ダルビッシュは20勝できるのか? Part.2
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1.はじめに
前回の分析では,投手の防御率と援護率から予想される勝率を計算してみました。その分析の結果を元に,ダルビッシュ選手が20勝できるかどうかを検証してみましたが,残念ながら2006年から2010年までの成績では20勝に届かないということがわかりました。では,ダルビッシュ選手が20勝するためには何が足りないのか?というのを今回は分析してみたいと思います。
分析データは,前回の分析と同様です。
2.分析
まずは,ダルビッシュ選手の2006年~2010年までの成績を表1に示します。

次に,各投手がどのような防御率と援護率であるかを分類してみました。データを表2に示します。

この表の見方は,例えば,防御率が3.00 - 4.00,援護率が3.00 - 4.00の欄の値が38となっていますが,これは,防御率が3.00 - 4.00で援護率が3.00 - 4.00の投手が38人いることを示しています。
防御率も援護率も3.00から6.00までの投手が多いことがわかります。表中で黄色に塗りつぶしてある欄は,2006年~2010年までのダルビッシュ選手の成績が該当する箇所です。
では,各欄に所属する投手の勝率はどのようになっているでしょうか?データを表3に示します。

当たり前ですが,防御率が低く,援護率が高いほど勝率は高くなります。したがって,表中の右上の欄ほど勝率が高く,左下の欄ほど勝率は低くなります。勝率だと勝ち星の数がわかりにくいので,次は平均勝利数を表4に示します。

該当する選手は2人しかいませんが,赤字の箇所が最も20勝を期待できる成績です。一方,表中で黄色に塗りつぶしてある欄は,2006年~2010年までのダルビッシュ選手の成績が該当する箇所です。
最も20勝を期待できる成績と2006年~2010年までのダルビッシュ選手の成績を比較すると,防御率は同程度でありながら,援護率が低いことがわかります。したがって,
ダルビッシュ選手が20勝するために足りないものは打線の援護である。
と,いえます。援護率があと1点加われば20勝を狙える条件が満たされます。
日本ハムは、どちらかというと攻撃力に長けたチームというよりは守備力のチームなのですが,これはそうしたチームの攻撃力だけを反映したものとはいえません。援護率が5点を超える投手は,日本ハムにもいます。
ダルビッシュ選手の援護率が低い理由は,彼が先発する試合は相手も実力のある投手を先発させてくることが多いことが考えられます。
「3連戦の初戦で相手のエースと投げ合う役割を背負うのがエース」というエース論をどこかで聞いた覚えがあるのですが,こうしたエースの役割が,ダルビッシュ選手の登板時に援護率が低くなる原因であると考えられます。
3.まとめ
というわけで,ダルビッシュ選手が20勝するためには,もう少し打線からの援護が必要であることがわかりました。しかし,相手チームのエースクラスとの対戦が多い事情を考慮すると援護率のアップを期待することは難しいかもしれません。
単純に勝ち星を増やすためであれば,強力な投手との対戦を避けるようなローテーションを組めば良いと思います。しかし,確実に勝ちを狙うというのは,日本ハムの戦略としては正しいのかもしれませんが,個人的には,楽な相手からとった20勝よりも,相手のエースと投げ合っての10勝の方が価値はあるというか,野球の試合として面白いと思います。
どちらが正しいとは一概にいえませんが,とりあえずこれまでの分析を通していえることは,勝ち星で投手の評価をすることはあまり意味がないということです。メディアでは,投手は何勝したか?という観点から語られることが多いのですが,そうした現状が変わると良いなぁと思います。
さて,ここまでは防御率と援護率と投手の勝ち星の関係を分析してきました。これは,防御率は投手側の要因,援護率は打者側の要因という位置づけだったのですが,厳密にいえば,防御率は投手だけの責任とはいえません。守備時の失点は,投手の実力と野手の守備力によって起こります。
というわけで,次回の分析は投手側の要因を,防御率ではなく,投手の実力と野手の守備力から分析していきたいと思います。
前回の分析では,投手の防御率と援護率から予想される勝率を計算してみました。その分析の結果を元に,ダルビッシュ選手が20勝できるかどうかを検証してみましたが,残念ながら2006年から2010年までの成績では20勝に届かないということがわかりました。では,ダルビッシュ選手が20勝するためには何が足りないのか?というのを今回は分析してみたいと思います。
分析データは,前回の分析と同様です。
2.分析
まずは,ダルビッシュ選手の2006年~2010年までの成績を表1に示します。

