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Baseball Lab守備評価~Center Fielder

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/01/21(金) 10:00rss

 今週から始まったBaseball Lab守備評価ですが、本日は中堅手の評価を行います。外野手では最も守備範囲が広く、身体能力の高い選手も多く守るポジションです。今季のゴールデングラブ賞では、外野手6名のうちセンターから5名(日本ハム・糸井選手、オリックス・坂口選手、西武・栗山選手、ヤクルト・青木選手、広島・赤松選手)が選出されています。近年、守備の失点に与える影響がおぼろげながら分かってきていますが、あらためてセンターの重要性が確認されています。センターは広い守備範囲とある程度の肩の力を要求されるポジションです。今回の評価にあたって基本とするのはUZRと呼ばれる守備評価です。外野手では、ゾーンデータを基にした守備範囲と走者に進塁を許す割合などを考慮したアーム・レイティングが基本になります。守備範囲では右翼手の評価と同じように、飛んだ方向・距離・打球の強さを基にして、リーグの平均的なセンターが処理する基準を設けて比較をしていきます。さらに個人の評価になるので、アウトにした数は分かりますが、ゾーン別にヒットにしてしまった数については、守備イニング数を基にして選手に責任安打を割り当てています。肩についての評価は、以前このサイトで紹介した外野手の肩~Part1外野手の肩~Part2を参考にしてください。


 1.守備範囲の評価

守備範囲の基準になる打球はゾーン分割図を基に入力されています。



 センターが関与したフライの打球についてはH~Sが主要な守備ゾーンになります。もっとも打球が飛んできたゾーンはNゾーンで、守備の定位置としてもこの付近の打球が多くなっています。



 ゾーンと距離、さらに打球の強さを基にその打球がリーグの中堅手全体でどの程度処理されたのかが評価の基準となります。基本的には定位置に近いゾーンは処理率が高く、定位置から離れる、強い打球になればアウトになる割合が下がっていきます。リーグの平均的な処理率とゾーンに飛んできた打球数をどれだけアウトに出来たのかが守備範囲の測定の基本になります。


 

 それではまずセ・リーグのセンターの選手を見ていきましょう。上のグラフは対象選手がゾーン毎に平均的な処理率に比べどれだけ多く(少ない)のプレイを成立させたのかを表しています(ゾーン毎にまとめていますが、ゾーンに飛んできた打球を距離や打球の強さで調整してから処理すべき打球数を求めています)。
 ヤクルトの青木選手は正面付近の打球(ゾーンL~O)に対して非常に強いようです。反面、左右への打球に対してはもろいところもあるようです。阪神のマートン選手も正面に比べ左右の打球に対して同じように処理する割合に差が出てしまいます。
 本塁打をキャッチして一躍守備面での評価が上がった赤松選手ですが、左右の打球への対応はさすがです。今季は守備イニングが少ないにも関わらず、リーグの平均的なセンターに比べ多くのアウトを計上しています。ややスケールは落ちますが巨人の松本選手も良い成績を残しています。昨年の赤松選手はセンターで飛びぬけた守備成績を残していましたが、今季も隠れたセンターの名手が現れたかもしれません。中日の大島選手は守備範囲で見ると広島の赤松選手と同等の数字を残しています。特にライト寄りの打球の処理は特筆ものです。



上の表は中日の大島選手のゾーンデータを詳しく見たものになります。先ほどは前後の動きに対して見ることはできませんでしたが、この表で見ると距離6・7でリーグの平均的なセンターよりも多くのアウトを稼いでいるのが分かります。どの距離に対しても明確な弱点が無く、優秀な守備範囲を持っているようです。




 同じようにパ・リーグの中堅手についても見ていきましょう。日本ハムの糸井選手は正面の打球に対して非常に強いですが、やや打球が右中間方向へ向くと今季は数字を落としています。これはたまたまの現象なのかは今のところ不明ですが、正面の打球処理の貯金を吐き出してしまっています。西武の栗山選手は正面の打球にやや脆(もろ)いところがあるようで、左右への近い打球はまずまずの処理をしています。しかし、やや遠い左中間の打球に対してはリーグの平均的な処理率を下回っています。どのゾーンに対しても満遍なく処理をしているのは、オリックスの坂口選手になります。 パ・リーグでは楽天の聖沢選手の守備範囲がかなり広いのがうかがえます。正面から右寄りの打球を除くとどのゾーンに対してもプラスの評価になっています。前任者の鉄平選手も非常に優秀なセンターでしたが、ブラウン前監督に俊足を買われセンターに抜てきされた聖沢選手も守備範囲の面では大きな利得をもたらしています。



