投手の勝ち星の責任分担
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1.はじめに
前回の分析で,投手の勝ち星に投手(防御率)が及ぼす影響と,打線(援護率)が及ぼす影響を検討しました。その結果,どちらかというと投手の影響が大きいことがわかりましたが,打線の影響も小さくないこともわかりました。
前回の分析では,投手の影響は防御率のデータを用いたのですが,この防御率は完全に投手の責任とは言い切れません。失点するかどうかは野手の守備力の影響も考えられるからです。
そこで今回は,前回は防御率として分析したデータを,守備力の影響を受けない投手の実力と野手の守備力に分解して,もう一度分析してみたいと思います。
データは以下のものを使用します
・守備力の影響を受けない投手の実力:FIP()
・野手の守備力:UZR()
さて,ここまでつらつらと書いてきましたが,前回した分析と今回使用としている分析を図にすると以下のようになります。
まずは,前回の分析を図1-1に示します。

投手の勝率へ,防御率と援護率が及ぼす影響を検証しました。そして,今回の分析を図にすると図1-2のようになります。

前回の投手の防御率だったところを,FIPとUZRにしています。
2.分析データ
2009年から2010年までに1シーズンに40イニング以上登板した先発投手153名を分析対象としました。人数が減っているのはUZRのデータが2009年以降しかないためです。
データ数が減ってしまっているので,分析の前に前回分析した「勝率 = 防御率 + 援護率」の予測式を行い,結果を,2006年から2010年までのデータと,2009年から2010年までのデータと比較しました。データを表1に示します。

細かい数値には多少の違いはありますが,数値の示す方向はほとんど変わりがありません。したがって,今回のデータは2年分と少ないですが,5年分のデータと同じような傾向を持っていることが確認できました。
3.投手の実力・守備力・打線の援護と投手の勝ち星
では,投手の実力(FIP)と守備力(UZR)と打線の援護(援護率)が投手の勝ち星に及ぼす影響を分析したいと思います。
・投手の勝率 = FIP + UZR + 援護率
という予測式を立てて分析してみました。分析の結果以下のような予測式となりました。
・投手の勝率 = (-0.111 × FIP) + (0.090 × UZR) + (0.001 ×援護率)
この予測式で表されている係数は,FIP・UZR・援護率の平均がそれぞれ異なるのでそのまま比較することができません。この係数を調整した値を表3に示します。

このデータを図示したものを図2-1に示します。

この図で大まかな関係性をつかんでいただけると助かります。数値の絶対値が大きいほど影響力が大きいことを示します。FIPが負の値になっているのは,FIPが低いほど勝率が高いことを示します。
さらに,これらのデータによって勝率の何%が予測できたか?というデータを図2-2に示します。

分析の結果,FIPと援護率の割合は30%弱とほぼ変わらない結果となりました。一方,守備力を示すUZRはわずか5%強となっています。これらのデータから,投手の勝ち星に,投手の実力と守備力,打線の援護が及ぼす影響は,
・投手の実力と打線の援護がその影響力の大半を占める。
・投手の実力と打線の援護の影響力には大差がない(同程度)
・影響力が低いとはいえ,守備力も影響しないわけではない
ということがわかりました。防御率と援護率を比較した時には,防御率の方がやや影響力が強かったのですが,そのやや強い部分は守備力だったのかもしれません。
4.まとめ
以上,投手の勝ち星への影響を,投手・守備・打線の3点から検証してみました。結果としては,投手・と打線の影響力はほぼ同等でした。守備力は+α程度の影響力でしたが,長いシーズンを考えると,無視できる影響力ではありません。
そして一番の問題は,投手の能力として扱われることの多い勝ち星ですが,内訳を見れば,投手が自分で何とかできるのはそう多くないということです。伝統的な評価基準ではありますが,このデータを見る限りは打撃成績における「打点」と同じく,投手の評価基準としては適していないように思えます。
前回の分析で,投手の勝ち星に投手(防御率)が及ぼす影響と,打線(援護率)が及ぼす影響を検討しました。その結果,どちらかというと投手の影響が大きいことがわかりましたが,打線の影響も小さくないこともわかりました。
前回の分析では,投手の影響は防御率のデータを用いたのですが,この防御率は完全に投手の責任とは言い切れません。失点するかどうかは野手の守備力の影響も考えられるからです。
そこで今回は,前回は防御率として分析したデータを,守備力の影響を受けない投手の実力と野手の守備力に分解して,もう一度分析してみたいと思います。
データは以下のものを使用します
・守備力の影響を受けない投手の実力:FIP()
・野手の守備力:UZR()
さて,ここまでつらつらと書いてきましたが,前回した分析と今回使用としている分析を図にすると以下のようになります。
まずは,前回の分析を図1-1に示します。

投手の勝率へ,防御率と援護率が及ぼす影響を検証しました。そして,今回の分析を図にすると図1-2のようになります。

前回の投手の防御率だったところを,FIPとUZRにしています。
2.分析データ
2009年から2010年までに1シーズンに40イニング以上登板した先発投手153名を分析対象としました。人数が減っているのはUZRのデータが2009年以降しかないためです。
データ数が減ってしまっているので,分析の前に前回分析した「勝率 = 防御率 + 援護率」の予測式を行い,結果を,2006年から2010年までのデータと,2009年から2010年までのデータと比較しました。データを表1に示します。

細かい数値には多少の違いはありますが,数値の示す方向はほとんど変わりがありません。したがって,今回のデータは2年分と少ないですが,5年分のデータと同じような傾向を持っていることが確認できました。
3.投手の実力・守備力・打線の援護と投手の勝ち星
では,投手の実力(FIP)と守備力(UZR)と打線の援護(援護率)が投手の勝ち星に及ぼす影響を分析したいと思います。
・投手の勝率 = FIP + UZR + 援護率
という予測式を立てて分析してみました。分析の結果以下のような予測式となりました。
・投手の勝率 = (-0.111 × FIP) + (0.090 × UZR) + (0.001 ×援護率)
この予測式で表されている係数は,FIP・UZR・援護率の平均がそれぞれ異なるのでそのまま比較することができません。この係数を調整した値を表3に示します。

このデータを図示したものを図2-1に示します。

この図で大まかな関係性をつかんでいただけると助かります。数値の絶対値が大きいほど影響力が大きいことを示します。FIPが負の値になっているのは,FIPが低いほど勝率が高いことを示します。
さらに,これらのデータによって勝率の何%が予測できたか?というデータを図2-2に示します。

分析の結果,FIPと援護率の割合は30%弱とほぼ変わらない結果となりました。一方,守備力を示すUZRはわずか5%強となっています。これらのデータから,投手の勝ち星に,投手の実力と守備力,打線の援護が及ぼす影響は,
・投手の実力と打線の援護がその影響力の大半を占める。
・投手の実力と打線の援護の影響力には大差がない(同程度)
・影響力が低いとはいえ,守備力も影響しないわけではない
ということがわかりました。防御率と援護率を比較した時には,防御率の方がやや影響力が強かったのですが,そのやや強い部分は守備力だったのかもしれません。
4.まとめ
以上,投手の勝ち星への影響を,投手・守備・打線の3点から検証してみました。結果としては,投手・と打線の影響力はほぼ同等でした。守備力は+α程度の影響力でしたが,長いシーズンを考えると,無視できる影響力ではありません。
そして一番の問題は,投手の能力として扱われることの多い勝ち星ですが,内訳を見れば,投手が自分で何とかできるのはそう多くないということです。伝統的な評価基準ではありますが,このデータを見る限りは打撃成績における「打点」と同じく,投手の評価基準としては適していないように思えます。
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野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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