フライ分析
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1.はじめに
前回の分析でフライの飛距離とチームの得点力との関係を検証しました。その結果,得点力の高いチームは,一般に外野フライと呼ばれる距離へのフライが多いことがわかりました。また,得点力が高いからといって長距離のフライが多いわけではないこともわかりました。
では,フライによってもたらされる得点力はどのようにしてもたらされるのでしょうか?
今回の分析では,その辺りを探りつつ,前回は距離の面からでしか分析できなかったのでゾーンを含んだ分析をしてみたいと思います。
分析対象としたのは前回のコラムで分析した4チームです。
・横浜(2009年,497得点)
・阪神(2010年,740得点)
・横浜(2010年,521得点)
・ロッテ(2010年,708得点)
これらのチームのフライの飛んだゾーンを分析して行きたいと思います。
※本当は他のチームの分析も掲載したいのですが,このやり方の問題点は紙面を喰うことで,全部載せるにはスペースが足りません……。
2.フライがヒットになる確率
各チームのデータを見ていく前に,全チームのデータを対象に,各ゾーンでフライがアウトになる確率を示しておきます。データを表1に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図1に示します。

この図を見ていただければわかると思いますが,フライがヒットになる確率が高いゾーンは,距離5(外野守備位置の手前辺り)と距離8(フェンス際)であることがわかります。このデータを下敷きにして,先ほどの4チームのフライの飛んだゾーンを見て行きたいと思います。
3.各チームのフライが飛んだゾーン
まずは, 2009年の横浜のデータを表2-1に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-1に示します。
※たくさんボールが飛んだゾーンに色をつけていますが,色のついていないところにもボールは飛んでいます。あくまで目安としてみてください。正確な数値は表のデータを参照してください。

最も得点が少なかった2009年の横浜がこんな感じだったということで,次は最多得点の2010年阪神のデータを表2-2に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-2に示します。

2009年の横浜と比較すると,2010阪神のデータはセンター方向のフライの数が多い印象です。
次は,2010年の横浜のデータを表2-3に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-3に示します。

2009年の横浜と比較すると,センター方向へのフライが増えた気がします。とはいえ,阪神と比較すると全体に少ない印象です。
最後に,2010年のロッテのデータを表2-4に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-4に示します。

2009年の横浜と比較すると,距離7(奥から2番目のゾーン)の打球が多いことがわかります。
4.まとめ
以上のデータより,フライの飛んだゾーンと得点力の関係を考えてみたいと思います。さて,最初に見たヒットになり易いゾーンは,距離5(外野守備位置の手前辺り)と距離8(フェンス際)でした。
距離5(外野守備位置の手前辺り)については,ここにフライをたくさん打っているチームはほとんどありません。また,距離8(フェンス際)についても,2010年のロッテが多いくらいでチーム間での差はさほどありません。
4チームのデータを比較して差が大きいのは,距離7(奥から2番目のゾーン)ではないかと思います。特に2010年のロッテはここへの打球が多くなっています。しかし,図1を見てもらうとわかりますが,この距離7(奥から2番目のゾーン)はヒットになる確率が低いゾーンです。そのようなゾーンにたくさん打ったチームの得点力が高いということは,フライによる得点は,ヒットになり易いゾーンにたくさん打つことによってもたらされるわけではなく,たとえヒットになる確率は低くても,そこにたくさん打ち込むことでヒットの数を増やすことによるものである可能性が考えられます。
とはいえ,2009年の横浜ではセンター方向へのフライが少ないことも注目すべきかも知れません。センター方向を狙って,多少左右に打球が飛べば,左中間と右中間の長打コースがありますので,ここのゾーンの利用の仕方が得点力の差になった可能性も考えられます。
まとめると,フライと得点力の関係はヒットになり易いゾーンに効率よく打球を飛ばすよりも,とにかくたくさんの打球を外野に飛ばすことが得点力の高さに結びつきそうです。打球の角度や早さなども影響することが予想されますが,残念ながらそこまでのデータは今のところ無いので,その辺りは将来的に測定できるようになることを期待しつつこの稿を締めくくらせていただきます。
前回の分析でフライの飛距離とチームの得点力との関係を検証しました。その結果,得点力の高いチームは,一般に外野フライと呼ばれる距離へのフライが多いことがわかりました。また,得点力が高いからといって長距離のフライが多いわけではないこともわかりました。
では,フライによってもたらされる得点力はどのようにしてもたらされるのでしょうか?
今回の分析では,その辺りを探りつつ,前回は距離の面からでしか分析できなかったのでゾーンを含んだ分析をしてみたいと思います。
分析対象としたのは前回のコラムで分析した4チームです。
・横浜(2009年,497得点)
・阪神(2010年,740得点)
・横浜(2010年,521得点)
・ロッテ(2010年,708得点)
これらのチームのフライの飛んだゾーンを分析して行きたいと思います。
※本当は他のチームの分析も掲載したいのですが,このやり方の問題点は紙面を喰うことで,全部載せるにはスペースが足りません……。
2.フライがヒットになる確率
各チームのデータを見ていく前に,全チームのデータを対象に,各ゾーンでフライがアウトになる確率を示しておきます。データを表1に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図1に示します。

