NPBここまでの投手運用(ローテ編成、登板間隔)~パ・リーグ
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東日本大震災の甚大なる被害及び計画停電の影響により開幕が遅延することとなったNPBも、その後は順調に日程が進み3ヶ月目に突入しています。営利団体とはいえ、開催時期及び開催地変更に伴う諸業務や球場内の保安、節電業務などに関っている球団関係者並びに、これまで通りに野球を魅せてくれている選手を始めとした現場関係者の方々に先ずは御礼を申し上げます
さて、交流戦も終了しどのチームも50試合前後消化しましたが、震災の影響で約半月ほど延期した都合上、実際はまだ2ヶ月程度の日程しか終えていません。ですので、公式戦はおよそ1/3が過ぎた状態と考えた方が良さそうです。
今季は統一球の影響が色濃く出たシーズンとして、投手力にスポットが当る機会が多いのが特徴となっています。防御率など各種投手成績が軒並み上昇しているのは承知のことと思いますが、こと投げる立場の労働量についてはこれまでと何ら変わりが無いのも事実でしょう。(巷で言われている)投手有利なボールに変更されたからといっても、100球は100球であって120球ではありません。同じく登板間隔についても、中6日は中6日のままです。今回のリポートは、各球団の投手運用(マネジメント)が正常に行なわれているか、そして統一球のもたらす投高打低現象によって懸念が生じてくるかもしれない投手の酷使(ここではオーバーワークという言葉を使います)について3回に渡って予測、検証してみたいと思います。
パ・リーグはソフトバンク、日本ハムが順調。オリックスも高評価
ここでも昨シーズンのデータを公開したことがありましたが、交流戦終了時までの各球団におけるローテーションの間隔を取りまとめました。グラフはチーム全体のもので、一覧は投手別に登板順での間隔を並べてみたものです。


パ・リーグはほぼ全球団が無難な運用を行なっているようです。ここで言う無難という意味は、最低でも5人以上の先発要員を準備し、選択した投手の結果(防御率など)は除外して中6日サイクル中心のローテーションを組んでいる状況を指しています。以下、「開幕前の方針を貫いているか」「故障者を出していないか」「新戦力を上手に活用しているか」といったマネジメント上の仕事振りを分析していきます。
ソフトバンク(評価A)
首位を走るチームだけあって至って順調。交流戦の間は6番手の岩嵜を外して5人体制で賄っていますが、実に無駄のない運用です。杉内、和田、ホールトンといった既存のローテ投手はもちろんのこと、実績2年目の山田と中継ぎから転向の攝津が他球団のエース並みの稼働を残している点が非常に大きいといえます。全てが噛み合っている中、登板間隔も奇麗に揃っているのがわかると思います。リーグ戦突入後は6人編成に戻るかと思いますが、岩嵜と新外国人のレルーがレベルの高い競争をしてくれることがベストな展開といえるでしょう。
日本ハム(評価A-)
成績上ではソフトバンクに引けを取らない日本ハムですが、ルーキー斎藤祐の故障の後、5番手以降を決めかねている印象を受けます。ここまで6人サイクルで回している実例の無い点が若干のマイナス評価となりました。リーグ戦再開に伴いダルビッシュ、武田勝、ケッペル、ウルフに続くコマをどう使っていくのかに注目が集まるでしょう。気付いた点といえば、エースダルビッシュを中6日で頑なに起用し、2番手以降の投手達がその前後で間隔を空けたり狭めたりしています。こうした傾向は今季だけでなく、ここ数年来堅持しているのが日本ハム編成の特徴です。厳しい目で見れば過保護ともいえる待遇は恵まれていると思うかもしれませんが、その分圧巻の投球内容で結果を出しています。ただし、一試合辺りの投球数消化が進むと交代させられないジレンマを生むかもしれない点が、他球団の攻略する余地とも考えられます。故障の具合が中々見えてこない斎藤祐ですが、この時期に一軍復帰するか否かで今季の稼働状況は読めてきそうです。
オリックス(評価A―)
チームとしての成績は出遅れたものの、オリックスはエースの金子が復帰するまで6人体制をあまり崩さずここまで消化して来ています。結果はどうあれ、寺原、西、フィガロ、朴贊浩と新戦力が4人もいる編成を維持してきたのは中々辛抱強いベンチワークだったのではないかと思います。今後は安定する方向に行くものと思われますが、実績あるベテランの木佐貫、朴贊浩の安定は不可欠です。
西武(評価B)
毎年ブルペンに不安を抱えるため、先発要員にはゆとりを持った間隔で先発完投を期待する方向は相変わらずなようです。涌井、帆足、牧田、岸が中心となり、ベテランの石井一、西口に対しては十分間隔を空けた上で起用しています。心配される涌井の起用過多ですが、今の所は無難な線に落ち着いているといえますが、新人の牧田にオーバーワークの懸念が生じています。全体的にはもう少し厚みが必要でしょう。6/12にプロデビューした菊池雄が先発の一員に加わることが出来ればかなり楽になりますが、果して?先発とリリーフ両方で起用されていたミンチェは、当分の間はブルペンで稼働すると見られていますが、今後もかなり流動的な動きとなるでしょう。
