HOME > コラム一覧 > コラム

コラム

両最下位チームのホットストーブ

三宅博人 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/01/15(土) 10:00rss

 前回の記事からだいぶ時間がたってしまい、コメントをいただいた方にもご返事できず、大変失礼しております。個人的な事情で、先年暮れごろから生活パターンが激変してしまい、現在もまだペースをつかみ切れない状態が続いています。しかし現実はそんな私を待ってはくれず、野球界もあと数週間でキャンプ入りと言う時期になってきました。比較的動きの少ない日本プロ野球界ですが、そんな中でも動きはあり、それらをキャッチアップする意味も含め、主にレギュラークラスの選手に動きがあったチームに焦点を絞り、おさらいしてみます。
 

1.今オフの選手移籍

 トレードの動きはマイナーなものがほとんどで、現在のところは楽天Gイーグルスに所属していた渡辺直人の横浜ベイスターズへの金銭トレードが一番メジャーなものでしょうか?一方FAでは海外からの復帰組、岩村と松井稼頭央のイーグルスへの加入、国内では内川、細川の福岡ソフトバンクホークス入り、日本ハムファイターズからFA宣言した森本のベイスターズ入りが主だったところ。プラス、ロッテマリーンズの西岡、ファイターズの建山の米国流出などもあります。
 
 米国からの流入で興味深かったのはブライアン・バニスターのジャイアンツ入り。新人王の候補となったシーズン以後はふるわないシーズンが続いていて、日本に来ること自体はさほどの驚きではないですけど、彼はセイバーメトリクスを参考にしている投手として、一部ファンには有名です。また将来のマネージャー候補として考えている気の早いファンもいて、”日本での経験がプラスになるのではないか”、と言う意見もチラホラ。最近の数字を見ると、日本でも通用するかどうか不安もありますが、注目してみたい投手です。


2.昨季の楽天ゴールデン・イーグルス
 
 このような動きの中、焦点を当てたいのは私の地元でもありますイーグルス、そして渡辺が移ったベイスターズの両最下位チーム。まずはイーグルスから。ブラウン解任に始まり星野新監督の就任、上でも紹介した元メジャーリーガーである岩村と松井稼頭央の加入、さらにそれに伴っての渡辺直人のベイスターズへの金銭トレード、また結局成立しなかったですが、岩隈のポスティングと話題豊富でした。まだ動きがあるやもと言う報道も見られますが、昨シーズン結果が出なかったチームとしては当然とも言えるのかもしれません。

 その責任を一人でかぶった形のブラウンですが、イーグルスの昨シーズンの失敗はチーム編成に原因があったと考えています。特にチーム得点が576でリーグ最低であった打線の不出来が、最下位に結びついてしまいました。シーズン前の構想としてはベテランの山崎を中心に09年首位打者の鉄平、中村紀洋、そして外国人二人で得点力を期待していたわけですが、期待通りに活躍できたのは鉄平だけ。山崎と中村はそれぞれ598、521打席と一応の責任は果たした格好ですが、OPSは0.749、0.726で水準以下。フィリップス、リンデンに至ってはシーズン当初から結果が出ず、それぞれ92、189打席にの出場にとどまりました。
 
 山崎の結果が負に振れてしまったのは、編成のあやと考えてもよいのかもしれませんが、他の3人についてリスクがあったことは想定の範囲内であったはずで、実績のある選手の補強が欲しかったところ。選手の流動性が少ない日本では、なかなか補強もままなりませんが、フィリップスは補強された選手ですから、フロントにもその認識はあったものと思われます。またブラウンがどの程度チーム編成にかかわっていたかは不明で、もしかなりの責任を負っていたとしたら契約満了前での解任はあるいは当然であったかもしれません。しかしゲームでの采配云々で挽回(ばんかい)できるほどの戦力でなかったのも事実で、そう考えたとき、シーズン終了前での解任劇は個人的には違和感を抱きました。


