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パーク・ファクター

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/02/25(金) 10:00rss

 日本で算出されるパーク・ファクターは、ボールと球場の影響が一緒くたになり、開催される試合数なども違うため完全な数値を出すことは不可能でした。しかし、今季から12球団で同じボールを使用することが決まり、ほぼ純粋な球場の影響を計れる最初のシーズンになります。環境の影響を考える上でパーク・ファクターは欠かせないものです。統一球導入の今シーズン前に環境の影響を計る仕組みを紹介します。
 
 
1.年代の違いによる得点の入りやすさ
 
 野球は相手チームと得点を争うゲームですが、年代によって得点の入りやすい時代や入りにくい時代が存在します。
 

 
 上のグラフはセ・パ両リーグの1試合あたりの平均得点を表しています。2リーグ制に移行してから、球団拡張の影響(選手のレベル低下)もあり得点の入りやすい期間が数年ありました。その後、50年代後半から70年代前半にかけて得点の入りにくい期間が続きます。得点の劇的な減少は、この期間に飛ばないボールを使用していた割合が高いからと考えられます(パーク・ファクターの歴史や年度毎の詳細については道作氏のHPを参照してください)。70年代半ばからは上下の変動はありますが、最近の得点状況に近い環境になっています。ここ数年では04年から得点が大きく減少しているのが目立ちます。今シーズンは飛ばないと言われている統一球の導入で、どの程度得点がおちこむのか注目されます。このグラフはリーグ全体の傾向を見る上では有用ですが、それぞれのチームがどういった環境で試合をしているのかまでは分かりません。







 

 これに対して、年度別の平均得点や失点を見ることで、球場やボールの選択による影響をある程度推察出来ます。例えば、阪神や日本ハムの平均得点や平均失点を見ると、実力の他にも何らかの力が働いたのではないかと疑いたくなるようなグラフの変動を見せています。
 
 
2.環境による影響の数値化
 
 環境の影響についてシーズン得点や失点では、その影響をうかがい知ることは出来ても、本当にそのような力が働いていたのか、さらにその力がどのくらいのものなのか知ることは出来ません。そこでパーク・ファクターと呼ばれる、環境について補正を行う指標が役に立ちます。基本的にパーク・ファクターは、その名の通り球場の影響を見るために開発されたものになります。しかし、NPBでは前述の通りチームがボールを選択出来る状況で、球場とボールの影響が合わさった数値を表すことになります。パーク・ファクターは得点・安打・二塁打・三塁打・本塁打・四球・三振などさまざまな打撃事象を対象に出来ます。さらに球場によるBABIPへの影響を算出したPark S Adjustmentと呼ばれる指標なども存在します。
 
PF=((本拠地試合での得点+相手チームの得点)/本拠地での試合数)/((他5球団本拠地での得点/相手チームの得点)/相手本拠地での試合数)
 
 パーク・ファクターの算出式は数多くありますが、今回は一般的な算出方法を紹介します(リーグの主要6球場の影響を見るために、今回はリーグ内対戦に限って算出しました)。得点の部分を本塁打・二塁打などに変えれば、選択した事象への影響を見ることが出来ます。数値が1より大きければ、他の5球場に比べ得点が入りやすい環境、1を割り込むと得点が入りにくい環境と言えます(例、PFが1.05なら他の5球場に比べ5%増しで得点が入っている。)。
 各球場の得点・本塁打への影響は以下の通りです(PFがパーク・ファクターで得点、PHRFがパーク・ホームランファクターで本塁打への影響を見ています)。
 

 
 セ・リーグのナゴヤドームや甲子園は、得点・本塁打とも出現しにくい環境であることが分かります。神宮や横浜スタジアムは打者にやや有利な環境です。一般的に打者が有利と言われている東京ドームですが、本塁打に関してはその通りですが、得点にはばらつきが見られます。これはどちらかと言うとその他の球団の選択によって、数値が変動している割合が強そうです。広島は市民球場からマツダスタジアムへの移行がありましたが、強烈な打者有利の環境から数値は徐々に落ち着きつつあります。
 

