非常に高い守備能力を発揮しているのが良く分かります。ロッテ時代の128WSのうち53.8%が守備によるもので、小坂選手の特徴をよく表し、ファンの皆さんのイメージに近い数字となっているのではないでしょうか。ちなみに守備WSはチームの歴代ショートでNO.1の数字です。見落としがちですが、攻撃での貢献も歴代選手よりも高い数字を残しており、ロッテの守備型遊撃手としては完成形と言えるのかもしれません。
■西岡 剛
チーム歴代最高の攻撃的な遊撃手になります。守備の貢献に比べ、2~3倍攻撃の貢献を上積みしています。攻撃面では歴代最高だった小坂の倍近い貢献を既にしている計算になります。近年のパ・リーグ各球団は遊撃手にタレントが多いだけに、攻撃力を兼備した遊撃手として、小坂から西岡にバトンが渡されたのは必然だったのかもしれません。
■ロッテの主な遊撃手のWin Shares
上の表はチーム歴代遊撃手のWin Sharesランキングになります。小坂と西岡がチーム歴代でも非常に貢献度の高かった遊撃手であることが分かります。
3.時代が遊撃手に求めるもの
守備での貢献が目立った小坂選手ですが、その貢献は他球団の遊撃手と比べるとどうだったのでしょうか。下の表は1シーズンで高い守備WSを記録した選手になります。吉田義男・小池兼司から最近では川相・井端・宮本と守備の評価の高い選手が並んでいます。
2リーグ制以降の遊撃手で守備Win Sharesを9以上記録した選手は僅か12名しか存在しません。これは1年間に3勝分の利得をもたらしたことになり、攻撃に比べ分割の少ない守備だけにかなり大きいクレジットといえます。小坂はこれを3シーズンで記録し、近代野球では守備のスペシャリストとして勝利貢献の面からも優秀な選手である事が分かります。
しかし、守備だけでチームに貢献できていた時代から徐々に変化が起き始めます。上の表は年代別に攻撃・守備別のWin Sharesをまとめたものです。シーズン100試合以上遊撃手として出場した選手の成績が対象になっています。この表を見ると遊撃手の攻撃と守備のWin Sharesの割合に変化が出ているのが分かります。特にパ・リーグは1970年代から遊撃手の打撃力が急速に上昇してくる期間となります。小坂の現役時代半ばには守備で貢献するのはもちろん、打撃でも一定の成績を求められる時代が訪れていました(打撃の方が貢献出来る幅が大きい)。
守備で大きな貢献をした遊撃手もこの例外ではありませんでした。1990年以降に守備を武器にする選手たちもある程度の攻撃力を備え始めています。前述の守備Win Sharesを9以上記録した遊撃手を見てみましょう。下の表は各選手の通算のWSになります。
攻撃/守備は攻撃のWSを守備全体のWSで割っています(遊撃以外の守備貢献も加わっている)。攻撃/SSの項目は、攻撃の貢献を遊撃守備のWSで割ったものになります。
1990年以降だと小坂より早い時期に守備の名手とされた川相も攻撃・守備のWin Shares比率では攻撃が上回っています。近年小坂を除くと最も守備割合が高い宮本でも攻撃の貢献の方が大きいようです。また、松井・井端・鳥谷など高いレベルで攻撃と守備を両立する選手が目立ってきています。そのような時代背景の中で小坂は近年では非常に珍しい守備に特化した選手として遊撃手のポジションを守り続けました。攻守の比率を見ても山田潔や小池兼司など1950~1960年代に活躍した選手に似通っています。時代の大きな流れとは別の位置にいた小坂選手は、その独自性ゆえに多くのファンに愛されたのかもしれません。
1996年ドラフト5位でロッテに入団し、1年目から遊撃手として活躍し新人王を獲得。2度の盗塁王、4度のゴールデングラブ賞を受けています。2005年にはロッテの31年ぶりの日本一にも貢献した名遊撃手です。
1.ロッテの歴代遊撃手
故郷の楽天で引退を表明した小坂ですが、その活躍の大部分はロッテ在籍中で、特に守備面での貢献は印象深いものです。小坂がロッテにとってどの様な遊撃手だったのか、歴代のチーム遊撃手と比べることで明らかにしていきましょう。
毎日オリオンズ時代から遊撃手としてシーズン100試合以上に出場した選手は以下の通りになります。
年度 | 選手 | 球団 | 試合 |
1954 | 北村 正司 | 毎日 | 123 |
1956 | 葛城 隆雄 | 毎日 | 135 |
