Baseball Lab守備評価~Second Baseman
道作 [ 著者コラム一覧 ]
1.はじめに
歴史的に最も守り方の変革が激しく、その変革は現在でも続いていると考えられるポジション。NPBでも過去には左利きの二塁手が十数人も起用されたり、全チームで三塁手よりも補殺が少ないシーズンがあるなど、現代からは考えられない経緯をたどり、今や守備の花形ポジションの一つ。時の流れというのは恐ろしい。
算出方法の基礎はレンジファクターの手法であるが、実験的な試みとして、DERの代わりにBatted Ball Stats を採用した。なお、イニング当たりの数値を算出して順位付けを行ったために積み上げ式の累計スコアとでは異なる順位になる例も多い。サンプルスケールの関係から、一応500イニングを超えた選手を対象としている。また、あえて補殺に絞った評価をしたために、以前にRFで算出した順位とは二塁手に限らずすべてのポジションで微妙に異なる結果になっている。
2.二塁手評価と横浜・カスティーヨ
本年度の各チーム二塁手の評価は下の表のとおりとなっているが、本年度、私にとって(というより多くのセイバーメトリシャンにとって)最も注目されるのは横浜のカスティーヨであろう。

どう評価したところで、レンジ系では大概の観測者が最高または控えめでも最高級と評価するはずである。このスタッツに対して、メディアの評価は守備に難があるとしており、球団はオフに解雇している。
面白い。評価・見解に大きな齟齬がみられるときほど興味をひかれるもので、真実が知りたくなるのは野球に限った話ではない。錯覚の方が広く流通しているのか、それともハズレ値が検出されていたり、指標のクセが現れたりしたものなのか。
で、今回はゾーンスタッツの方も確認することとした。
諸事情から(個人の力では時間がかかり過ぎる)カスティーヨ個人の守備という形まで煮詰められなかったが、横浜の守備全体という形では確認することができた。
これによれば横浜の二塁守備は標準レベルといったところだろうか。会社組織などの力で最終的に精査され、カスティーヨ個人のレンジファクターが確定した場合には少々の誤差はあるかもしれない。断言するには多少怖いところだが、まれにみる守備の名手とは言えない代わりに守備を破たんさせたレベルともいえないようである。なお、レンジとゾーンの齟齬を考えると、守備指標は1年で結論を得るのは難しいのかもしれない。
3.横浜二塁守備の内容
カスティーヨを中心とする横浜の二塁手は、二塁ベースより右の内野ゾーンの打球についてわりとはっきりした傾向が現れているようである。
①二塁ベース寄りの打球に強い。
②一二塁間の打球に弱い。
以下はサンプル数による誤差があることは承知の上で記すが、この長所・短所はほぼ相殺される程度である。このうち①は身体能力に裏付けられた高い素養を感じさせる。MLBでも守備は低い評価ではなかったことの理由がこの辺りにあるのかもしれない。
問題は②である。日本に来て1年目、守り位置の部分で打球方向の変化に馴染(なじ)んでいなかったことはあるだろう。しかし、より多くの問題は他の野手との連携が上手く機能していなかったらしいことにある。一塁寄りにユルめの打球が飛んだとき、横浜の守備は記録の上で突如たどたどしくなっている。一塁手・投手・二塁手、誰が何をやってもよさそうな打球。しかし何もやらないことは許されない打球。誰が取りに行くのか、それともベースに入るのか、カバーするのか、他の走者は居るのか。長年の経験による暗黙の了解又は共通認識により次のアクションが決定される場面であり、この面で困難を抱えていたようである。日本でもアメリカでも、二塁手というポジションの変革は他の野手との連携における難易度を年々高めていることは想像に難くない。
ただし、この問題はある程度時間が解決できる問題でもある。次年度の守備が楽しみなところではあったが、もう見ることはかなわない。楽天渡辺の移籍が意外に早い時期に既定路線となっていたのならば、これは自然の成り行きだろうが、実際はどうだったのだろうか。
4.その他の選手について
ヤクルト田中のように、経年推移から順当な結果を挙げた選手もあるが、今年の二塁守備では例年に比べて異常な数値も多く記録されている。
ソフトバンク本多は二塁での刺殺を異常に多く記録。刺殺をカウントする古典的なRRFならば、おそらく最高の成績と評価されることになる。
逆にロッテの井口は過去には考えられなかったようなマイナスを記録。打球方向の偏りやサンプルスケールの偏りも一部は影響していると考えられなくもないが、来年のスタッツが最も注目される二塁手であろう。何しろ昨季は計算する側が一瞬打ち込みミスかと思うくらいの最悪の結果になっているのである。また、今年は年末に37歳を迎えるシーズンである。守備の全盛期は一般に思われているより若い時期にあることを思えば、これはかなり危険な数字である。来年度もこのような数字を残すようならば他のポジションへの転出を考えるべき時期に来ていると考える。数字が回復するのかどうか、目を離せないシーズンとなりそうだ。
歴史的に最も守り方の変革が激しく、その変革は現在でも続いていると考えられるポジション。NPBでも過去には左利きの二塁手が十数人も起用されたり、全チームで三塁手よりも補殺が少ないシーズンがあるなど、現代からは考えられない経緯をたどり、今や守備の花形ポジションの一つ。時の流れというのは恐ろしい。
算出方法の基礎はレンジファクターの手法であるが、実験的な試みとして、DERの代わりにBatted Ball Stats を採用した。なお、イニング当たりの数値を算出して順位付けを行ったために積み上げ式の累計スコアとでは異なる順位になる例も多い。サンプルスケールの関係から、一応500イニングを超えた選手を対象としている。また、あえて補殺に絞った評価をしたために、以前にRFで算出した順位とは二塁手に限らずすべてのポジションで微妙に異なる結果になっている。
2.二塁手評価と横浜・カスティーヨ
本年度の各チーム二塁手の評価は下の表のとおりとなっているが、本年度、私にとって(というより多くのセイバーメトリシャンにとって)最も注目されるのは横浜のカスティーヨであろう。

