スカウトの価値~Part2
岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]
引き続きスカウトの価値について検討していきます。前回は広島のシュールストロム駐米スカウトを中心に話をしましたが、今回は広島と予算規模が近いヤクルト・日本ハム・西武の3球団を比較対象にしてシュールストロム・スカウトの価値を考えていきましょう。基本的な考え方はスカウトの価値~Part1を参考にしてください。
1.ヤクルトの外国人獲得評価
外国人獲得に定評のあるヤクルトの評価から始めましょう。下の表は過去5年間にヤクルトが獲得した外国人選手の1年目の年俸とWin Shares(WS)になります。


ヤクルトの外国人獲得はかなり優秀なことがわかります。ガイエル・グライシンガー・林・デントナ・ホワイトセルといった面々は、年俸に対してチームへの貢献が非常に高いです。契約金が高めで全く働けなかったリオス・バレットらのマイナスを差し引いても海外スカウトがもたらした利益は非常に大きいです。1WSあたりの年俸717万円は広島のシュールストロム駐米スカウトと同等の成績といえます。
さらに選手の活躍を金額に変換して評価していきましょう。野手・投手WSに12球団の1WSあたりの平均年俸(野手1123万円、投手1680万円)を掛け合わせることで、活躍から見込まれる想定年俸を求めます。この想定年俸から実際の年俸を引いた差額を、海外スカウトの目利きを評価する一つの物差しとしています。ここ5年間だと、ガイエル・グライシンガー二人を獲得した2007年(二人合わせて3.8億の利得を得た計算)が、最も利得を稼いでいます。そのほかの年度も大きなマイナスを計上することはなく、ここ5年の合計差額が4.56億と外国人選手をうまく登用しています。活躍を金額に変換してもヤクルトの海外スカウトは優秀です。
2.日本ハムの外国人獲得評価
続いて日本ハムの外国人獲得を見ていきましょう。同じように年俸とWin Sharesと活躍を金額に変換したデータになります。

編成面ではかなり優れている日本ハムですが、外国人選手の獲得に関してはやや広島・ヤクルトに水をあけられています。スレッジ・ケッペル・(ウルフ)を除くと失敗したケースの方が多かったと見ることもできそうです。ただし、昨年のケッペル・ウルフ両投手の獲得は明るい兆しと言え、全体の差額はマイナス0.7億程度になっています。比較が広島・ヤクルトだと見劣りしてしまうかもしれませんが、1WSあたり1561万円は獲得にリスクが伴う外国人選手としてはそれほど悪い数字ではありません。
3.西武の外国人選手獲得評価
同じように西武についても見ていきましょう。同じように年俸とWin Sharesと活躍を金額に変換したデータになります。


西武はブラゼル・ボカチカ・ブラウンなどまずまずの成績を残す選手が多く、失敗したケースでも全くチームの戦力にならなかった選手がいなかったのが特徴です。2007年のジョンソン選手の扱いをどうするかで西武の評価は割れそうですが、加えたとしても収支はわずかなマイナスで、日本ハム同様まずまずの運用実績があります(1WSあたり1540万円と日本ハムとほぼ同額。ジョンソン投手がいなかった場合は1WSあたり911万円、差額の合計が2.7億のプラスになります)。松坂投手のポスティングフィーに対して、レッドソックスがジョンソンを送り込んだなどの見方もあり、スカウトの意思と別の力が働いた可能性は考慮したいところです。
4.海外スカウトの評価について
最後に広島以外の11球団の新外国人選手のまとめと、シュールストロム駐米スカウトが獲得した選手の評価です。


今回取り上げたヤクルト・日本ハム・西武以外にも、中日やロッテは1年目の外国人選手獲得を上手に行っています。広島以外の11球団を見ても、シュールストロム駐米スカウトは素晴らしい実績を残しています。今季獲得した、サファテ投手は、シュールストロム・スカウトの評価がかなり高いだけに期待したいところです。
各チームの編成は、スカウトが連れてきた外国人選手はある程度活躍すると踏んでチーム作りを進めるケースが多いでしょう。それゆえに1年目の成績を基準にすることで、ある程度スカウトの目利き(能力)を数値化することは可能です。今回は金銭に変換しての評価でしたが、支払い年俸幅(~5000万、5001~1億、1億以上~等でクラス分けしてそれぞれの活躍割合を算出)でクラス分けした上で、外国人選手の活躍する割合を比較する方法もありそうです。成功率と利益の2軸で評価することで、スカウト能力の可視化を一段と進めていけるかもしれません。「一発当てて大きな利益をもたらすスカウト」や「コンスタントに当てる割合の高いスカウト」など、タイプ分けが可能になるかもしれません。
この手法では選手育成に時間のかかる国内スカウトの評価は難しいでしょう。ドラフトでは選手がチームに貢献できるまで一定期間を要する場合が多く、さらにスカウト・育成(コーチ)の貢献した割合がわかりません。その点で海外スカウトは評価の基準が明確で、データで判断出来る余地が多くありそうです。また、今回のデータはWin Sharesを基にしましたが、控え選手を基準にしたWARで算出した方が良い可能性もありますし、外国人選手の年俸・成績を基準にしても良いかもしれません。このあたりはどの基準が良いのか今後の課題としたいところです。
選手を評価してきたスカウトが、評価される側になるのは違和感を感じるかもしれません。しかし、今後はスカウトだけでなく、フロント全体がこのような方法で評価されるのも遠い未来ではないかもしれません。
1.ヤクルトの外国人獲得評価
外国人獲得に定評のあるヤクルトの評価から始めましょう。下の表は過去5年間にヤクルトが獲得した外国人選手の1年目の年俸とWin Shares(WS)になります。


