HOME > コラム一覧 > コラム

コラム

監督の指向~Part2

岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/03/04(金) 10:00rss

 前回に続きデータ(先発の起用方法・盗塁の企図・バント)から監督の傾向について考えていきましょう。基本的な監督の分類方法などについては前回のコラム(監督の指向~Part1)を参考にしてください。
 
 
1.パ・リーグの主な監督
 
ここ数年のパ・リーグは王・野村の球界きってのベテラン監督や比較的若い世代の渡辺監督。その中間に位置する梨田監督など年代の違った監督が長く指揮をとっていました。それぞれの監督がどういった選手起用を好むのか少し細かく見ていきましょう。
 

 
 最初に先発投手についてみていきましょう。対象期間中(2005~2008年)の王監督は、先発投手に比重を置いているのがわかります。特に2008年のSH61、QH16は王監督のスタイルがにじみ出ています。投球数などにもそれほど明確なハードルはなく、先発投手には登板試合を任せる采配と言えるかもしれません。

 野村監督は楽天の監督就任当初から最終年までに少しずつ先発投手の起用を調整しているようです(人材による影響も大きいと思われます)。徐々にブルペンへの比重を高めていますが、先発投手にはかなりの投球数まで投げさせる傾向はあるようです。野村監督も投球数に対する明確なハードルはなさそうです。

 梨田監督は前任のヒルマン監督から2連覇しているチームを任されましたが、就任1年目に独自の色を出していたようにも見えます。王監督や野村監督に比べ、ヒルマン監督は先発投手にそれほど多くの球数を投げさせませんでした(後ほどヒルマン監督について記述があります。DMをはじめ各項目の数字はかなり低いです)。それに対して梨田監督は、就任1年目にヒルマン監督とは異なる起用をしています。前年の優勝チームで変化させなくても良い状況でこのような起用をしたのは、監督としての主張を感じます。ただ、2008年に優勝を逃すとヒルマン監督と同じような采配傾向になっています。主張と同時に柔軟性を兼ね備えた監督なのかもしれません。

 最後に西武の渡辺監督です。SHやQHは平均的な数字になっています。ただ、ソフトバンクの王監督と同じように先発投手にある程度投げさせる傾向があり、140球以上を投げさせたケースもかなりあります。SHをそれほど記録していない点から考えると、特定の投手(涌井投手など)とそうでない投手で対応を変えていると思われます(それでも一般的な監督よりも球数は多い傾向です)。
投手起用だけ見ても4人の監督はそれぞれ違ったアプローチをとっているのがわかります。
 


 
 攻撃に関しては王・野村両監督は比較的オーソドックスな采配になっています。一方で梨田監督は犠打の割合が一貫して高い監督といえます。渡辺監督は犠打よりも盗塁企図が毎年多い傾向があります。




 4人の監督が指揮をとった年度別に先発投手起用・盗塁企図・バントのデータをプロットしたのが上の図です。野村監督はほぼ同じようなところにプロットされています。奇策などのイメージがあるかもしれませんが、この3つの項目(先発起用・バント・盗塁)だとオーソドックな采配なのが分かります。

 王監督も采配にそれほど大きな変化はないようです。攻撃の選択に関してはオーソドックスで、投手起用面で先発を長く起用する傾向がうかがえます。王監督と野村監督は采配面でそれほど似通ったイメージはありませんが、プロット上ではかなり近いタイプになっているのは面白いところです。

 渡辺監督と梨田監督はかなり対照的です。先発を長く起用し盗塁を好む渡辺監督に対して、梨田監督は先発投手の切り替えが早く、犠打を多用しているのは好みが表れているのかもしれません。もちろん采配はチーム構成にも影響を受けますが、攻撃的な西武と守備的な日本ハムと実際のイメージに近い采配と言えるかもしてません。特に梨田監督が救援投手にシフトしていくのはかなり興味深いところです。
 
 
2.外国人監督の場合
 
 これまでは日本人の監督についてみてきましたが、最近は外国人監督が多くなってきています。彼らはMLBの組織が作り上げた監督になります。日本の采配とどの程度違うのか気になるところです。