楽天(評価B-)
打線が低迷する中で先発投手は健闘している楽天ですが、岩隈、ラズナーと先発の柱が2枚も欠けてしまい、交流戦中は谷間の先発を含めても5人編成で回していくのがやっとの状態でした。中継ぎの中心的役割だった小山、片山を借り出すなど、現時点で11人もの投手を先発起用しています。不運であったことは仕方のないことかもしれませんが、故障者を出さないことや予め故障者を予測するなど、マネジメントの点では疑問符を付けられる部分はあると思います。また、先発5、6番手(谷間)と勝利パターンで継ぎこむ中継ぎ投手が重複している(前述の小山、片山に加え青山)のもデプス(層)の薄さを表しているといえなくもないですが、もう少し役割分担したらどうかという思いはあります。ドラフト1位入団の塩見が球威、変化球共に通用しているのが不幸中の幸いといったところでしょうか。例え「持っていない」としても全く問題ありません。
ロッテ(評価C)
昨年に引き続き先発要員が中々揃わない状況。ベテラン渡辺俊の起用パターンを見ていると、交流戦後も先発枠が5人までしか埋まらないのではないかという雰囲気を感じます。5人なら5人で、適所に谷間の先発要員を作ることで乗り切るチームもありますが、こうした状態が続くと成瀬、唐川の2本柱への負荷が気になるところです。日本一の翌年だからという理由で、敗戦にたいするプレッシャーが強いのも窮屈な用兵となる一因かもしれませんが、状況によってはオーバーワークを指摘されかねません。マーフィー、ペンと昨年活躍した外国人の故障も痛い材料です。ファームで好成績を挙げている阿部和成(61.1回で防御率1.77)など若手抜擢する機会も増えそうです。
まとめとして、リーグ戦開始後のローテーションを予想したいと思います。
【今後のローテ編成予想】
ソフトバンク・・・・杉内、和田、ホールトン、山田、攝津、岩嵜(レルー)
日本ハム・・・・・・ダルビッシュ、武田勝、ケッペル、ウルフ、糸数、八木(斎藤祐)
オリックス・・・・・・金子、寺原、フィガロ、西、木佐貫、朴贊浩(近藤)
西武・・・・・・・・・・涌井、帆足、牧田、岸、石井一、西口(菊池雄)
楽天・・・・・・・・・・田中将、永井、塩見、川井、ヒメネス、岩隈(ラズナー)
ロッテ・・・・・・・・・成瀬、唐川、渡辺俊、吉見、大谷、小野(マーフィー・阿部)
明日はセ・リーグについて見ていきたいと思います。
さて、交流戦も終了しどのチームも50試合前後消化しましたが、震災の影響で約半月ほど延期した都合上、実際はまだ2ヶ月程度の日程しか終えていません。ですので、公式戦はおよそ1/3が過ぎた状態と考えた方が良さそうです。
今季は統一球の影響が色濃く出たシーズンとして、投手力にスポットが当る機会が多いのが特徴となっています。防御率など各種投手成績が軒並み上昇しているのは承知のことと思いますが、こと投げる立場の労働量についてはこれまでと何ら変わりが無いのも事実でしょう。(巷で言われている)投手有利なボールに変更されたからといっても、100球は100球であって120球ではありません。同じく登板間隔についても、中6日は中6日のままです。今回のリポートは、各球団の投手運用(マネジメント)が正常に行なわれているか、そして統一球のもたらす投高打低現象によって懸念が生じてくるかもしれない投手の酷使(ここではオーバーワークという言葉を使います)について3回に渡って予測、検証してみたいと思います。
パ・リーグはソフトバンク、日本ハムが順調。オリックスも高評価
ここでも昨シーズンのデータを公開したことがありましたが、交流戦終了時までの各球団におけるローテーションの間隔を取りまとめました。グラフはチーム全体のもので、一覧は投手別に登板順での間隔を並べてみたものです。


パ・リーグはほぼ全球団が無難な運用を行なっているようです。ここで言う無難という意味は、最低でも5人以上の先発要員を準備し、選択した投手の結果(防御率など)は除外して中6日サイクル中心のローテーションを組んでいる状況を指しています。以下、「開幕前の方針を貫いているか」「故障者を出していないか」「新戦力を上手に活用しているか」といったマネジメント上の仕事振りを分析していきます。
ソフトバンク(評価A)
首位を走るチームだけあって至って順調。交流戦の間は6番手の岩嵜を外して5人体制で賄っていますが、実に無駄のない運用です。杉内、和田、ホールトンといった既存のローテ投手はもちろんのこと、実績2年目の山田と中継ぎから転向の攝津が他球団のエース並みの稼働を残している点が非常に大きいといえます。全てが噛み合っている中、登板間隔も奇麗に揃っているのがわかると思います。リーグ戦突入後は6人編成に戻るかと思いますが、岩嵜と新外国人のレルーがレベルの高い競争をしてくれることがベストな展開といえるでしょう。
