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今シーズンの阪神・藤川投手

時光順平 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/07/20(水) 10:00rss

1.はじめに
 
 2回にわたり、藤川投手のストレートとフォークボールを見ていった。ストレートに関しては、年々打者に対応されてきているという印象であり、フォークに関しては昨年の2010年が最も悪いということであった。スレートを以前のようなものにするのは、年齢を考えると難しい。そこで、ストレートよりも技術面の比重が高いフォークが今後、重要となってくると記述した。では、2011年の藤川投手のストレート、フォークはどのくらいの確率で抑えているだろうか。今回は、今シーズンの藤川投手のストレートとフォークについて見ていこう。
 
 
2.ここまでの成績
 
 まず、ここまでの藤川投手の基本的な成績を見てみよう。これから示すデータは7月7日までの成績である。


 
 ここまで、23試合に登板し17セーブを挙げ防御率は0.84と好成績をあげていると言って良いだろう。では次に、球種別の成績を見ていこう。ここでは、ストレートとフォークの三振数、被打率、投球割合を見ていく。



 今シーズンはここまで、ストレートとフォークで同じくらいの三振を奪っている。被打率も1割台である。特に、フォークの被打率は.118と良い数字である。投球割合では、フォークの割合が30%を超えている。
 
 ここまでの成績を見ていると、1番成績が悪かった昨年よりは調子が良いと思われる。投球内容を見ても、今まではストレート中心という感じが強かったが今年は、フォークも多く投げている感じがうかがえる。では、これまでと同様に今年のストレートとフォークの抑える確率をデータ(7月7日まで)から推測していこう。
 

3.今年のストレートとフォーク
 
 分析方法や分析の仕方は前回、前々回と同じである。まず、ストレート、フォークで抑える確率を見ていこう。今回は、シーズンが途中であるため2011年のデータが過去5年間よりも少ない。また、それぞれの球種で打ち取ったコースにもまだ偏りがある。ここでの確率は、全てのコースの確率を25で割った値である。実際に打ち取ったコースの確率は精度よく推測出来るが、1度も投げていないコースの場合は低く推測されてしまう可能性がある。そのため、まだ1度も投げていないコースの確率が平均を下げてしまう可能性がある。そこで、2011年を含めた6年分のデータ同じ様にみるために、データの補間作業を行った。

 今回補完作業を行った項目は、「ストレートで抑える確率」、「フォークで抑える確率」、「フォークで空振りを取る確率」の3つである。他の項目は、コースを絞っているため投げていないコースがほとんどないため補間は行わなかった。




 赤い線は、昨年から今年の推移を表している。ストレートに関しては、ここまで良い結果が出ている。1番良かった2008年よりも高い結果が出ている。フォークに関しても良い結果が出た。1番良かった2009年まではいかなかったが、昨年と比べると10%近く上がっている。では、次に各球種をコース別に見ていこう。まずは、高めのストレートと低めのストレートである。
 


 
 高めのストレートでは、全てのゾーン、ボールゾーン、ストライクゾーンのいずれも90%以上という良い結果が出た。低めに関しても、1番良かった2008年とまではいかないが、2008年に近い結果が出た。次に、フォークについて見ていく。フォークは高めに狙って投げることはないので低めを見ていく。



 フォークに関しても、ストレート同様に良い結果が出たと言えるだろう。1番良かった2008年のような結果に近い。ストライクゾーンに関しては昨年よりも13%も高い結果となった。最後に、フォークで空振りを取る確率を見ていく。ここでは、補間作業を行った結果である。



 ここでは、過去5年間と比べると1番良い結果が出た。昨年と比べても10%以上、上がっている事が分かる。次に、低めのコースをゾーン別にて見よう。



 こちらも、昨年よりは良い結果となった。各ゾーンで昨年より10%前後高くなっている。特に全ゾーンでは、1番良かったとされている2008年に近い結果が出た。
 
 ストレートに関しては、低めのストレートで抑えられるか。フォークに関してはいかに空振りが取れるかが成績に影響してくると以前に記述した。今年の結果を見てみるとストレート、フォーク共に良い結果が出ておりそのため、ここまで良い成績を収めることが出来ているのだろう。
 
 
 
4.まとめ
 
 今回は、今年の藤川投手のストレートとフォークを見ていった。ここまでは、ストレート、フォーク共に良い結果となった。1番良かったと思われる2008年の結果に近い項目もあり、成績もここまでは申し分ない結果である。しかし、今年から統一球を導入し、いわゆる「投高打低」のシーズンと言われている。本来の力が発揮できない打者が多い中で、今シーズンの成績と過去の成績と比較する事は少し難しい部分があるのかもしれない。
 
 今までの藤川投手と言ったら、ストレートで勝負するというイメージが強い。しかし、そのストレートが衰えているのは、以前の分析結果からも数値としてあらわれている。衰えを感じるストレートを補うために、もう1つの持ち球であるフォークの重要性が増してくると前回記述した。つまり、ストレートだけでなくフォークとのコンビネーションで抑えることが重要になっていくだろう。今シーズンの藤川投手の成績を見てみると、フォークを多投している事がデータから分かる。フォークの投球割合を見てみると過去5年間平均では、約20%であったが、ここまでは約30%である。また、三振数もストレート同じくらいであり、被打率に関してはストレートよりも低い。よって、ここまではストレートとフォークのコンビネーションで抑えていると言っても良いだろう。今後もこのような形で打者を抑えていくことが出来れば、藤川投手の新しいスタイルが確立されるかもしれない。
 

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