 こちらは楽天の聖沢選手のゾーン・距離別の処理を表しています。この数字から正面の打球処理がやや悪いようです。しかし、正面を除く前よりの打球の対応は良く、正面のマイナスを取り戻しています。右端の距離別の処理を見ても、前方の打球はリーグの平均程度に対応できているのがわかります。聖沢選手の最も優れた点は、最深部の打球への優れた対応力です。クレジットのほぼすべてを最深部で稼ぎ、俊足を生かした守備と言えるかもしれません。



上の表はプレイ数の増減を基に選手の処理能力で失点を抑えた(増やした)値になります。高い処理を記録した楽天・聖沢選手や満遍なく打球を処理した中日・大島選手、広島・赤松選手が多くの失点を防いでいるのが分かります。反対に打球処理に弱いゾーンがあった阪神・マートン選手は失点を増やしてしまったようです。ゴールデングラブを受賞した栗山選手や青木選手がマイナスなのは意外に思われるかもしれません。


2.肩の評価

 肩の評価については右翼手のところでも(外野手の肩~Part1、外野手の肩~Part2)お話ししましたのでそちらを参考にしてください。基本的には、

・走者が一塁にいて単打を打たれたケース(二塁に走者がいる場合は除外)
・走者が二塁にいて単打を打たれたケース
・走者が一塁にいて二塁打を打たれたケース
・走者が三塁にいて外野フライを打ち上げられたケース

 上記の状況で外野手が走者に進塁をあきらめさせたり、進塁を狙った走者をアウトにした数をリーグの平均的な選手と比べて外野手の肩の能力を評価します。平均的な選手との差を基にして、プレイ前後の得点期待値の変化から肩の能力でどれだけ失点を防いだかを算出しています。この手法はアームレイティングとも呼ばれ、補殺数などよりも外野手の肩を評価できる面が大きいのが利点です。



   上の表は各選手が肩で失点を抑止できた(出来なかった)値になります。広島の赤松選手がここでも優秀な成績を残しています。オリックスの坂口選手、日本ハムの糸井選手、中日の大島選手がプラスの評価になります。青木選手や栗山選手は走者の進塁面でやや失点を多くしてしまっているようです。ただ、今季のセンターは他の外野ポジションに比べ肩の能力で差がつく幅が非常に小さいようです。


3.失策の評価

 外野手の主な評価は守備範囲と肩の力ですが、失策もUZRでは評価に加えています。ただし、外野手の失策は内野手に比べ数が少なく、影響は限定的です。外野手のアウトを取ったプレイに対して失策を犯し出塁を許したケースとそれ以外の失策を別にしています。



 これもリーグの平均的な選手と比べての失策出塁などを比較して評価していますが、守備範囲や肩の評価に比べるとその影響はやはり限定的です。


4.UZR総合評価

 ここまで守備範囲・肩・失策それぞれでセンターを守った選手を評価してきました。最後にすべての項目をまとめてどのくらい失点を防いだのか見てみましょう。すべての項目をまとめたのがUZRになります(失点をどれだけ防いだかを見る事が出来ます)。さらに出場した割合が選手それぞれで違いますので、1000イニング出場した場合に想定される失点抑止を表したのがUZR/1000になります。



 センターでゴールデングラブ賞に選出された広島の赤松選手はさすがの内容です。守備範囲・肩で失点を大きく減じる働きをしています。守備イニングは507イニングとやや少ないですが、データ面で見ても非常に優秀な守備能力を見せています。中日の大島選手や楽天の聖沢選手は、守備データで評価を下すならゴールデングラブ賞に値する活躍といえます。二人とも若く、まだまだ守備の名声を得ていない点が受賞に対してマイナスに作用してしまったのかもしれません。実はMLBでも知名度のない選手が優秀な守備成績を残したにも関わらず、ゴールド・グラブを受賞できない事例が数多くあります。失点を防ぐという目的に対して二人は称賛されるべき働きをしている事は間違いないようです。オリックスの坂口選手は各部門で弱点のない内容となっています。
 ゴールデングラブ賞選出の青木選手・栗山選手には厳しい評価になりました。もちろんこのデータが全面的に正しいと言うつもりはありません。しかし、過去の実績ではなく、当該シーズンの守備成績から失点を抑止したであろう働きで、新たな選手の名前が浮かび上がってきたのは意義のある事かと思います。