 
 パ・リーグはセ・リーグに比べると環境の差は小さくなります。西武ドームやKスタ宮城は打者に有利な環境が多かったようです。千葉マリンスタジアム・札幌ドーム・ヤフードームは投手に有利な環境の年が多かったと見られます。京セラドームは開催試合数が少ないケースもあり判断するのが難しいですが、昨年はかなり打者に有利な環境と言えそうです。
 
 自分たちの球団がボールの選択をする場合はもちろんですが、他の球団がボールの変更をした場合にも、本拠地のパーク・ファクターは影響をうけます。自チームはボールを変更しなかったとしても、他の3球団が飛ばないボールに変更することで、相対的に本拠地での試合は打者に有利な環境となります。最近のリーグ戦では各チームの実力はもちろんですが、戦略的なボールの選択とリーグ環境への最適化という別次元の戦いが相当あったと考えられます。
 
 
3.さらに詳細なパーク・ファクター
 
 さらにもう一段環境の影響を計るパーク・ファクターもあります。それは左右打者別に影響を計る手法です。メジャーリーグでは左右非対称の球場が多く存在し、球場毎に左右どちらの打者に有利か数値で認識されています。ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークは、左翼にグリーン・モンスターがあり右打者に有利な球場と思われてきましたが、左右打者別のパーク・ファクターによって左打者に有利な球場であることが分かっています(この特性を生かしてレッドソックスは優秀な左打者を集めています)。打者への影響を比較するのに得点を用いることは出来ませんが、得点部分をOPSwOBAなどで代用することも可能です。基本的に分母が打数(四球などは打席)、分子に事象(安打・二塁打・三塁打・本塁打など)を当てはめ、事象の出現割合で左右どちらの打者に有利な環境なのか見ることが出来ます。
 
右打者PHRF=((本拠地試合で右打者の本塁打+相手チーム右打者の本塁打)/本拠地試合での右打者総打数)/((他5球団本拠地で右打者の本塁打/相手チーム右打者の本塁打)/相手本拠地での右打者総打数)
 



 
 日本は左右対称の球場がほとんどで、左右打席別で影響を与えるとすれば屋外球場の風が最も考えられます。甲子園は浜風の影響で右打者に比べ左打者に不利な環境と考えられてきました。データを見ると、本塁打PFでは右打者にやや有利な数字になっているのが分かります(左右どちらの打者にとっても甲子園は厳しい環境ですが)。特に2008年の左打者HRパーク・ファクターは恐ろしい数字になっています。その他にも横浜スタジアムは右打者(HR)に有利に働いているようです。
 
 
4.統一球の威力
 
 これまで見てきたパーク・ファクターは最初に述べたようにボールの影響も内在した数値になります。その影響割合で考えるとひょっとするとパーク・ファクターと言うよりもボール・ファクターと呼んだ方が良い時期もあったでしょう。打者や投手の成績を比較する上で、ただ単純に成績を比べるだけでは選手の貢献や能力を見誤ります。(それを調整するのがPFになりますが)。
 今季から導入される統一球は、環境による影響を小さくする役割があります。純粋なパーク・ファクターだけでなく、BABIPなどの値に対して、球場がインプレーの打球に対してどの程度影響があるのか見極めるデータとして極めて重要です(野球の構造理解に必要なデータ)。今シーズンは昨年との比較で、環境の違いを肌で感じる機会が多くなるかと思います。その感覚を具体的な数字として表す指標を理解していれば、チームや選手の力を把握できる割合は高くなるでしょう。

コメント


甲子園のHRパーク・ファクターは浜風の影響が顕著ですね。
やや右打者有利ということで、先発オーダーにも影響してくるということですか。

Posted by 野球フリーク at 2011/02/25 12:25:58 PASS:

野球フリークさま

コメントありがとうございます。
甲子園は確かに右打者のほうがよさそうですね。
しかし、先発オーダーは相手投手に影響されるほうが強そうです。
左右で同じくらいの打撃を見込まれる選手を、「どのように起用するか」考える際に一つの要素としてとらえてもらえれば良いですね。

Posted by 岡田友輔 at 2011/02/25 14:43:09 PASS:

岡田さま

とても興味深い考察・コラムをいつも拝見しております。
今後とも宜しくお願いします。

Posted by 野球フリーク at 2011/02/28 11:46:23 PASS:
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