オールタイムシルバースラッガー
道作 [ 著者コラム一覧 ]
今日までサイトをご覧になった皆さんは相当にハードな内容が続いたこともあって少しお疲れになっているかもしれませんね。そこで肩の凝らない(凝らないのはお前だけだろ、といった突っ込みが怖いですが)話題を一つ。歴史上の打者によるシルバースラッガー賞の選考です。今回は外野手編としてみました。
ここに、ある球団のGMにとって獲得可能な2人の打者が居るとします。
打者A 打率0.246 本塁打11 59打点 13盗塁
打者B 打率0.297 本塁打26 79打点 13盗塁
ポジションや守備力に違いがないとして、食指が動くのは当然Bの方であると思います。
Aの方は守備に優れた選手でなければレギュラーの座をつかむのは難しいと考えられるのに対し、Bの方は相当に攻撃力の優れたチームでも中軸を担いうる選手でしょう。しかし彼らはチームに対して同程度の利益をもたらしていたと見なすことができます。なぜなら、打者Aは1956年セリーグのレギュラー外野手平均であり、打者Bは1977年セリーグのレギュラー外野手平均だからです。それぞれが500打数の機会を与えられたとした場合の仮想の成績であり、この2つは通史的に同等の成績と見なされなくてはなりません。2人共にチームに対し、1年間1つのポジションを支えたという功績はあるにしても、外野手としては打撃で利益も損失も与えていないことになるのですから。
では逆に、優れているまたは貢献があるとはどういうことなのでしょうか。
例えばこれが守備だったとしたらどうでしょう。どんなプレーを見ても、プロの選手は私の草野球仲間とは比較にならないほど優れていることは明らかです。しかしここに100mを10秒で走るなどといった絶対的な物差しなどはありません。どのような差があるのかを客観的に表現する手段はないことになります。もし同じような100の打球を処理するとして、選手Xは99の打球で打者の出塁を許さないとしたら、それはファン目線からして素晴らしい守備に違いありません。しかし他のチームの同じポジションの選手たちがこれらのすべての打球で出塁を許さなかったとしたらどうでしょう。この選手Xは守備で損失をもたらしていると考えるしかありません。
結局のところ、野球の守備に関する優劣は絶対的な物差しがない以上、他のプレーヤーに対する優劣で判断するしかないのです。これは守備の指標が整備されたとしても同じ事で、よそのプレーヤーに対してどうなのかが判断基準であり、この結果、ほぼすべての守備指標は傑出評価へとつながります。相対的な優劣評価だけが存在するのは野球に限らず、ゼロサムゲームにほかならない球技の宿命とも言えます。
打撃についても同じことが言えます。
以下は「このサイトの考え方」の抜粋ですが、引用部分だけではなく、できれば全文を読んでいただきたいと思います。
「並の打者に比べてよく打っている打者がいると相対的にチームが得点力アドバンテージを得られる(ひいては他のチームに比べて勝率が上がる)から勝利という目的が達せられる。そのときその打者は評価に値するのです。実のところ3割30本という数字に単独で価値が見いだせるわけではありません。」
打率3割・30本塁打・80四球の打者Aが居たとして、リーグの平均的な打者の打撃成績がAと全く同じであった場合、この打者Aは攻撃によってはおそらく利得を計上できていません。記録された打撃成績をそのまま並べるだけではその打者の価値は判明しないのです。
2点しか得点を挙げられなくても失点が1点ならば勝つことができます。得点を10点挙げても視点が11点あれば負け。野球のルール自体が傑出の形になっていると言えば比喩(ひゆ)が過ぎるでしょうか。
この後、win share の指標が発表されるらしいと伺いましたので今回はRC関連の指標を使ってみました(この原稿が予告編のような気分も少し)。使用するのがRCでなくbase runなどの他の指標であっても同じことなのですが、これで得られた数値を絶対的な数値のように扱い、そのまま他のシーズンの数値と比較してしまうとそれは単に「新しい打率」を導入したのと同じことになります。あくまで重要なのは指標そのものではなく、それに関連する考え方です。
Historical statsを扱う場合、相対的に得られた利益の形にして初めて指標は意味を持ちうる数字となります。生の数字でスケールを比較しうるのは同じシーズンの同じリーグの中だけのことなのです。
上は攻撃による利得を得点化した表です。歴代で上位の打者を抜き出してあります。
