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中継ぎ投手~Part1

時光順平 [ 著者コラム一覧 ]

投稿日時:2011/08/01(月) 10:00rss

1.はじめに
 
 今回は、中継ぎ投手に注目していこうと思う。昔は、先発完投型の投手が多くあまり中継ぎ投手への注目がなかった。しかし近年では先発投手がローテーション化されている。それにより、先発は完投出来る力がありながらも途中で降板しリリーフ陣に任せるというケースが出てくるようになった。つまり、救援投手の登板機会が増えてきていることになる。今では中継ぎ陣の頭文字をもじって呼ばれるようになった。2005年阪神タイガースの「JFK」(ジェフ・ウィリアムス、藤川、久保田)や、2010年ソフトバンクのSBM48(摂津、ブライアン・ファルケンボーグ、馬原、甲藤)などである。これらの投手にはいろいろなタイプの投手がいる。そこで今回は、昨年の中継ぎ投手から、中継ぎ投手にはどのようなタイプの投手がいるのかを見ていこう。
 
 
2.中継ぎ投手の球種割合
 
 では、まず昨シーズン中継ぎ投手として活躍した投手の球種割合を見ていこう。今回の対象の投手としては、40試合以上リリーフとして登板し、各チームのホールドポイントが高い選手を中心に選出した。表2.1と表2.2は対象投手の球種割合と球種数である。


 








 
 表を見ると、ストレートの割合が高い投手が多いが中にはストレートより変化球の割合が多い投手もいる。では、これらの投手を球種割合からタイプ別に分けていこう。
 
 
3.中継ぎ投手のグループ分け
 
 ここでは、先ほどの球種割合から中継ぎ投手をグループ分けしていく。ここでの分析方法はクラスター分析である。クラスター分析とは、データ間の距離を求め、たくさんのデータからいくつかのグループに分ける分析方法である。今回は、6つのグループに分けることが出来た。グループに分けた結果が表3.1である。
 

 
 ここで、各グループの特徴を見ていく。
第1グループ・・・ストレートとシンカーが中心である。
第2グループ・・・ストレートとスライダーとチェンジアップが中心である。
第3グループ・・・ストレートとスライダーが中心であり大体割合が同じ。
第4グループ・・・ストレートとスライダーが中心でありストレートが多め。
第5グループ・・・ストレートとスライダーとシュートが中心である。
第6グループ・・・ストレートとフォークが中心である。
 

ほとんどの投手がストレート中心であり1つもしくは2つの変化球を中心に打者を抑えていくと考えられる。ここで各グループそのグループの特徴から
第1グループ・・・シンカー型
第2グループ・・・スライダー・チェンジアップ型
第3グループ・・・スライダー型
第4グループ・・・ストレート中心のスライダー型。
第5グループ・・・スライダー・シュート型
第6グループ・・・フォーク型
と呼ぶことにする
では、ここでもうひとつデータを見ていく。表3.2から表3.8は各グループの追い込んでからの球種割合である。



 シンカー型の3投手は追い込んでから、それぞれ違った投球をしていることが分かる。小山は、追い込んでからはシンカーが決め球だと考えられる。摂津と増渕は、追い込んでからはストレートを多投しているが増渕は、ストレートの次にシンカーではなくスライダーを多投している。




 スライダー・チェンジアップ型の4投手は追い込んでから、ストレートを多投している事が分かる。大島の場合は4人の中ではストレートの割合が低いが、その分チェンジアップを多投している。大島の決め球の1つは、チェンジアップと考えられるだろう。
 



 スライダー型の5投手は、追い込んでからもストレートとスライダーが中心になっていることが分かる。山口は、この他にチェンジアップも多投している事が分かる。

 


 


 ストレート中心のスライダー型の6投手は、追い込んでからもストレートが中心である。横山と清水は、スライダーよりもフォークの割合が全体の時よりも高い。この2投手は、追い込んでからはフォークが決め球の1つになると考えられるだろう。
 


 



 スライダー・シュート型の7投手は、スライダーの割合が高い、梅津・片山・長田・甲藤・真田とチェンジアップの割合が高い香月、フォークの割合が高い久保の3つに分かれた。特に、久保は追い込んでから半分がフォークである。つまり、久保の決め球は、フォークと考えられる。




 フォーク型の10投手は、追い込んでからもストレートとフォークが中心である。これらの投手は追い込んだら、ストレートとフォークで三振を奪いに行くタイプの投手であると考えられる。
 
 
4.まとめ
 
 今回は、中継ぎ投手についてみていった。クラスター分析を用いてタイプ別に分けたところ6つのタイプに分かれた。分かれた結果にも外れ値がほとんどなく、しっかりと分けられたと思う。ここで、昨年リーグ優勝したソフトバンクの3人の投手タイプを見てみよう。今回ソフトバンクからは、ファルケンボーグ、摂津、甲藤の3人を挙げた。それぞれのタイプは

ファルケンボーグ・・・フォーク型
摂津・・・シンカー型
甲藤・・・スライダー・シュート型

であった。
 ソフトバンクの場合、ファルケンボーグはストレートとフォークで三振を奪いにいくタイプであろう。甲藤は、シュートで詰まらせたり、スライダーで空振りを取って打ち取るタイプであると考えられる。そして、摂津はオーバースローから投げるシンカーを武器に打者を打ち取るタイプであると考えられる。この3人は、特徴が1人1人違うので対戦する打者も誰が出てくるかで考えを変えなければならない。
 
  昨年はこの3人の活躍もありリーグ優勝したが、クライマックスシリーズで敗退してしまった。では、強いリリーフ陣とは何か。強いリリーフ陣とはどのようなものなのか。次回はこのテーマについて考えて見ようと思う。
 

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