 広島・楽天で5年間指揮をとったブラウン監督は広島時代の投手起用ではそれほど球数を投げさせない方針であることがわかります。来日1年目には中4日構想で先発ローテーションを回すMLB方式を採用しましたが(登板間隔を詰めるのと引き換えに、投球数を抑える)、やや日本の野球には刺激が強すぎたようです。Part1でも話しましたが、ブラウン監督は投球数に関して、明確なルールが存在していたようです。広島時代は120球以降、楽天時代でも130球以降の投球を許すことは稀でした。投手に対するケアという面ではかなり良心的な監督といえるかもしれません(それゆえに昨年の楽天での先発起用が大きく異なったのには驚きました)。先発投手の起用については、SHINGO氏が各種リポートをしているので参照ください。
 バレンタイン監督はほかの二人に比べやや先発投手を長く起用する傾向はありそうです。球数のハードルも130球以降に設定されていたのかもしれません。
 ヒルマン監督は2年目以降に投手起用が大きく変わっているのがわかります(SHとQHの割合が大きく変わっています)。先発に負担がかからない起用(QH)を多くし、投球数もかなり限定した起用になっています。


 

 同じように作戦面も見ていきましょう。外国人監督の攻撃の特徴は犠打が基本的に少ない傾向にあることです。MLBでは日本ほど犠打を選択することがないので、各監督はかなり対処に差が出るところかもしれません。
 バレンタイン監督は犠打に対して後ろ向きなことがデータからうかがえます。犠打の企図数では前述の梨田・野村・王監督がシーズン100犠打以上を多くしているのに対して最も多いシーズンでも85犠打とその違いは歴然です。ブラウン監督はバレンタイン監督ほどバントをしないわけではありませんが、バントよりも盗塁企図のほうに比重があります。
 ヒルマン監督はバント数で大きな変化があります。2005から2006年にかけてバントを積極に取り入れ、采配を変えています。さらに2005から2007年にかけても盗塁数を増やしています。2005年以降得点が急激に入らなくなる環境も采配の変化を強いたのかもしれません。



 
 外国人監督3人の傾向をプロットしたものが上の図になります。バレンタイン監督は先発起用と盗塁面で左上に常にプロットされています。ヒルマン監督は投手起用・盗塁・犠打それぞれで大きく変化しているのがわかります。また、梨田監督のところで触れましたが、2006年のヒルマン監督の采配はそれ以後日本ハムのスタンダードになっています。ブラウン監督は若手の育成などもあって先発投手起用で明確な方針をうかがうことはできませんが、作戦に関しては盗塁に寄った采配が多いようです。
 
 今回は監督の采配を先発投手の起用法・盗塁企図・バントで分類してみました。これはタイプを分類するもので、監督が優れているかどうかをみることはできません。また、抽出したデータ自体もチームの実力に引っ張られる面が強く、今回の測定方法ではそれらを排除して監督の采配傾向をとらえ切れているとは言えません。もう少し良い分類方法もあるでしょうし、チームの実力を排除するやり方を今後検討していきたいところです。さらに、監督の働きを選手の評価のように得失点で表わせるとよいのですが、これはかなり難解でそう簡単にいかないようです。タイプ分類や監督の評価を行うにはまだまだ課題が多くありそうです。

コメント

名前:
メールアドレス:
コメント:
評価:
star2.gif star2.gif star2.gif star2.gif star2.gif
691cb0ec0d0e289c0afc8166b5bb8c05.png?1505983104
画像の英字5文字を入力して下さい。:

トラックバック一覧

Baseball Lab「Archives」とは?
 
Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。

野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。

月別著者コラム
最新コラムコメント
06/14 15:06/パプア
得点価値から計るゴロとフライ
12/17 12:01/fxovhexxwj
落合博満と野球殿堂
08/26 08:32/もと
盗塁の損益分岐
11/16 10:44/★小向美奈子 AV第2弾サンプル映像
阿部離脱の影響
09/15 23:42/Azukishu
得点期待値から見る盗塁