ヤクルトの外国人獲得はかなり優秀なことがわかります。ガイエル・グライシンガー・林・デントナ・ホワイトセルといった面々は、年俸に対してチームへの貢献が非常に高いです。契約金が高めで全く働けなかったリオス・バレットらのマイナスを差し引いても海外スカウトがもたらした利益は非常に大きいです。1WSあたりの年俸717万円は広島のシュールストロム駐米スカウトと同等の成績といえます。
さらに選手の活躍を金額に変換して評価していきましょう。野手・投手WSに12球団の1WSあたりの平均年俸(野手1123万円、投手1680万円)を掛け合わせることで、活躍から見込まれる想定年俸を求めます。この想定年俸から実際の年俸を引いた差額を、海外スカウトの目利きを評価する一つの物差しとしています。ここ5年間だと、ガイエル・グライシンガー二人を獲得した2007年(二人合わせて3.8億の利得を得た計算)が、最も利得を稼いでいます。そのほかの年度も大きなマイナスを計上することはなく、ここ5年の合計差額が4.56億と外国人選手をうまく登用しています。活躍を金額に変換してもヤクルトの海外スカウトは優秀です。
2.日本ハムの外国人獲得評価
続いて日本ハムの外国人獲得を見ていきましょう。同じように年俸とWin Sharesと活躍を金額に変換したデータになります。


編成面ではかなり優れている日本ハムですが、外国人選手の獲得に関してはやや広島・ヤクルトに水をあけられています。スレッジ・ケッペル・(ウルフ)を除くと失敗したケースの方が多かったと見ることもできそうです。ただし、昨年のケッペル・ウルフ両投手の獲得は明るい兆しと言え、全体の差額はマイナス0.7億程度になっています。比較が広島・ヤクルトだと見劣りしてしまうかもしれませんが、1WSあたり1561万円は獲得にリスクが伴う外国人選手としてはそれほど悪い数字ではありません。
3.西武の外国人選手獲得評価
同じように西武についても見ていきましょう。同じように年俸とWin Sharesと活躍を金額に変換したデータになります。


西武はブラゼル・ボカチカ・ブラウンなどまずまずの成績を残す選手が多く、失敗したケースでも全くチームの戦力にならなかった選手がいなかったのが特徴です。2007年のジョンソン選手の扱いをどうするかで西武の評価は割れそうですが、加えたとしても収支はわずかなマイナスで、日本ハム同様まずまずの運用実績があります(1WSあたり1540万円と日本ハムとほぼ同額。ジョンソン投手がいなかった場合は1WSあたり911万円、差額の合計が2.7億のプラスになります)。松坂投手のポスティングフィーに対して、レッドソックスがジョンソンを送り込んだなどの見方もあり、スカウトの意思と別の力が働いた可能性は考慮したいところです。
4.海外スカウトの評価について
最後に広島以外の11球団の新外国人選手のまとめと、シュールストロム駐米スカウトが獲得した選手の評価です。


今回取り上げたヤクルト・日本ハム・西武以外にも、中日やロッテは1年目の外国人選手獲得を上手に行っています。広島以外の11球団を見ても、シュールストロム駐米スカウトは素晴らしい実績を残しています。今季獲得した、サファテ投手は、シュールストロム・スカウトの評価がかなり高いだけに期待したいところです。
各チームの編成は、スカウトが連れてきた外国人選手はある程度活躍すると踏んでチーム作りを進めるケースが多いでしょう。それゆえに1年目の成績を基準にすることで、ある程度スカウトの目利き(能力)を数値化することは可能です。今回は金銭に変換しての評価でしたが、支払い年俸幅(~5000万、5001~1億、1億以上~等でクラス分けしてそれぞれの活躍割合を算出)でクラス分けした上で、外国人選手の活躍する割合を比較する方法もありそうです。成功率と利益の2軸で評価することで、スカウト能力の可視化を一段と進めていけるかもしれません。「一発当てて大きな利益をもたらすスカウト」や「コンスタントに当てる割合の高いスカウト」など、タイプ分けが可能になるかもしれません。
この手法では選手育成に時間のかかる国内スカウトの評価は難しいでしょう。ドラフトでは選手がチームに貢献できるまで一定期間を要する場合が多く、さらにスカウト・育成(コーチ)の貢献した割合がわかりません。その点で海外スカウトは評価の基準が明確で、データで判断出来る余地が多くありそうです。また、今回のデータはWin Sharesを基にしましたが、控え選手を基準にしたWARで算出した方が良い可能性もありますし、外国人選手の年俸・成績を基準にしても良いかもしれません。このあたりはどの基準が良いのか今後の課題としたいところです。
選手を評価してきたスカウトが、評価される側になるのは違和感を感じるかもしれません。しかし、今後はスカウトだけでなく、フロント全体がこのような方法で評価されるのも遠い未来ではないかもしれません。
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野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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