次に,各投手がどのような防御率と援護率であるかを分類してみました。データを表2に示します。

この表の見方は,例えば,防御率が3.00 - 4.00,援護率が3.00 - 4.00の欄の値が38となっていますが,これは,防御率が3.00 - 4.00で援護率が3.00 - 4.00の投手が38人いることを示しています。
防御率も援護率も3.00から6.00までの投手が多いことがわかります。表中で黄色に塗りつぶしてある欄は,2006年~2010年までのダルビッシュ選手の成績が該当する箇所です。
では,各欄に所属する投手の勝率はどのようになっているでしょうか?データを表3に示します。

当たり前ですが,防御率が低く,援護率が高いほど勝率は高くなります。したがって,表中の右上の欄ほど勝率が高く,左下の欄ほど勝率は低くなります。勝率だと勝ち星の数がわかりにくいので,次は平均勝利数を表4に示します。

該当する選手は2人しかいませんが,赤字の箇所が最も20勝を期待できる成績です。一方,表中で黄色に塗りつぶしてある欄は,2006年~2010年までのダルビッシュ選手の成績が該当する箇所です。
最も20勝を期待できる成績と2006年~2010年までのダルビッシュ選手の成績を比較すると,防御率は同程度でありながら,援護率が低いことがわかります。したがって,
ダルビッシュ選手が20勝するために足りないものは打線の援護である。
と,いえます。援護率があと1点加われば20勝を狙える条件が満たされます。
日本ハムは、どちらかというと攻撃力に長けたチームというよりは守備力のチームなのですが,これはそうしたチームの攻撃力だけを反映したものとはいえません。援護率が5点を超える投手は,日本ハムにもいます。
ダルビッシュ選手の援護率が低い理由は,彼が先発する試合は相手も実力のある投手を先発させてくることが多いことが考えられます。
「3連戦の初戦で相手のエースと投げ合う役割を背負うのがエース」というエース論をどこかで聞いた覚えがあるのですが,こうしたエースの役割が,ダルビッシュ選手の登板時に援護率が低くなる原因であると考えられます。
3.まとめ
というわけで,ダルビッシュ選手が20勝するためには,もう少し打線からの援護が必要であることがわかりました。しかし,相手チームのエースクラスとの対戦が多い事情を考慮すると援護率のアップを期待することは難しいかもしれません。
単純に勝ち星を増やすためであれば,強力な投手との対戦を避けるようなローテーションを組めば良いと思います。しかし,確実に勝ちを狙うというのは,日本ハムの戦略としては正しいのかもしれませんが,個人的には,楽な相手からとった20勝よりも,相手のエースと投げ合っての10勝の方が価値はあるというか,野球の試合として面白いと思います。
どちらが正しいとは一概にいえませんが,とりあえずこれまでの分析を通していえることは,勝ち星で投手の評価をすることはあまり意味がないということです。メディアでは,投手は何勝したか?という観点から語られることが多いのですが,そうした現状が変わると良いなぁと思います。
さて,ここまでは防御率と援護率と投手の勝ち星の関係を分析してきました。これは,防御率は投手側の要因,援護率は打者側の要因という位置づけだったのですが,厳密にいえば,防御率は投手だけの責任とはいえません。守備時の失点は,投手の実力と野手の守備力によって起こります。
というわけで,次回の分析は投手側の要因を,防御率ではなく,投手の実力と野手の守備力から分析していきたいと思います。
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Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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