投手別QSデータと「投手版OPS」
SHINGO [ 著者コラム一覧 ]
QSに因んだコラムも今回で一旦区切りをつけたいと思うが、今回は投手個人別のデータを過去4年間の集計分として紹介したい。どうして4年なのかというと、それほど深く考えた訳ではないのだが、何人かの投手のピークないしはデビューに合わせてみようと思った。例としてあげると、
1、ダルビッシュ有の支配的な期間がスタート(4年連続防御率1点台)
2、成瀬善久、涌井秀章が本格ブレイク
3、田中将大のデビュー
最も照準を合わせたかったのは、やはりダルビッシュ。この期間でどれくらいの功績を挙げたのかどうかは、筆者でなくとも興味の沸く方が大勢おられると思う。加えて、成瀬や涌井もピーク時期に噛み合う格好となった。田中将については新人の年から活躍してはいるがこの期間がピークという印象はないので、後年改めて数値を弾き出して見た方が面白そうだ。

ということで、「ダルビッシュが支配的だった期間でのデータ」という形となり、キャリアによって有利不利が出てしまっているのはデータに偏りがあると認めざるを得ないのだが、気軽に過去4年間というイメージで見ていただけると幸いである。また、選定した投手は各球団で今季もローテーションに入って活躍すると見込まれる45名。球団毎に人数を揃えている訳ではないし、また絶対量(先発機会)の少ない投手は統計から外させていただいた。この中に入っていない投手のデータを探りたいと思われる方は是非気軽に問い合わせて欲しい。
軸は<QSDS>と名乗ってある列の数値を基にしている。普通に考えてQS率の高い投手はDS率も比例する傾向にあるが(DSはQSの一部分という理由)、完全に比例するという法則は無いため、2つを合算した数値を基準とした。また、参考資料として4年間の先発防御率とその順位も付け加えてみた。こちらも是非、両者を比較してみていただきたい。
その他の軸については、先発(機会数)QS、DS、先発勝利、QS率、DS率と説明無用と思われるが、<勝/QS>はQS数に対して何勝しているか?という検証材料で、数値が高いほどQS(回数)が勝利数に繫がっている形となっている。いわば、運の良い投手。もう一つの<DS/勝>は、勝利数に対するDS数を表している。こちらは数値の高い投手が苦労している印象だと思っていただいて良い。当然のことながら、「好投したにも関わらず勝利投手になれなかった確率」という数値では無いので、単なる数字遊びの一種だと思って欲しい。尚、QS率、DS率共に数値の高い投手(または苦労している)10人に黄色のマーカーを、そして数値の低い(または恵まれている)投手にはグレーのマーキングを施しているので、比較検証に役立てて貰いたい。
さて、ダルビッシュのデータはQS及びDS率がいかに突出しているか、お解りいただけるだろう。NPB平均と比較するとQS率は30%以上、DS率は35%以上も引き離している。彼がこれまでに最多勝のタイトルを獲得したことが無いのが不思議だという声も多く耳にしているが、確かにDS数の割には勝利数が少ないというデータが<DS/勝>によって示されている(最も苦労している投手として)。しかし、一方で<QS/勝>は今回算出している45投手の平均値(70.01%)と遜色がなく、その点では取りわけ不運な投手にも見えない。QS数に対する勝利数で最も恵まれないのは、ヤクルトの村中恭平となっている。少なくとも筆者の目には、ダルビッシュの成績はある一点を除いて全てにおいて隙が無いと考えている。その一点こそ、最多勝タイトルを獲得する極めて重要なファクターであるか、或いは最多勝の価値がそれだけのものかの2つに1つではないかと思えるのだが。
そして若干離されはしたが、成瀬や杉内も素晴らしい。武田勝は地味な存在であるもののDS率は上から3番目。これは与四球の少なさと投球効率の良さに支えられており、彼の防御率もこうした裏付けがあるものだと解釈しておきたい。
セ・リーグでは前田健太がトップ。田中将同様、これからピークを迎える投手と思われるので今後がまた楽しみだ。その後に、館山昌平、チェン、グライシンガーと続く。データに詳しい方や、良く観戦している方にとっては納得の行く結果ではないだろうか。
ここで、「QS率は高いがDS率の低い投手」と「QS率は低いがDS率の高い投手」の見本として、金子千尋と田中将大に登場願うが、前者はQS率から見れば恵まれた投手で、後者はDS率から見れば幸運な投手となっている。ここでの分析は割愛したいが、理由を探りたい方はBaseball Labのデータを見るのも一つの手かもしれない。因みに筆者の視点では、この2人については十分修復可能な数値だろうと見ている。
また、キャリア後半のために芳しくない数値となっているベテランも数多くいる。代表的な例が山本昌で、下柳剛、石井一久などもそれに入るだろうし、渡辺俊介や三浦大輔などもこの手の数値を復旧させるには少々厳しい年齢に差し掛かってきた。反対に、唐川侑己や東野峻、由規らこれからピークを迎えようとしている若手投手はデータ的にも手探りの状態だといえる。
