HOME > コラム一覧 > コラム

コラム

阪神・藤川投手のフォークボール

時光順平 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/07/13(水) 10:00rss

1.はじめに
 
 前回の分析では、藤川投手のストレートについて分析をしていった。藤川投手のストレートが毎年どのくらいの確率で打たれるのかを見ていったところ、過去5年間では2008年が最も良く、2010年が最も悪いということが分かった。年々ストレートの勢いが落ちてきていると思われる中で、藤川投手のもう1つの持ち球であるフォークが重要であると前回記述した。そこで今回は、藤川投手のフォークについて分析していこう。
 
 
2.フォークの成績
 
 まず、藤川投手のフォークの成績について見ていこう。まずは、前回も掲載した被打率と三振数である。
 


被打率は、2010年こそ.211であったが年々被打率が低くなっている。過去5年で最も良い成績である、2008年は被打率、奪三振数のいずれでも良い成績を収めている。次に、フォークでの空振り率を見てみる。

 


この成績でもやはり、2008年が最も良く約30%であり、2010年が最も悪く約23%であった。最後に、追い込む前後でのフォークの投球割合を見てみる。



2008年以外は、フォークよりストレートの割合が大きいが極端に偏っている感じではない。
ここまでフォークの成績を見ていったが、ストレート同様に2008年の成績が一番良い感じがある。表2.3を見ても、1番成績の良い2008年だけストレートよりフォークの割合が高い。では、ストレート同様に藤川投手のフォークは、年度ごとにどのくらいの確率で抑えていくか見ていこう。
 
 
3.フォークで抑える確率 
 
 では、藤川投手のフォークはどのくらいの確率で打者を抑えることが出来るのか見ていこう。ここでの分析方法は、前回と同様にロジスティック回帰分析である。今回も、フォークの球速とフォークが投げられたコースから、どのくらいの確率で抑えることが出来るのかを推測する。変数は、球速、コース(高低)、コース(左右)である。なお、コース番号表は前回のコラムの表3.1に掲載している。3つの変数を使用してロジスティック回帰分析を行うと、以下のような結果になった。


 
今回は、135キロのフォークを投げたと仮定している。表3.1から各年の平均をその年のフォークで抑える確率とすると、2006年から2010年のフォークで抑える確率の推移は以下のようになる。



 フォークでは、被打率が過去5年間で1番低かった2009年が最も良く約83%であった。逆に、1番悪かったのは2010年の約72%であった。
 
 フォークの場合、高めを狙って投げるということはなくほとんどが低めを狙って投げている。そこで、低めのフォークで抑える確率を見てみよう。コース番号で言うと3、6、9、14、16、18、20、24、25である。
 


 先ほどより数値が高くなっていることが分かる。低めに関しても、2009年が1番良く2010年が1番悪かった。1番成績が良かった2008年も2009年と同じような成績であった。  
 
 では、低めに関してもう少し細かく見ていこう。今度は、低めのストライクゾーンと低めのボールゾーンを比較してみる。コース番号は、低めのストライクゾーンが3、6、9。低めのボールゾーンは、前回よりコースを絞って16、18、20とした。



 ストレートとは逆に、フォークではボールゾーンの方が抑える確率が高くなっている。先ほどまでは、いずれも2009年のフォークが1番良い値であったが、ここでは2008年のボールゾーンへのフォークが1番良い値であった。
 
 ここまで見るとフォークに関しては、2009年のフォークが1番良いということが数値として表れている。1番成績が良かった2008年も2009年とあまり変わらず良い結果が出ている。逆に、2010年がストレート同様に最も悪い結果になった。
 
 
4.フォークで空振りを取れる確率

 フォークを投げる狙いの多くは、空振りを取れることであろう。そこで、藤川投手のフォークは、どのくらいの確率で空振りを取れるかを見ていこう。まずは、フォークで空振りを取れる確率である。


 
 ここで最も良かったのは、2007年であった。意外にも1番良いと思われていた2009年は約16%であった。2007年は藤川投手が1シーズンの最多セーブ(46セーブ)を記録した年である。フォークで空振りが取れることが、この記録が達成された要因の1つと言えるだろう。次に、低めのコースについて見ていく。
 


 ここでは、2008年が1番良く37%であり1番悪いのが2010年の約26%であった。最後にゾーン別で見ていこう。コース番号で言うと低めのストライクゾーンが3、6、9。低めのボールゾーンは今回もよりコースを絞り16、18、20とした
 
 


 抑える時と同様に、ストライクゾーンよりボールゾーンの確率が高いことが分かる。ストライクゾーンでは、わずかではあるが2007年が1番良く、ボールゾーンでは2008年が突出している。フォークに関しては、打者を打ち取るというよりもフォークで空振りを奪うことの方が、藤川投手の成績には影響してくると思われる。

 
5.まとめ
 
 今回は藤川投手のフォークについて見ていった。ストレートの時と同様に、2008年は良い結果が出た。ストレートが悪かったと思われる2009年も良い結果が出たと言って良いだろう。2009年と2010年のストレートは、あまり差がなかったがフォークでは差が出た。つまり2009年は、ストレートが良くなかった分、フォークで抑えたということになるだろう。
 
 ストレートの場合は、1番良かった時期に戻ることは年齢を考えると難しいと思われる。フォークに関してはストレートに比べると技術面の比重が大きく、ボールの威力を維持できる割合が高いのではないだろうか。フォークの力を維持出来れば、衰えの見えるストレートを補完出来る可能性が高まる。これまではストレートで打者を圧倒し続けてきたが、今後はフォークボールの重要性が増していくのではないだろうか。

コメント

名前:
メールアドレス:
コメント:
評価:

画像の英字5文字を入力して下さい。:

トラックバック一覧

Baseball Lab「Archives」とは?
 
Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。

野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。