1959 | 八田 正 | 大毎 | 123 |
1967 | 山崎 裕之 | 東京 | 112 |
1968 | 山崎 裕之 | 東京 | 119 |
1969 | 広瀬 宰 | ロッテ | 113 |
1970 | 千田 啓介 | ロッテ | 115 |
1971 | 広瀬 宰 | ロッテ | 112 |
1974 | 飯塚 佳寛 | ロッテ | 108 |
1975 | 飯塚 佳寛 | ロッテ | 105 |
1976 | 飯塚 佳寛 | ロッテ | 122 |
1977 | 飯塚 佳寛 | ロッテ | 114 |
1978 | 飯塚 佳寛 | ロッテ | 105 |
1979 | 水上 善雄 | ロッテ | 126 |
1980 | 水上 善雄 | ロッテ | 130 |
1981 | 水上 善雄 | ロッテ | 130 |
1982 | 水上 善雄 | ロッテ | 129 |
1983 | 水上 善雄 | ロッテ | 129 |
1985 | 水上 善雄 | ロッテ | 114 |
1987 | 水上 善雄 | ロッテ | 119 |
1990 | 佐藤 健一 | ロッテ | 111 |
1992 | 南渕 時高 | ロッテ | 103 |
1993 | 南渕 時高 | ロッテ | 104 |
1994 | 南渕 時高 | ロッテ | 109 |
1995 | 堀 幸一 | ロッテ | 116 |
1997 | 小坂 誠 | ロッテ | 135 |
1998 | 小坂 誠 | ロッテ | 123 |
1999 | 小坂 誠 | ロッテ | 130 |
2000 | 小坂 誠 | ロッテ | 135 |
2001 | 小坂 誠 | ロッテ | 140 |
2003 | 小坂 誠 | ロッテ | 134 |
2005 | 小坂 誠 | ロッテ | 112 |
2006 | 西岡 剛 | ロッテ | 115 |
2007 | TSUYOSHI | ロッテ | 127 |
2008 | 西岡 剛 | ロッテ | 115 |
2009 | 西岡 剛 | ロッテ | 115 |
2010 | 西岡 剛 | ロッテ | 144 |
球団設立から20年余り遊撃手として長い期間君臨する選手はいませんでした。1974年から5年連続で100試合以上出場した飯塚佳寛が遊撃手のレギュラーとして長く活躍した最初の選手と言えるでしょう。その後、水上善雄・南渕時高をへて1997年から2005年まで小坂がロッテの遊撃手を務め、翌年から今オフにポスティングでミネソタへの移籍が決まった西岡にバトンを渡しています。遊撃手として100試合以上出場したシーズンは水上と並んで歴代最多の7度記録しました。
2.遊撃手としての貢献
毎日~大毎~東京~ロッテ時代の遊撃手の系譜を見てきましたが、各選手がどれくらいチームに貢献したのでしょう。ただ単に打撃成績や守備成績を比べるだけでは、チームへの貢献は測れません。前回紹介したWin Sharesの視点から、各選手がどのくらいチームの勝利に貢献したのか見ていきましょう。今回重要になる遊撃手の守備Win Sharesは補殺を取った数・併殺を記録した数・失策数・刺殺数が元になっています。それぞれに重みづけをし、リーグ全体の遊撃手の数字と比べて守備を評価しています。
下の表は主な遊撃手のWin Sharesとなっています。総合評価はWS(Win Shares)で右端(SS)は遊撃手として記録した守備での貢献を表しています。Win Sharesは3毎に1勝分の貢献となるように設計されています。それでは具体的に選手の貢献を見てみましょう。
■飯塚 佳寛
年度 | 名前 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS | SS |
1969 | 飯塚 佳寛 | 1.70 | 1.08 | 2.78 | 3 | 0.88 |
1970 | 飯塚 佳寛 | 0.77 | 0.94 | 1.70 | 2 | 0.74 |
1973 | 飯塚 佳寛 | 1.31 | 2.39 | 3.69 | 4 | 2.34 |
1974 | 飯塚 佳寛 | 8.03 | 2.82 | 10.85 | 11 | 2.79 |
1975 | 飯塚 佳寛 | 5.18 | 2.82 | 8.01 | 8 | 2.81 |