3.積極補強で今オフ岩村明憲、松井稼頭央の獲得
 
 その違和感についてはともかく、それを受けてのこのオフの補強ですが、昨オフの反省を生かしたものであったと思います。現在のところの補強は松井と岩村。3Aでの成績を見ますと、松井には不安を感じ、あるいはフィリップスやリンデン程度のリスクも考えられますが、岩村については期待しても良いと思います。彼についてもけがの後遺症と言う不安要素もなくはないですが、メジャーでの成績の落ち具合は、3Aでの数字を合わせてみると統計上のぶれで説明できる範囲で、以前のポテンシャルをキープしている可能性も少なくありません。
 
 松井の不安が現実化してしまった場合、実質的に岩村一人の補強であったと言う結果が出てしまう可能性もあります。しかし、パリーグの各チームの戦力は拮抗(きっこう)していますので、一人であっても意味のあるものとなるかもしれませんし、松井が渡辺直人を上回る数字を残すようですと、イーグルスの上位争いの可能性はさらに高まるでしょう。それがどの程度の可能性になるのか、それについては各選手のプロジェクションを含めた各チームの戦力比較にて別な機会に書くとします。
 
 続いて渡辺直人の金銭トレード。スター選手と呼ぶには物足りなさは感じますが、地元ではかなり人気があった選手でもありました。イーグルスファン以外からも賛否両論があったこのトレードですが、選手の流動性という意味で、このような動きが今後も増えていけばよいのになぁと感じています。
 昨シーズンは彼にとって不本意な結果となってしまいましたが、個人的には間の悪かったものと考えていて、内容としては平凡ではあるものの2007年から3年間続いた規定打席突破のポテンシャルは失ってはいないと思います。しかし、彼も既に30歳を超しており、今後の大きな上積みには疑問が残るところで、その点ではイーグルスの松井の補強は納得できる選択。また渡辺の可能性も他のチームならば生きることも考えられ、ベイスターズへの移籍は彼にとっても悪い条件ではないものと思います。


4.横浜ベイスターズの現状
 
 では受け入れ側のベイスターズにとってはどうなのか?結論から書いてしまうと大きな戦力アップとはならないように思います。ベイスターズは渡辺と共に、FAの森本も獲得。二人共にレギュラーとして出場機会の実績は十分ですが、共に直近3年のOPS平均は0.700を切っておりプロダクションとしては平凡。ラインナップは落ち着くやもですが、内川が抜けた穴を埋めるまでには至らないと考えます。
 
 昨年はもともと力不足であった中軸以外で目覚しく成長した選手もなく、また中軸も極度の不振に陥り、リーグ最低得点でした。しかしながら、打線に関しては希望がないわけではなく、ハーパーとスレッジの二人の外国人のレベルはそこそこ高く、この二人は期待通りの数字は残しそう。村田が復活し、さらに石川が成長してその両脇を移籍組が固められればベイスターズとしては理想でしょうか。さすがにここまで望むのはどうかとは思いますが、吉村まで復活すると、リーグでも屈指の重量打線となりますが、果たして?
 
 ただこのチームの場合、先発投手陣が問題で、ここにはこのオフ大きな補強はできませんでした。ブルペンは数字が残せそうな選手がいるので、先発投手が整備されてくるとAクラス入りも夢ではないのですが、よほどドラスティックな補強をしなければ、現状は打破できません。しかしながら、選手流動の少ないNPBにおいてそれを期待するのは難しいことで、ベイスターズとしてはせめてドラフトが完全ウェーバーになってくれないかなぁというところでしょうか。
 

5.レギュラー選手の希少性

本コラム最後に少々蛇足を。
渡辺と森本の記述で彼らのプロダクションは平凡であると書きました。それについて訂正はしませんが、しかし彼らが野球の超エリートであることは間違いありません。
 
 プロジェクション(成績予測)の作業に伴い1シーズン1試合平均、ある打者が何打席立ったかという統計を取ってみました。2005~2007年、2006~2008年、2007~2009年の3スパンにおいて連続で平均3打席以上(規定打席は3.1)立った打者は延べ人数で87人、重複を除くと47人でした。その47人の中に、渡辺と森本の名前もあります。
 