新天地で復活を叶えようとしている投手もいる。小林宏之や寺原隼人はもう一度先発で起用されるのを見たいと思わせるだけのレベルを示している。

そして上の表はQSと防御率の関係を示したもので、年間15試合以上先発した投手の中で一定のQS率と防御率を記録した人数を統計してみた。結果から見て、QS率70%以上は防御率2点台、QS率60%以上は防御率3.50以下の人数とほぼ同等という形となった。これらの結果も交えて最後に整理しておきたいが、年間でのQS率やDS率を見る上での物差しとして、以下の基準を提示したい。
以上、クォリティ・スタートという極めて単純な指標について解析の場を与えていただいたデータスタジアム社並びに、お付き合いいただいた読者の皆様方には改めて感謝を申し上げたい。今回の分析でキーワードとなる数字をいくつか挙げてみると、
「50.21%」・・・・・・・過去6年間のNPB平均QS率
「68.50%」・・・・・・・過去6年間のNPBQSチーム平均勝率
「46.24%」・・・・・・・過去6年間のNPB6回3自責点でのチーム平均勝率
「DS」・・・・・・・・・・・・ドミネイトスタート(好投を表す定規。QSをアップグレードしたもの)
「24.25%」・・・・・・・・過去6年間のNPB平均DS率
「78.87%」・・・・・・・・・・過去6年間のNPBチーム平均DS勝率
これらの数字は今後プロ野球観戦をする上で一定の目安となることが筆者にとっての理想である。もちろん、戦力分析はこれ以上に細部に渡って検証すべき項目がいくらでもあり、QSに強いチームという定義は今も、そして将来的にも生まれないかもしれない。UZRなど、従来のスコアブックからは測ることの出来なかった指標が世に出てくるようになった今、失点(自責点)に対する解釈がさらに進めばQSや防御率の計算方法も見直される時が来る可能性も出てくる。失点の責任分担が明らかになるということは、それだけ個人の技量を測る上で格段の進歩が期待できることになる。
一方で、20勝投手をもっとコンスタントに見てみたいという願望も持っている。現在のNPBは144試合制なので、MLBの162試合と比べてその差が18試合と縮まっている。しかし、20勝投手の輩出については6年スパンで考えてもMLBの12人に対しNPBは2008年の岩隈久志ただ一人というのが何とも淋しい。打者の3割と並んで「投手の20勝は野球選手にとってのステイタス」というのは些か古い考えかもしれないが、やはりそういったシンボリックな記録は実現可能な限り、追い求めて欲しいのが本音だ。
完投か?それとも20勝か?と聞かれれば、20勝を取りたい。
1、ダルビッシュ有の支配的な期間がスタート(4年連続防御率1点台)
2、成瀬善久、涌井秀章が本格ブレイク
3、田中将大のデビュー
最も照準を合わせたかったのは、やはりダルビッシュ。この期間でどれくらいの功績を挙げたのかどうかは、筆者でなくとも興味の沸く方が大勢おられると思う。加えて、成瀬や涌井もピーク時期に噛み合う格好となった。田中将については新人の年から活躍してはいるがこの期間がピークという印象はないので、後年改めて数値を弾き出して見た方が面白そうだ。

ということで、「ダルビッシュが支配的だった期間でのデータ」という形となり、キャリアによって有利不利が出てしまっているのはデータに偏りがあると認めざるを得ないのだが、気軽に過去4年間というイメージで見ていただけると幸いである。また、選定した投手は各球団で今季もローテーションに入って活躍すると見込まれる45名。球団毎に人数を揃えている訳ではないし、また絶対量(先発機会)の少ない投手は統計から外させていただいた。この中に入っていない投手のデータを探りたいと思われる方は是非気軽に問い合わせて欲しい。
軸は<QSDS>と名乗ってある列の数値を基にしている。普通に考えてQS率の高い投手はDS率も比例する傾向にあるが(DSはQSの一部分という理由)、完全に比例するという法則は無いため、2つを合算した数値を基準とした。また、参考資料として4年間の先発防御率とその順位も付け加えてみた。こちらも是非、両者を比較してみていただきたい。
その他の軸については、先発(機会数)QS、DS、先発勝利、QS率、DS率と説明無用と思われるが、<勝/QS>はQS数に対して何勝しているか?という検証材料で、数値が高いほどQS(回数)が勝利数に繫がっている形となっている。いわば、運の良い投手。もう一つの<DS/勝>は、勝利数に対するDS数を表している。こちらは数値の高い投手が苦労している印象だと思っていただいて良い。当然のことながら、「好投したにも関わらず勝利投手になれなかった確率」という数値では無いので、単なる数字遊びの一種だと思って欲しい。尚、QS率、DS率共に数値の高い投手(または苦労している)10人に黄色のマーカーを、そして数値の低い(または恵まれている)投手にはグレーのマーキングを施しているので、比較検証に役立てて貰いたい。