1976 | 飯塚 佳寛 | 9.14 | 5.64 | 14.77 | 15 | 5.64 |
1977 | 飯塚 佳寛 | 11.26 | 2.37 | 13.63 | 14 | 2.17 |
1978 | 飯塚 佳寛 | 1.44 | 4.29 | 5.73 | 6 | 4.26 |
1979 | 飯塚 佳寛 | 0.00 | 2.06 | 2.06 | 2 | 0.55 |
1980 | 飯塚 佳寛 | 0.00 | 0.77 | 0.77 | 1 | 0.07 |
合計 | 38.83 | 25.17 | 64.00 | 64 | 22.25 |
前述したように、チームで初めて遊撃手として長くプレーした飯塚選手は、64WSを記録しています。およそチームに21.3勝分の貢献と見ることが出来ます。最盛期は1976~1977年にかけて、この時期の成績はチームの主力として恥ずかしくない成績を残しています。
■水上 善雄
年度 | 名前 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS | SS |
1976 | 水上 善雄 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0 | 0.00 |
1977 | 水上 善雄 | 0.00 | 0.33 | 0.33 | 0 | 0.33 |
1978 | 水上 善雄 | 0.00 | 1.01 | 1.01 | 1 | 1.01 |
1979 | 水上 善雄 | 0.00 | 3.00 | 3.00 | 3 | 3.00 |
1980 | 水上 善雄 | 2.09 | 6.28 | 8.37 | 8 | 6.28 |
1981 | 水上 善雄 | 6.33 | 6.54 | 12.87 | 13 | 6.54 |
1982 | 水上 善雄 | 4.58 | 6.12 | 10.70 | 11 | 6.12 |
1983 | 水上 善雄 | 11.38 | 3.38 | 14.75 | 15 | 3.38 |
1984 | 水上 善雄 | 4.49 | 4.29 | 8.78 | 9 | 4.27 |
1985 | 水上 善雄 | 4.13 | 5.93 | 10.05 | 10 | 5.93 |
1986 | 水上 善雄 | 0.00 | 1.77 | 1.77 | 2 | 1.76 |
1987 | 水上 善雄 | 3.44 | 6.31 | 9.75 | 10 | 6.31 |
1988 | 水上 善雄 | 2.08 | 2.16 | 4.25 | 4 | 1.23 |
1989 | 水上 善雄 | 3.63 | 1.44 | 5.07 | 5 | 0.00 |
合計 | 42.15 | 48.55 | 90.70 | 91 | 46.13 |
小坂と並んで遊撃手で7度シーズン100試合以上出場した水上選手は、守備面での貢献が攻撃を上回っています。1980~1987年にかけてコンスタントに高い守備WSを記録しています。遊撃手の攻撃力がそれほど求められない時代背景もあり守備的な遊撃手としてロッテを支えました。
■佐藤 健一
年度 | 名前 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS | SS |
1979 | 佐藤 健一 | 0.00 | 0.01 | 0.01 | 0 | 0.01 |
1980 | 佐藤 健一 | 0.18 | 0.16 | 0.34 | 0 | 0.05 |
1981 | 佐藤 健一 | 0.00 | 0.14 | 0.14 | 0 | 0.10 |
1982 | 佐藤 健一 | 0.00 | 0.14 | 0.14 | 0 | 0.05 |
1983 | 佐藤 健一 | 2.64 | 1.14 | 3.78 | 4 | 0.11 |
1984 | 佐藤 健一 | 0.53 | 2.57 | 3.10 | 3 | 2.27 |
1985 | 佐藤 健一 | 0.39 | 1.47 | 1.86 | 2 | 0.62 |
1986 | 佐藤 健一 | 6.84 | 3.27 | 10.10 | 10 | 1.98 |
1987 | 佐藤 健一 | 4.45 | 2.59 | 7.04 | 7 | 1.13 |
1988 | 佐藤 健一 | 4.17 | 2.28 | 6.45 | 6 | 1.02 |