コメント

みんなの評価:4stars-4-0.gif

まず意外だったのは、超級の身体能力とバカ強い肩によりネット界隈で評価の高い糸井選手のUZRなどの定量的評価が並程度でしかないことでした。そしてもうひとつ、その糸井選手への著者の皆さんの定性的評価(最後のランキング表)は、裏腹にとても高いことです。なぜ皆さんは糸井選手を高く評価するのでしょう。
第二に、外野の場合パークファクターが関わってきます。例えばナゴヤドームの左右中間のフライが東京ドームでスタンドインというケースは、数十回はあったと思います。それらは大島選手の利得になるわけです。逆に巨人松本選手は割を食っていると思います。その一方で広い球場ではHRが減る代わりにヒットゾーンが増えて打率が上昇するとも聞きます。PFの補正は出来ないものでしょうか。

評価:stars-4-0.gif Posted by daimong at 2011/01/22 02:45:35 PASS:

>daimongさま

コメントありがとうございます。

>超級の身体能力とバカ強い肩によりネット界隈で評価の高い糸井選手のUZR>などの定量的評価が並程度でしかないことでした。そしてもうひとつ、その糸>井選手への著者の皆さんの定性的評価(最後のランキング表)は、裏腹にとて
>も高いことです。なぜ皆さんは糸井選手を高く評価するのでしょう。

糸井選手の評価については、著者の皆さんがそれぞれデータ分析を行っています。その際に守備で重視する項目や使用するデータ(レンジ、Batted Ball,ゾーン等)の特性から評価が割れるケースもあります。ゾーンのデータ(私の評価)だとやや糸井選手の数字は伸びませんでしたが、他の視点で優秀な数字になるのはありうることです。守備をひとつの指標で全て説明できるとは思っておらず、色々な視点から分析・評価をしていると見て頂ければ幸いです。

>第二に、外野の場合パークファクターが関わってきます。例えばナゴヤドーム>の左右中間のフライが東京ドームでスタンドインというケースは、数十回は
>あったと思います。それらは大島選手の利得になるわけです。逆に巨人松本選>手は割を食っていると思います。その一方で広い球場ではHRが減る代わりに>ヒットゾーンが増えて打率が上昇するとも聞きます。PFの補正は出来ないも>のでしょうか。

球場の形状については現在のところ考慮はできていません。
ご指摘の通り東京ドームとナゴヤドームでは守れる範囲は異なりますが、東京ドームで本塁打のケースが全て松本選手に対してマイナスになっているわけではなく、ヒットになりアウトを取れなかったマイナスの評価が無くなるのでどちらかに一方的な利得が発生することはありません。逆の場合も同じことが言えます。
パークファクターので補正は球場の広さの影響について理解が進めば補正の方法も考えられるかもしれません。今年からボールの統一など球場の影響を見極めやすくなるので、著者や皆さんと一緒に考えていけると良いですね。

Posted by 岡田友輔 at 2011/01/22 12:18:50 PASS:

これは素晴らしい。
これなら一見して守備の評価がわかる。
ところで、横浜の人がいないのはなぜなんでしょう?

後、センターの上手いチームとそうでないチームで両翼の比較を出してくれると面白いと思います。
野手がどちらを意識しているかが表れると思いますので。

Posted by あつかましいひと at 2011/02/01 12:16:14 PASS:

>あつかましいひとさま

コメントありがとうございます。
>ところで、横浜の人がいないのはなぜなんでしょう?
>
>後、センターの上手いチームとそうでないチームで両翼の比較を出してくれると面白いと思います。
>野手がどちらを意識しているかが表れると思いますので。

確かに横浜の選手抜けちゃってますね。
500イニングベースランキングを作ったので、横浜はだれも500イニングに達していなかったので省いてしまいました。入れるべきでしたね。

センターの影響でレフト・ライトの負担がどのくらい変わるのかは検証したいところです。上手い方法を思いついたら、コラムしようと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

Posted by 岡田友輔 at 2011/02/01 22:09:47 PASS:

大変興味深いデータでした。
HRをキャッチして一躍(一般層にも)有名になった赤松選手がデータでも優秀だと確認でき、納得できました。
NPBもMLBのようにもっとセイバーメトリクスが主流になればいいですね。

Posted by 風の民 at 2011/08/05 08:38:52 PASS:

風の民さま

コメントありがとうございます。

>HRをキャッチして一躍(一般層にも)有名になった赤松選手がデータでも優秀だと確認でき、納得できました。
>NPBもMLBのようにもっとセイバーメトリクスが主流になればいいですね。

赤松選手は一昨年からデータ的には抜けた守備成績だったので一般的に評価されるようになったのは嬉しいことですね。
日本でも一時に比べると、セイバーメトリクスの認知度が上がっていると思います。「マネーボール」も映画化されますし、追い風が吹くと良いですね。

Posted by 岡田友輔 at 2011/08/05 14:07:55 PASS:
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