さて、ダルビッシュのデータはQS及びDS率がいかに突出しているか、お解りいただけるだろう。NPB平均と比較するとQS率は30%以上、DS率は35%以上も引き離している。彼がこれまでに最多勝のタイトルを獲得したことが無いのが不思議だという声も多く耳にしているが、確かにDS数の割には勝利数が少ないというデータが<DS/勝>によって示されている(最も苦労している投手として)。しかし、一方で<QS/勝>は今回算出している45投手の平均値(70.01%)と遜色がなく、その点では取りわけ不運な投手にも見えない。QS数に対する勝利数で最も恵まれないのは、ヤクルトの村中恭平となっている。少なくとも筆者の目には、ダルビッシュの成績はある一点を除いて全てにおいて隙が無いと考えている。その一点こそ、最多勝タイトルを獲得する極めて重要なファクターであるか、或いは最多勝の価値がそれだけのものかの2つに1つではないかと思えるのだが。
そして若干離されはしたが、成瀬や杉内も素晴らしい。武田勝は地味な存在であるもののDS率は上から3番目。これは与四球の少なさと投球効率の良さに支えられており、彼の防御率もこうした裏付けがあるものだと解釈しておきたい。
セ・リーグでは前田健太がトップ。田中将同様、これからピークを迎える投手と思われるので今後がまた楽しみだ。その後に、館山昌平、チェン、グライシンガーと続く。データに詳しい方や、良く観戦している方にとっては納得の行く結果ではないだろうか。
ここで、「QS率は高いがDS率の低い投手」と「QS率は低いがDS率の高い投手」の見本として、金子千尋と田中将大に登場願うが、前者はQS率から見れば恵まれた投手で、後者はDS率から見れば幸運な投手となっている。ここでの分析は割愛したいが、理由を探りたい方はBaseball Labのデータを見るのも一つの手かもしれない。因みに筆者の視点では、この2人については十分修復可能な数値だろうと見ている。
また、キャリア後半のために芳しくない数値となっているベテランも数多くいる。代表的な例が山本昌で、下柳剛、石井一久などもそれに入るだろうし、渡辺俊介や三浦大輔などもこの手の数値を復旧させるには少々厳しい年齢に差し掛かってきた。反対に、唐川侑己や東野峻、由規らこれからピークを迎えようとしている若手投手はデータ的にも手探りの状態だといえる。
新天地で復活を叶えようとしている投手もいる。小林宏之や寺原隼人はもう一度先発で起用されるのを見たいと思わせるだけのレベルを示している。

そして上の表はQSと防御率の関係を示したもので、年間15試合以上先発した投手の中で一定のQS率と防御率を記録した人数を統計してみた。結果から見て、QS率70%以上は防御率2点台、QS率60%以上は防御率3.50以下の人数とほぼ同等という形となった。これらの結果も交えて最後に整理しておきたいが、年間でのQS率やDS率を見る上での物差しとして、以下の基準を提示したい。
QS率 | DS率 | |
超優 | 80%以上 | 50%以上 |
優 | 70%以上 | 40%以上 |
良 | 60%以上 | 30%以上 |
可 | 50%以上 | 20%以上 |
不可 | 45%以下 | 10%以下 |
以上、クォリティ・スタートという極めて単純な指標について解析の場を与えていただいたデータスタジアム社並びに、お付き合いいただいた読者の皆様方には改めて感謝を申し上げたい。今回の分析でキーワードとなる数字をいくつか挙げてみると、
「50.21%」・・・・・・・過去6年間のNPB平均QS率
「68.50%」・・・・・・・過去6年間のNPBQSチーム平均勝率
「46.24%」・・・・・・・過去6年間のNPB6回3自責点でのチーム平均勝率
「DS」・・・・・・・・・・・・ドミネイトスタート(好投を表す定規。QSをアップグレードしたもの)
「24.25%」・・・・・・・・過去6年間のNPB平均DS率
「78.87%」・・・・・・・・・・過去6年間のNPBチーム平均DS勝率
これらの数字は今後プロ野球観戦をする上で一定の目安となることが筆者にとっての理想である。もちろん、戦力分析はこれ以上に細部に渡って検証すべき項目がいくらでもあり、QSに強いチームという定義は今も、そして将来的にも生まれないかもしれない。UZRなど、従来のスコアブックからは測ることの出来なかった指標が世に出てくるようになった今、失点(自責点)に対する解釈がさらに進めばQSや防御率の計算方法も見直される時が来る可能性も出てくる。失点の責任分担が明らかになるということは、それだけ個人の技量を測る上で格段の進歩が期待できることになる。
一方で、20勝投手をもっとコンスタントに見てみたいという願望も持っている。現在のNPBは144試合制なので、MLBの162試合と比べてその差が18試合と縮まっている。しかし、20勝投手の輩出については6年スパンで考えてもMLBの12人に対しNPBは2008年の岩隈久志ただ一人というのが何とも淋しい。打者の3割と並んで「投手の20勝は野球選手にとってのステイタス」というのは些か古い考えかもしれないが、やはりそういったシンボリックな記録は実現可能な限り、追い求めて欲しいのが本音だ。
完投か?それとも20勝か?と聞かれれば、20勝を取りたい。
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