RCAAは平均的な打者に代わって自分が打席に入ることにより多く生み出された得点。余剰得点またはこの打者が生涯かけて産み出した利益と考えてください。RCAA/out は1アウト当たりのRCAA。1つアウトを与える間にこれだけのコストを相手チームに支払わせたことになります。張本・松井・イチロー・山内の4人からは相手投手が10回アウトを奪う間に1点以上の余分な失点、手傷を負わされています。「ベスト10年」「ベスト5年」は当該の打者が最も高い数値をマークした5年または10年のスコアを合算しました。旬の時期にどれほど圧倒的な存在であったのかを示しています。最後はRC27の傑出度。1試合すべての打席を自分一人が受け持った場合の予想得点を表す指標の傑出度です。すべてのシーズンの平均的な打者が4.5をマークする条件の下で倍率を求め、RCに変換した後に再変換という面倒なことをやっていますが、要するに全員が同じ条件での仮想のRC27です。
まず累積の数字が最大となっている張本を第1の候補としてみます。張本は他のすべての数字に関して悪くても3位以内に入っており、除外されるべき理由が見当たりません。
次に注目されるべき2人の打者はイチローと松井秀喜。旬の時期にMLBへと流出しましたので累積の数字は驚くようなものにはなっていませんが、この2人は張本と同等またはそれ以上の傑出を示しています。例えば以下のグラフ。

3人の高卒デビューから10年間のRCAA推移を示したグラフです。イチローは実働9年のためグラフでは2年目のところを初年度としています。
イチローは最初の2年間、マイナスを記録した後に本格ブレーク。その後、守備の指標が驚くようなものになっていないことや欠場試合数が多くなりだすなど、徐々にモチベーションの低下が見られる様子がありますが、それでも高い数値を維持しています。MLBに移籍してからの方がむしろ日本時代以上のパフォーマンスを示しているようでもあり、やはりアメリカに行ってこそ、の選手だったのかもしれません。日本時代のレギュラー生活は7年なのに対してMLB生活は既に10年。基本的にはNPBの選手ではなくMLBの選手になってしまったと言っていいでしょう。
また、このグラフでは徐々に力を蓄えた松井が渡米前の4年間続けてこの3人の中で最大の数値を記録していることが現れています。最後にはこの3人の中でも突き抜けた異常な高数値を記録。指標が一貫して右肩上がりの方向性を示しているのにも好感が持てます。通算のRCAAで、NPBで最大の数値を示した王の数値(1,200越え)には及ばないにしても迫りうるポテンシャルを秘めていたようにも見えます。なお、渡米直前の3年間のうち、最も低いシーズンの数値よりもさらに少し低い数値を続けていたとしても(さほど無理な仮定とは思えませんが)既に張本の数字は超えていたことになります。
イチロー・松井の2人に関してはすべてのRCAAのトータルはもちろん、ベスト10年・ベスト5年の数値などが上がりきる前にMLBへ転出してしまいました。負傷や病気などによりキャリアを終了させてしまったわけではなく、その後のMLBにおいても長期間に亘って良好なパフォーマンスを発揮していますので、累積でも最高の数値を記録できたものと考えています。
ただし、NPBのシルバースラッガー賞を選ぶのならあくまで国内で残した実績のみを考慮するべきではないかという考え方に立つこともできます。実績を残すことが可能な状態にあったらしいとは言っても実際にプレーしたのは国内ではないのですから。
このような考え方の場合には門田博光、山本浩二、山内一弘の3人が候補となります。
門田と山本の間ではそれぞれに優れた項目が異なっています。「ベスト10年」「ベスト5年」「RCAA/out」の項目が山本の方が高いため、全盛期の試合に対する支配力は山本の方が上となりますが、長い年月を通じて一定のレベルにあった期間は門田の方に分が有ることになります。
問題はすべての項目でこの2人を上回る山内一弘です。記録を扱う上での問題は、1952年から1957年までの6年間、現代とは異なるチーム数のリーグで活躍したこと。
この6年間、リーグに7または8チームが存続する状態が続いていましたので、その間、競合相手の打者のうち17~33%は他の年代から見ればリプレースメントレベル(代替レベル)の打者で占められていたことになります。