日本ハム(評価A-)
成績上ではソフトバンクに引けを取らない日本ハムですが、ルーキー斎藤祐の故障の後、5番手以降を決めかねている印象を受けます。ここまで6人サイクルで回している実例の無い点が若干のマイナス評価となりました。リーグ戦再開に伴いダルビッシュ、武田勝、ケッペル、ウルフに続くコマをどう使っていくのかに注目が集まるでしょう。気付いた点といえば、エースダルビッシュを中6日で頑なに起用し、2番手以降の投手達がその前後で間隔を空けたり狭めたりしています。こうした傾向は今季だけでなく、ここ数年来堅持しているのが日本ハム編成の特徴です。厳しい目で見れば過保護ともいえる待遇は恵まれていると思うかもしれませんが、その分圧巻の投球内容で結果を出しています。ただし、一試合辺りの投球数消化が進むと交代させられないジレンマを生むかもしれない点が、他球団の攻略する余地とも考えられます。故障の具合が中々見えてこない斎藤祐ですが、この時期に一軍復帰するか否かで今季の稼働状況は読めてきそうです。
オリックス(評価A―)
チームとしての成績は出遅れたものの、オリックスはエースの金子が復帰するまで6人体制をあまり崩さずここまで消化して来ています。結果はどうあれ、寺原、西、フィガロ、朴贊浩と新戦力が4人もいる編成を維持してきたのは中々辛抱強いベンチワークだったのではないかと思います。今後は安定する方向に行くものと思われますが、実績あるベテランの木佐貫、朴贊浩の安定は不可欠です。
西武(評価B)
毎年ブルペンに不安を抱えるため、先発要員にはゆとりを持った間隔で先発完投を期待する方向は相変わらずなようです。涌井、帆足、牧田、岸が中心となり、ベテランの石井一、西口に対しては十分間隔を空けた上で起用しています。心配される涌井の起用過多ですが、今の所は無難な線に落ち着いているといえますが、新人の牧田にオーバーワークの懸念が生じています。全体的にはもう少し厚みが必要でしょう。6/12にプロデビューした菊池雄が先発の一員に加わることが出来ればかなり楽になりますが、果して?先発とリリーフ両方で起用されていたミンチェは、当分の間はブルペンで稼働すると見られていますが、今後もかなり流動的な動きとなるでしょう。
楽天(評価B-)
打線が低迷する中で先発投手は健闘している楽天ですが、岩隈、ラズナーと先発の柱が2枚も欠けてしまい、交流戦中は谷間の先発を含めても5人編成で回していくのがやっとの状態でした。中継ぎの中心的役割だった小山、片山を借り出すなど、現時点で11人もの投手を先発起用しています。不運であったことは仕方のないことかもしれませんが、故障者を出さないことや予め故障者を予測するなど、マネジメントの点では疑問符を付けられる部分はあると思います。また、先発5、6番手(谷間)と勝利パターンで継ぎこむ中継ぎ投手が重複している(前述の小山、片山に加え青山)のもデプス(層)の薄さを表しているといえなくもないですが、もう少し役割分担したらどうかという思いはあります。ドラフト1位入団の塩見が球威、変化球共に通用しているのが不幸中の幸いといったところでしょうか。例え「持っていない」としても全く問題ありません。
ロッテ(評価C)
昨年に引き続き先発要員が中々揃わない状況。ベテラン渡辺俊の起用パターンを見ていると、交流戦後も先発枠が5人までしか埋まらないのではないかという雰囲気を感じます。5人なら5人で、適所に谷間の先発要員を作ることで乗り切るチームもありますが、こうした状態が続くと成瀬、唐川の2本柱への負荷が気になるところです。日本一の翌年だからという理由で、敗戦にたいするプレッシャーが強いのも窮屈な用兵となる一因かもしれませんが、状況によってはオーバーワークを指摘されかねません。マーフィー、ペンと昨年活躍した外国人の故障も痛い材料です。ファームで好成績を挙げている阿部和成(61.1回で防御率1.77)など若手抜擢する機会も増えそうです。
まとめとして、リーグ戦開始後のローテーションを予想したいと思います。
【今後のローテ編成予想】
ソフトバンク・・・・杉内、和田、ホールトン、山田、攝津、岩嵜(レルー)
日本ハム・・・・・・ダルビッシュ、武田勝、ケッペル、ウルフ、糸数、八木(斎藤祐)
オリックス・・・・・・金子、寺原、フィガロ、西、木佐貫、朴贊浩(近藤)
西武・・・・・・・・・・涌井、帆足、牧田、岸、石井一、西口(菊池雄)
楽天・・・・・・・・・・田中将、永井、塩見、川井、ヒメネス、岩隈(ラズナー)
ロッテ・・・・・・・・・成瀬、唐川、渡辺俊、吉見、大谷、小野(マーフィー・阿部)
明日はセ・リーグについて見ていきたいと思います。
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