1989 | 佐藤 健一 | 5.74 | 3.99 | 9.73 | 10 | 3.97 |
1990 | 佐藤 健一 | 3.86 | 5.56 | 9.42 | 9 | 5.35 |
1991 | 佐藤 兼伊知 | 0.46 | 2.20 | 2.66 | 3 | 2.20 |
1992 | 佐藤 兼伊知 | 0.89 | 1.54 | 2.43 | 2 | 1.05 |
合計 | 30.14 | 27.06 | 57.19 | 57 | 19.92 |
水上の陰に隠れる形だった佐藤選手も守備型の遊撃手として一定の成績を残しています。
■小坂 誠
年度 | 名前 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS | SS |
1997 | 小坂 誠 | 9.06 | 9.80 | 18.87 | 19 | 9.80 |
1998 | 小坂 誠 | 3.18 | 9.53 | 12.71 | 13 | 9.53 |
1999 | 小坂 誠 | 10.25 | 7.74 | 17.99 | 18 | 7.74 |
2000 | 小坂 誠 | 4.99 | 9.25 | 14.24 | 14 | 9.25 |
2001 | 小坂 誠 | 6.58 | 8.90 | 15.48 | 15 | 8.90 |
2002 | 小坂 誠 | 4.67 | 5.48 | 10.15 | 10 | 5.48 |
2003 | 小坂 誠 | 6.49 | 7.92 | 14.41 | 14 | 7.92 |
2004 | 小坂 誠 | 3.17 | 5.13 | 8.30 | 8 | 5.12 |
2005 | 小坂 誠 | 10.68 | 5.00 | 15.67 | 16 | 5.00 |
合計 | 59.07 | 68.74 | 127.81 | 128 | 68.73 |
入団1年目から守備WSが9.80とキャリアハイの成績を残し、以後も非常に高い守備能力を発揮しているのが良く分かります。ロッテ時代の128WSのうち53.8%が守備によるもので、小坂選手の特徴をよく表し、ファンの皆さんのイメージに近い数字となっているのではないでしょうか。ちなみに守備WSはチームの歴代ショートでNO.1の数字です。見落としがちですが、攻撃での貢献も歴代選手よりも高い数字を残しており、ロッテの守備型遊撃手としては完成形と言えるのかもしれません。
■西岡 剛
年度 | 名前 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS | SS |
2003 | 西岡 剛 | 0.68 | 0.02 | 0.70 | 1 | 0.00 |
2004 | 西岡 剛 | 3.44 | 3.19 | 6.64 | 7 | 2.93 |
2005 | 西岡 剛 | 17.68 | 6.35 | 24.03 | 24 | 3.04 |
2006 | 西岡 剛 | 14.58 | 4.53 | 19.10 | 19 | 4.53 |
2007 | TSUYOSHI | 16.59 | 6.39 | 22.97 | 23 | 6.39 |
2008 | 西岡 剛 | 13.63 | 5.25 | 18.88 | 19 | 5.25 |
2009 | 西岡 剛 | 12.66 | 2.43 | 15.09 | 15 | 2.43 |
2010 | 西岡 剛 | 24.56 | 6.66 | 31.22 | 31 | 6.66 |
合計 | 103.82 | 34.82 | 138.64 | 139 | 31.22 |
チーム歴代最高の攻撃的な遊撃手になります。守備の貢献に比べ、2~3倍攻撃の貢献を上積みしています。攻撃面では歴代最高だった小坂の倍近い貢献を既にしている計算になります。近年のパ・リーグ各球団は遊撃手にタレントが多いだけに、攻撃力を兼備した遊撃手として、小坂から西岡にバトンが渡されたのは必然だったのかもしれません。
■ロッテの主な遊撃手のWin Shares
名前 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS | SS |
西岡 剛 | 103.82 | 34.82 | 138.64 | 139 | 31.22 |