これがMLBのようにチーム数拡大と選手供給母体の拡大がセットになっているような場合の影響は限定的なものでしょう。しかし、この時のエクスパンションの前後では選手供給母体が変わらないか、むしろ球団数が縮小された後の方がNPBにとって人材供給の面で有利な条件が進行しているのです。これが山内の数値をやや過大なものにしていると考えられます。
なお、山内を含む表の下部の3人はいずれも現代と異なるチーム数の時代に活躍した選手です。記録の扱いの上でも、あくまで現代の数字とは同列に扱えないことは考慮されるべきかもしれません。必要な記録がそろっていない時期もあり、その実績は暫定値としてしか算出することができません。また、RCAAは基本的に投手の打撃成績を削除した後に求められることになります。昭和20年代までは投手野手未分化の時代であり、この時代までは誰を投手として扱うかの問題も扱いを難しいものにしています。
このコラムでは私的シルバースラッガーとして張本勲・松井秀喜・イチローの3人を選出してみました。また、本来のNPB限定の考え方では門田博光・山本浩二・山内一弘の3人から2人と、張本を合わせて3人と考えてみました。表の中の選手でもNPBで活躍中の現役選手が混じっており、未来は定まったものではありません。
さて、門田・山本・山内の中からどの2人を選ぶのか、それとも全く異なるメンバーを選ぶのか、皆さんなら最終的にどのような3人を選ばれるのでしょうか。
ここに、ある球団のGMにとって獲得可能な2人の打者が居るとします。
打者A 打率0.246 本塁打11 59打点 13盗塁
打者B 打率0.297 本塁打26 79打点 13盗塁
ポジションや守備力に違いがないとして、食指が動くのは当然Bの方であると思います。
Aの方は守備に優れた選手でなければレギュラーの座をつかむのは難しいと考えられるのに対し、Bの方は相当に攻撃力の優れたチームでも中軸を担いうる選手でしょう。しかし彼らはチームに対して同程度の利益をもたらしていたと見なすことができます。なぜなら、打者Aは1956年セリーグのレギュラー外野手平均であり、打者Bは1977年セリーグのレギュラー外野手平均だからです。それぞれが500打数の機会を与えられたとした場合の仮想の成績であり、この2つは通史的に同等の成績と見なされなくてはなりません。2人共にチームに対し、1年間1つのポジションを支えたという功績はあるにしても、外野手としては打撃で利益も損失も与えていないことになるのですから。
では逆に、優れているまたは貢献があるとはどういうことなのでしょうか。
例えばこれが守備だったとしたらどうでしょう。どんなプレーを見ても、プロの選手は私の草野球仲間とは比較にならないほど優れていることは明らかです。しかしここに100mを10秒で走るなどといった絶対的な物差しなどはありません。どのような差があるのかを客観的に表現する手段はないことになります。もし同じような100の打球を処理するとして、選手Xは99の打球で打者の出塁を許さないとしたら、それはファン目線からして素晴らしい守備に違いありません。しかし他のチームの同じポジションの選手たちがこれらのすべての打球で出塁を許さなかったとしたらどうでしょう。この選手Xは守備で損失をもたらしていると考えるしかありません。
結局のところ、野球の守備に関する優劣は絶対的な物差しがない以上、他のプレーヤーに対する優劣で判断するしかないのです。これは守備の指標が整備されたとしても同じ事で、よそのプレーヤーに対してどうなのかが判断基準であり、この結果、ほぼすべての守備指標は傑出評価へとつながります。相対的な優劣評価だけが存在するのは野球に限らず、ゼロサムゲームにほかならない球技の宿命とも言えます。
打撃についても同じことが言えます。
以下は「このサイトの考え方」の抜粋ですが、引用部分だけではなく、できれば全文を読んでいただきたいと思います。
「並の打者に比べてよく打っている打者がいると相対的にチームが得点力アドバンテージを得られる(ひいては他のチームに比べて勝率が上がる)から勝利という目的が達せられる。そのときその打者は評価に値するのです。実のところ3割30本という数字に単独で価値が見いだせるわけではありません。」
打率3割・30本塁打・80四球の打者Aが居たとして、リーグの平均的な打者の打撃成績がAと全く同じであった場合、この打者Aは攻撃によってはおそらく利得を計上できていません。記録された打撃成績をそのまま並べるだけではその打者の価値は判明しないのです。
2点しか得点を挙げられなくても失点が1点ならば勝つことができます。得点を10点挙げても視点が11点あれば負け。野球のルール自体が傑出の形になっていると言えば比喩(ひゆ)が過ぎるでしょうか。