 プロ野球の支配下登録選手は1チームあたり70名で、12チーム全体ですと840人(実際の数は入れ替えがあるのでもう少し多くなります)。乱暴ですが内6割が野手だとして500名程度、そしてこのスパンでも入れ替えがありますので、さらに人数は増えるでしょう。500名プラス2007年から2009年の3年間の入れ替わり分の内、10人に一人も満たない選手が3年連続で一試合平均3打席以上立てる打者となれるわけです。
 
 正確にどの程度の確率で渡辺や森本レベルになれるのかについては、分母と分子共にさらにデータ集めを積まねばなりませんので、現状では言えませんが、プロレベルにおいてもかなりフィルターにかけられた選手であることは容易に想像できます。チーム事情と言う要素も考慮すべきですが、それを差し引いたとしてもです。
 
 分母をもう少し広げてみます。高野連の統計によれば、新入生の野球部員の数は6万人程度だとか。この中に野手がどの程度含まれているのかはわかりませんが、投手も含めた上でプロ野球選手となれるのは、一世代あたり多くて100人程度でしょうか?
※2010年シーズンで選手数が一番多かった世代は、25歳と27歳の78名(2011年1月1日現在)。勿論、この6万人全てが、純粋な意味でプロを目指している予備軍であるかどうかについては検証が必要なところですが、一方でこの6万という人数もフィルターにかけられたものであるということも言えます。
 
 ”渡辺・森本レベル”に到達するまでは、途方もなく遠い道であることは容易に想像できます。残念ながら私の拙い野球経歴の中で、プロレベルの選手と出会ったことはありませんが、もし渡辺や森本のような選手がいたとしたら、とんでもないモンスターだったでしょうね。現在はプロ野球選手も積極的に営業する時代で、ファンとの距離が縮まってきていて、ともすれば彼らがとんでもないカリスマであることは忘れられがちです。だからと言って、拝んで試合観戦する必要もありませんが、プロ野球選手が素晴らしい存在であることを忘れずに、野球の試合を楽しもうと言うことを私自身の今年のテーマと決め、2011年初めのコラムを終わります。
 
 

コメント

みんなの評価:3.5stars-3-5.gif

 ベイスターズ入りした渡辺選手は低打率の際も高出塁率を残す、セイバー的に面白い打者、という通説(?)的にはとても楽しみです。
 もちろん、岩村選手もコラムで書かれているように決して悪い成績に見えないので、うまくハマれば、大量の得点を生産してくれそうな感じですね。

 遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。

評価:stars-3-0.gif Posted by せるふぃむ at 2011/01/22 00:00:11 PASS:

こちらこそよろしくお願い致します。
渡辺直人は面白い打者というところで止まってしまった感もありますね。
楽天の象徴的な存在の一人でもありましたので、感情的には彼には成功してもらいたいと思っています。

Posted by 三宅 at 2011/01/23 22:37:38 PASS:

初めてコメント致します。ほぼ三宅さんの意見に賛成のイーグルスファンです。松井稼を二塁起用するプランはなかったのか?渡辺直人を二塁コンバートさせる案はなかったのか?その点は三宅さんはどのように考えられますでしょうか?(どうにも心の片隅でまだ踏ん切りがつかなくて)

評価:stars-4-0.gif Posted by shibakawa at 2011/02/13 17:14:59 PASS:

二塁起用するにしましても、松井加入によりまして、誰かの出場機会が減少しますので、渡辺ではなくても高須、内村など誰かがチームを離れる結果にはなったかもしれません。また4人とも残るとなると、2軍にいるこれから伸びてくる若い選手による新陳代謝の芽もつぶしてしまう格好になるでしょうし、チームとしては止むを得ない判断だったのかもしれませんね。

Posted by 三宅 at 2011/02/13 22:30:12 PASS:
名前:
メールアドレス:
コメント:
評価:
star2.gif star2.gif star2.gif star2.gif star2.gif
d143fe842412f99ce58d04a8114055e5.png?1498435834
画像の英字5文字を入力して下さい。:

トラックバック一覧

Baseball Lab「Archives」とは?
 
Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。

野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。

月別著者コラム
最新コラムコメント