小坂 誠 | 59.07 | 68.74 | 127.81 | 128 | 68.73 |
水上 善雄 | 42.15 | 48.55 | 90.70 | 91 | 46.13 |
飯塚 佳寛 | 38.83 | 25.17 | 64.00 | 64 | 22.25 |
南渕 時高 | 37.90 | 22.18 | 60.08 | 60 | 12.29 |
佐藤 健一 | 30.14 | 27.06 | 57.19 | 57 | 19.92 |
上の表はチーム歴代遊撃手のWin Sharesランキングになります。小坂と西岡がチーム歴代でも非常に貢献度の高かった遊撃手であることが分かります。
3.時代が遊撃手に求めるもの
守備での貢献が目立った小坂選手ですが、その貢献は他球団の遊撃手と比べるとどうだったのでしょうか。下の表は1シーズンで高い守備WSを記録した選手になります。吉田義男・小池兼司から最近では川相・井端・宮本と守備の評価の高い選手が並んでいます。
年度 | リーグ | 球団 | 選手名 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS |
1950 | PL | 大映 | 山田 潔 | 6.41 | 11.02 | 17.44 | 17 |
1950 | CL | 中日 | 松本 和雄 | 5.88 | 10.69 | 16.57 | 17 |
1951 | CL | 巨人 | 平井 正明 | 9.16 | 9.18 | 18.33 | 18 |
1952 | CL | 阪神 | 白坂 長栄 | 16.81 | 10.59 | 27.40 | 27 |
1955 | CL | 阪神 | 吉田 義男 | 11.87 | 9.90 | 21.78 | 22 |
1956 | CL | 阪神 | 吉田 義男 | 22.85 | 10.32 | 33.17 | 33 |
1963 | PL | 南海 | 小池 兼司 | 11.10 | 11.49 | 22.59 | 23 |
1964 | PL | 南海 | 小池 兼司 | 14.09 | 10.66 | 24.76 | 25 |
1965 | PL | 南海 | 小池 兼司 | 17.15 | 9.12 | 26.27 | 26 |
1966 | PL | 南海 | 小池 兼司 | 6.24 | 11.17 | 17.41 | 17 |
1968 | PL | 南海 | 小池 兼司 | 8.09 | 12.47 | 20.56 | 21 |
1993 | CL | 巨人 | 川相 昌弘 | 9.99 | 9.33 | 19.32 | 19 |
1997 | PL | ロッテ | 小坂 誠 | 9.06 | 9.80 | 18.87 | 19 |
1998 | PL | ロッテ | 小坂 誠 | 3.18 | 9.53 | 12.71 | 13 |
1999 | PL | 西武 | 松井 稼頭央 | 23.85 | 9.15 | 33.00 | 33 |
2000 | PL | ロッテ | 小坂 誠 | 4.99 | 9.25 | 14.24 | 14 |
2004 | CL | 中日 | 井端 弘和 | 13.60 | 10.30 | 23.89 | 24 |
2005 | CL | ヤクルト | 宮本 慎也 | 4.32 | 9.83 | 14.15 | 14 |
2005 | CL | 阪神 | 鳥谷 敬 | 10.12 | 9.11 | 19.23 | 19 |
2リーグ制以降の遊撃手で守備Win Sharesを9以上記録した選手は僅か12名しか存在しません。これは1年間に3勝分の利得をもたらしたことになり、攻撃に比べ分割の少ない守備だけにかなり大きいクレジットといえます。小坂はこれを3シーズンで記録し、近代野球では守備のスペシャリストとして勝利貢献の面からも優秀な選手である事が分かります。
■レギュラー遊撃手のWin Shares比率 | ||||||
年代 | セ・リーグ | パ・リーグ | ||||
攻撃 | 守備 | 比率 | 攻撃 | 守備 | 比率 | |
1950 | 356 | 223 | 1.60 | 473 | 242 | 1.95 |
1960 | 374 | 210 | 1.79 | 150 | 98 | 1.53 |