この後、win share の指標が発表されるらしいと伺いましたので今回はRC関連の指標を使ってみました(この原稿が予告編のような気分も少し)。使用するのがRCでなくbase runなどの他の指標であっても同じことなのですが、これで得られた数値を絶対的な数値のように扱い、そのまま他のシーズンの数値と比較してしまうとそれは単に「新しい打率」を導入したのと同じことになります。あくまで重要なのは指標そのものではなく、それに関連する考え方です。
Historical statsを扱う場合、相対的に得られた利益の形にして初めて指標は意味を持ちうる数字となります。生の数字でスケールを比較しうるのは同じシーズンの同じリーグの中だけのことなのです。
名前 | RCAA | RCAA/out | ベスト10年 | ベスト5年 | RC27傑出 |
張本勲 | 787.12 | 0.116 | 529.45 | 292.42 | 8.48 |
門田博光 | 526.10 | 0.082 | 373.02 | 223.34 | 7.10 |
山本浩二 | 493.30 | 0.083 | 400.69 | 250.64 | 6.91 |
金本知憲 | 460.60 | 0.077 | 353.33 | 218.01 | 6.89 |
福本豊 | 413.26 | 0.063 | 325.28 | 187.89 | 6.53 |
T ローズ | 409.34 | 0.090 | 384.89 | 237.34 | 7.16 |
松井秀喜 | 405.38 | 0.124 | 405.38 | 284.70 | 8.25 |
松中信彦 | 382.14 | 0.097 | 368.13 | 227.03 | 7.44 |
江藤慎一 | 373.26 | 0.071 | 336.89 | 203.35 | 7.07 |
土井正博 | 351.35 | 0.055 | 306.14 | 178.13 | 6.32 |
イチロー | 315.49 | 0.131 | - | 252.73 | 8.65 |
和田一浩 | 302.66 | 0.090 | 302.42 | 197.13 | 7.14 |
長池徳士 | 276.17 | 0.076 | 280.70 | 201.04 | 6.83 |
若松勉 | 275.70 | 0.057 | 250.63 | 157.27 | 6.29 |
秋山幸二 | 261.36 | 0.043 | 262.33 | 168.28 | 5.69 |
山内一弘 | 586.69 | 0.105 | 468.28 | 265.97 | 8.36 |
大下弘 | 346.97 | 0.087 | 332.66 | 218.12 | 7.43 |
小鶴誠 | 321.69 | 0.071 | 300.25 | 213.08 | 6.85 |
上は攻撃による利得を得点化した表です。歴代で上位の打者を抜き出してあります。
RCAAは平均的な打者に代わって自分が打席に入ることにより多く生み出された得点。余剰得点またはこの打者が生涯かけて産み出した利益と考えてください。RCAA/out は1アウト当たりのRCAA。1つアウトを与える間にこれだけのコストを相手チームに支払わせたことになります。張本・松井・イチロー・山内の4人からは相手投手が10回アウトを奪う間に1点以上の余分な失点、手傷を負わされています。「ベスト10年」「ベスト5年」は当該の打者が最も高い数値をマークした5年または10年のスコアを合算しました。旬の時期にどれほど圧倒的な存在であったのかを示しています。最後はRC27の傑出度。1試合すべての打席を自分一人が受け持った場合の予想得点を表す指標の傑出度です。すべてのシーズンの平均的な打者が4.5をマークする条件の下で倍率を求め、RCに変換した後に再変換という面倒なことをやっていますが、要するに全員が同じ条件での仮想のRC27です。
まず累積の数字が最大となっている張本を第1の候補としてみます。張本は他のすべての数字に関して悪くても3位以内に入っており、除外されるべき理由が見当たりません。
次に注目されるべき2人の打者はイチローと松井秀喜。旬の時期にMLBへと流出しましたので累積の数字は驚くようなものにはなっていませんが、この2人は張本と同等またはそれ以上の傑出を示しています。例えば以下のグラフ。