どう評価したところで、レンジ系では大概の観測者が最高または控えめでも最高級と評価するはずである。このスタッツに対して、メディアの評価は守備に難があるとしており、球団はオフに解雇している。
面白い。評価・見解に大きな齟齬がみられるときほど興味をひかれるもので、真実が知りたくなるのは野球に限った話ではない。錯覚の方が広く流通しているのか、それともハズレ値が検出されていたり、指標のクセが現れたりしたものなのか。
で、今回はゾーンスタッツの方も確認することとした。
諸事情から(個人の力では時間がかかり過ぎる)カスティーヨ個人の守備という形まで煮詰められなかったが、横浜の守備全体という形では確認することができた。
これによれば横浜の二塁守備は標準レベルといったところだろうか。会社組織などの力で最終的に精査され、カスティーヨ個人のレンジファクターが確定した場合には少々の誤差はあるかもしれない。断言するには多少怖いところだが、まれにみる守備の名手とは言えない代わりに守備を破たんさせたレベルともいえないようである。なお、レンジとゾーンの齟齬を考えると、守備指標は1年で結論を得るのは難しいのかもしれない。
3.横浜二塁守備の内容
カスティーヨを中心とする横浜の二塁手は、二塁ベースより右の内野ゾーンの打球についてわりとはっきりした傾向が現れているようである。
①二塁ベース寄りの打球に強い。
②一二塁間の打球に弱い。
以下はサンプル数による誤差があることは承知の上で記すが、この長所・短所はほぼ相殺される程度である。このうち①は身体能力に裏付けられた高い素養を感じさせる。MLBでも守備は低い評価ではなかったことの理由がこの辺りにあるのかもしれない。
問題は②である。日本に来て1年目、守り位置の部分で打球方向の変化に馴染(なじ)んでいなかったことはあるだろう。しかし、より多くの問題は他の野手との連携が上手く機能していなかったらしいことにある。一塁寄りにユルめの打球が飛んだとき、横浜の守備は記録の上で突如たどたどしくなっている。一塁手・投手・二塁手、誰が何をやってもよさそうな打球。しかし何もやらないことは許されない打球。誰が取りに行くのか、それともベースに入るのか、カバーするのか、他の走者は居るのか。長年の経験による暗黙の了解又は共通認識により次のアクションが決定される場面であり、この面で困難を抱えていたようである。日本でもアメリカでも、二塁手というポジションの変革は他の野手との連携における難易度を年々高めていることは想像に難くない。
ただし、この問題はある程度時間が解決できる問題でもある。次年度の守備が楽しみなところではあったが、もう見ることはかなわない。楽天渡辺の移籍が意外に早い時期に既定路線となっていたのならば、これは自然の成り行きだろうが、実際はどうだったのだろうか。
4.その他の選手について
ヤクルト田中のように、経年推移から順当な結果を挙げた選手もあるが、今年の二塁守備では例年に比べて異常な数値も多く記録されている。
ソフトバンク本多は二塁での刺殺を異常に多く記録。刺殺をカウントする古典的なRRFならば、おそらく最高の成績と評価されることになる。
逆にロッテの井口は過去には考えられなかったようなマイナスを記録。打球方向の偏りやサンプルスケールの偏りも一部は影響していると考えられなくもないが、来年のスタッツが最も注目される二塁手であろう。何しろ昨季は計算する側が一瞬打ち込みミスかと思うくらいの最悪の結果になっているのである。また、今年は年末に37歳を迎えるシーズンである。守備の全盛期は一般に思われているより若い時期にあることを思えば、これはかなり危険な数字である。来年度もこのような数字を残すようならば他のポジションへの転出を考えるべき時期に来ていると考える。数字が回復するのかどうか、目を離せないシーズンとなりそうだ。

Baseball Lab「Archives」とは?
Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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