1970 | 293 | 197 | 1.49 | 170 | 191 | 0.89 |
1980 | 461 | 251 | 1.84 | 261 | 221 | 1.18 |
1990 | 463 | 254 | 1.82 | 338 | 216 | 1.56 |
2000~ | 540 | 304 | 1.77 | 458 | 241 | 1.90 |
※年間100試合以上遊撃手で出場した選手をレギュラーと定義 |
しかし、守備だけでチームに貢献できていた時代から徐々に変化が起き始めます。上の表は年代別に攻撃・守備別のWin Sharesをまとめたものです。シーズン100試合以上遊撃手として出場した選手の成績が対象になっています。この表を見ると遊撃手の攻撃と守備のWin Sharesの割合に変化が出ているのが分かります。特にパ・リーグは1970年代から遊撃手の打撃力が急速に上昇してくる期間となります。小坂の現役時代半ばには守備で貢献するのはもちろん、打撃でも一定の成績を求められる時代が訪れていました(打撃の方が貢献出来る幅が大きい)。
守備で大きな貢献をした遊撃手もこの例外ではありませんでした。1990年以降に守備を武器にする選手たちもある程度の攻撃力を備え始めています。前述の守備Win Sharesを9以上記録した遊撃手を見てみましょう。下の表は各選手の通算のWSになります。
攻撃/守備は攻撃のWSを守備全体のWSで割っています(遊撃以外の守備貢献も加わっている)。攻撃/SSの項目は、攻撃の貢献を遊撃守備のWSで割ったものになります。
名前 | 打撃 | 守備 | 合計 | WS | SS | 攻撃/守備 | 攻撃/SS |
松本 和雄 | 5.9 | 15.1 | 21.0 | 21 | 14.9 | 2.56 | 2.53 |
山田 潔 | 26.5 | 36.7 | 63.2 | 63 | 36.3 | 1.39 | 1.37 |
小坂 誠 | 59.6 | 74.2 | 133.9 | 134 | 70.5 | 1.25 | 1.18 |
小池 兼司 | 79.5 | 88.4 | 167.9 | 168 | 87.9 | 1.11 | 1.11 |
川相 昌弘 | 72.3 | 67.4 | 139.7 | 140 | 62.4 | 0.93 | 0.86 |
宮本 慎也 | 77.4 | 75.8 | 153.1 | 153 | 66.5 | 0.98 | 0.86 |
吉田 義男 | 172.7 | 115.2 | 287.9 | 288 | 103.9 | 0.67 | 0.60 |
平井 三郎 | 56.5 | 33.6 | 90.0 | 90 | 32.1 | 0.59 | 0.57 |
井端 弘和 | 122.0 | 69.7 | 191.7 | 191 | 66.4 | 0.57 | 0.54 |
鳥谷 敬 | 102.0 | 46.8 | 148.8 | 148 | 46.0 | 0.46 | 0.45 |
松井 稼頭央 | 149.8 | 64.2 | 213.9 | 214 | 64.2 | 0.43 | 0.43 |
白坂 長栄 | 64.8 | 48.0 | 112.8 | 113 | 16.0 | 0.74 | 0.25 |
1990年以降だと小坂より早い時期に守備の名手とされた川相も攻撃・守備のWin Shares比率では攻撃が上回っています。近年小坂を除くと最も守備割合が高い宮本でも攻撃の貢献の方が大きいようです。また、松井・井端・鳥谷など高いレベルで攻撃と守備を両立する選手が目立ってきています。そのような時代背景の中で小坂は近年では非常に珍しい守備に特化した選手として遊撃手のポジションを守り続けました。攻守の比率を見ても山田潔や小池兼司など1950~1960年代に活躍した選手に似通っています。時代の大きな流れとは別の位置にいた小坂選手は、その独自性ゆえに多くのファンに愛されたのかもしれません。
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Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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