3人の高卒デビューから10年間のRCAA推移を示したグラフです。イチローは実働9年のためグラフでは2年目のところを初年度としています。
イチローは最初の2年間、マイナスを記録した後に本格ブレーク。その後、守備の指標が驚くようなものになっていないことや欠場試合数が多くなりだすなど、徐々にモチベーションの低下が見られる様子がありますが、それでも高い数値を維持しています。MLBに移籍してからの方がむしろ日本時代以上のパフォーマンスを示しているようでもあり、やはりアメリカに行ってこそ、の選手だったのかもしれません。日本時代のレギュラー生活は7年なのに対してMLB生活は既に10年。基本的にはNPBの選手ではなくMLBの選手になってしまったと言っていいでしょう。
また、このグラフでは徐々に力を蓄えた松井が渡米前の4年間続けてこの3人の中で最大の数値を記録していることが現れています。最後にはこの3人の中でも突き抜けた異常な高数値を記録。指標が一貫して右肩上がりの方向性を示しているのにも好感が持てます。通算のRCAAで、NPBで最大の数値を示した王の数値(1,200越え)には及ばないにしても迫りうるポテンシャルを秘めていたようにも見えます。なお、渡米直前の3年間のうち、最も低いシーズンの数値よりもさらに少し低い数値を続けていたとしても(さほど無理な仮定とは思えませんが)既に張本の数字は超えていたことになります。
イチロー・松井の2人に関してはすべてのRCAAのトータルはもちろん、ベスト10年・ベスト5年の数値などが上がりきる前にMLBへ転出してしまいました。負傷や病気などによりキャリアを終了させてしまったわけではなく、その後のMLBにおいても長期間に亘って良好なパフォーマンスを発揮していますので、累積でも最高の数値を記録できたものと考えています。
ただし、NPBのシルバースラッガー賞を選ぶのならあくまで国内で残した実績のみを考慮するべきではないかという考え方に立つこともできます。実績を残すことが可能な状態にあったらしいとは言っても実際にプレーしたのは国内ではないのですから。
このような考え方の場合には門田博光、山本浩二、山内一弘の3人が候補となります。
門田と山本の間ではそれぞれに優れた項目が異なっています。「ベスト10年」「ベスト5年」「RCAA/out」の項目が山本の方が高いため、全盛期の試合に対する支配力は山本の方が上となりますが、長い年月を通じて一定のレベルにあった期間は門田の方に分が有ることになります。
問題はすべての項目でこの2人を上回る山内一弘です。記録を扱う上での問題は、1952年から1957年までの6年間、現代とは異なるチーム数のリーグで活躍したこと。
この6年間、リーグに7または8チームが存続する状態が続いていましたので、その間、競合相手の打者のうち17~33%は他の年代から見ればリプレースメントレベル(代替レベル)の打者で占められていたことになります。
これがMLBのようにチーム数拡大と選手供給母体の拡大がセットになっているような場合の影響は限定的なものでしょう。しかし、この時のエクスパンションの前後では選手供給母体が変わらないか、むしろ球団数が縮小された後の方がNPBにとって人材供給の面で有利な条件が進行しているのです。これが山内の数値をやや過大なものにしていると考えられます。
なお、山内を含む表の下部の3人はいずれも現代と異なるチーム数の時代に活躍した選手です。記録の扱いの上でも、あくまで現代の数字とは同列に扱えないことは考慮されるべきかもしれません。必要な記録がそろっていない時期もあり、その実績は暫定値としてしか算出することができません。また、RCAAは基本的に投手の打撃成績を削除した後に求められることになります。昭和20年代までは投手野手未分化の時代であり、この時代までは誰を投手として扱うかの問題も扱いを難しいものにしています。
このコラムでは私的シルバースラッガーとして張本勲・松井秀喜・イチローの3人を選出してみました。また、本来のNPB限定の考え方では門田博光・山本浩二・山内一弘の3人から2人と、張本を合わせて3人と考えてみました。表の中の選手でもNPBで活躍中の現役選手が混じっており、未来は定まったものではありません。
さて、門田・山本・山内の中からどの2人を選ぶのか、それとも全く異なるメンバーを選ぶのか、皆さんなら最終的にどのような3人を選ばれるのでしょうか。
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