この図を見ていただければわかると思いますが,フライがヒットになる確率が高いゾーンは,距離5(外野守備位置の手前辺り)と距離8(フェンス際)であることがわかります。このデータを下敷きにして,先ほどの4チームのフライの飛んだゾーンを見て行きたいと思います。
3.各チームのフライが飛んだゾーン
まずは, 2009年の横浜のデータを表2-1に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-1に示します。
※たくさんボールが飛んだゾーンに色をつけていますが,色のついていないところにもボールは飛んでいます。あくまで目安としてみてください。正確な数値は表のデータを参照してください。

最も得点が少なかった2009年の横浜がこんな感じだったということで,次は最多得点の2010年阪神のデータを表2-2に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-2に示します。

2009年の横浜と比較すると,2010阪神のデータはセンター方向のフライの数が多い印象です。
次は,2010年の横浜のデータを表2-3に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-3に示します。

2009年の横浜と比較すると,センター方向へのフライが増えた気がします。とはいえ,阪神と比較すると全体に少ない印象です。
最後に,2010年のロッテのデータを表2-4に示します。

このデータをフィールド上で色分けしたものを図2-4に示します。

2009年の横浜と比較すると,距離7(奥から2番目のゾーン)の打球が多いことがわかります。
4.まとめ
以上のデータより,フライの飛んだゾーンと得点力の関係を考えてみたいと思います。さて,最初に見たヒットになり易いゾーンは,距離5(外野守備位置の手前辺り)と距離8(フェンス際)でした。
距離5(外野守備位置の手前辺り)については,ここにフライをたくさん打っているチームはほとんどありません。また,距離8(フェンス際)についても,2010年のロッテが多いくらいでチーム間での差はさほどありません。
4チームのデータを比較して差が大きいのは,距離7(奥から2番目のゾーン)ではないかと思います。特に2010年のロッテはここへの打球が多くなっています。しかし,図1を見てもらうとわかりますが,この距離7(奥から2番目のゾーン)はヒットになる確率が低いゾーンです。そのようなゾーンにたくさん打ったチームの得点力が高いということは,フライによる得点は,ヒットになり易いゾーンにたくさん打つことによってもたらされるわけではなく,たとえヒットになる確率は低くても,そこにたくさん打ち込むことでヒットの数を増やすことによるものである可能性が考えられます。
とはいえ,2009年の横浜ではセンター方向へのフライが少ないことも注目すべきかも知れません。センター方向を狙って,多少左右に打球が飛べば,左中間と右中間の長打コースがありますので,ここのゾーンの利用の仕方が得点力の差になった可能性も考えられます。
まとめると,フライと得点力の関係はヒットになり易いゾーンに効率よく打球を飛ばすよりも,とにかくたくさんの打球を外野に飛ばすことが得点力の高さに結びつきそうです。打球の角度や早さなども影響することが予想されますが,残念ながらそこまでのデータは今のところ無いので,その辺りは将来的に測定できるようになることを期待しつつこの稿を締めくくらせていただきます。
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Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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