Win Sharesで見たMVPとベストナイン~パ・リーグ
岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]
1.選手を評価する視点
プロ野球担当記者の投票で決まる今年度のペナントレース表彰選手が11月18日に発表され、東京都内で表彰式が行われた。記者投票による最優秀選手(MVP)はパ・リーグが和田毅投手(ソフトバンク)、セ・リーグは和田一浩外野手(中日)が、ともに初めて受賞。最優秀新人(新人王)には、パが榊原諒投手(日本ハム)、セは長野久義外野手(巨人)が選ばれています。また、日本プロ野球選手会が12月4日に開催した、「ベースボール・クリスマス2010in駒沢」でも選手が選ぶMVPなどが発表されました。
選手・記者に続いてデータから選手の評価をしてみようというのが今回の試みです。セイバーメトリクスの創始者B.ジェームズが作った評価方法で検証してみましょう。
Win Shares(ウィン・シェア)はB.ジェームズが開発し、選手がチームの勝利にどれだけ貢献したかを算出した指標になります。数字の基になるのは、打撃・投球・守備などをチームの得点・失点への働きに換算した値です(これまで各著者が紹介してきた選手の活躍を得点や失点に変換する方法に酷似しています。その値を積み上げて選手の評価をしています)。チームの勝利数を3倍(NPBだけの引き分けは1.5倍して計算)にして、選手の活躍に応じてその勝利ポイントを分配しています。Win Sharesが優れている点は、打撃や投手成績に比べ、投手と野手を同じ土俵で比べられるところです。
道作氏のオールタイムシルバースラッガーで指摘があったように、選手の成績は「相対的に得られた利益の形にして初めて指標は意味を持ちうる数字となります。生の数字でスケールを比較しうるのは同じシーズンの同じリーグの中だけのことなのです」。選手の活躍を勝利への貢献という形にすることで、過去にさかのぼって比較をすることもできるようになります。
Win Sharesは攻撃・投球・守備それぞれで相対的な比較の基準から選手を評価したものになります。Win Sharesが30を超えるような活躍ならMVPレベル、投手では20を超えると超一流とされています(NPBは試合数が10%程度少ないので少し基準が下がります)。
2.勝利数分割の流れ
チームの勝利数を具体的に選手に落とし込んでいく工程を少し紹介します。さらに実際にパ・リーグ各チームのWin Sharesを算出して、選手の比較をしていきましょう。
それでは7年ぶりにパ・リーグを制覇したソフトバンクを例にします。
最初にリーグ全体の総得点・イニング数から工程が始まります。今シーズンはパ・リーグ全体で3858得点、7706と1/3イニングになります。ここから1イニング当たりの得点を求めます。リーグの総得点をイニング数で割ることで、1イニング当たりおよそ0.5得点が見込まれることが分かります。ただし、各球場の特性を考慮しなければなりません。パークファクターと呼ばれる、球場の得点への影響を考慮して球団ごとに1イニング当たりの得点見込みを算出します。ヤフードームは比較的得点が入りにくい環境で、およそ5%の得点減少が見込まれます。リーグの1イニング当たりの得点をパークファクターの値で割ることで、ヤフードームの1イニング当たりの得点見込みを算出できます。この値が攻撃・守備の分割をする上で重要な数字になります。
続いてリーグの平均的なチームの失点を算出します。先ほど算出したヤフードーム1イニングあたりの得点とソフトバンクの守備イニングを掛け合わせることで、予想される失点が導けます(0.476×1294と1/3=616.7失点)。攻撃も同じように攻撃イニングと1イニング当たりの得点を掛け合わせることで導きます(0.476×1287と1/3=613.3)。
ここから、少し複雑になります。WSはチームにまったく貢献できていない成績が基準になっています。
B.ジェームズはこの基準を
攻撃なら、見込まれる得点×0.52
守備なら、見込まれる失点×1.52
と定義しています。
先ほどの予想される得点(613.3)に0.52を掛け合わせた318.9が、まったく貢献できていない選手で打線を構成した場合の総得点と想定します。同じように失点(616.7)も1.52を掛け合わせ937.3と想定することができます。この値と今季のソフトバンクが記録した得点と失点の差が攻守の勝利数を分配するもとになります。ソフトバンクの実際の得点は638。先ほどの全く貢献できない打線の318.9を引いた319.1が攻撃側の貢献。一方の失点は、937.3から実際の失点615を引いた322.3が守備側の貢献になります。
これで具体的に攻撃と守備側の勝利の算出に移れます。まず攻撃の貢献は319.1と先ほど求めました。この値を攻撃と守備の貢献を合わせたもので割ることで、攻撃の割合を算出することができます。
攻撃319.1÷(319.1+322.3)=0.497となります。
ソフトバンクは攻撃・守備の貢献はほとんど同じくらいになることが分かります。最後に勝利数をWin Sharesに変換して分配します。ソフトバンクの勝利数は76勝。MLBでは想定されていない引き分けは0.5勝と換算して計算しています(76+0.5×5=78.5勝分)。この78.5勝を3倍にした235.5がチーム全体のWSになります。Win Shares全体の235.5に0.497をかけた117.2が攻撃のWin Sharesになり、全体から攻撃のWin Sharesを引いた118.3が守備に分配されます。
パ・リーグ全体を見るとBクラスのチームは攻撃の貢献が少なかったようです。
守備はここから投手と守備に分割して、選手の活躍にポイントを振り分けていきます(これ以降の工程は非常に細かいので割愛)。この様な工程を繰り返して、チームの勝利を選手の活躍に落とし込んでいくのがWin Sharesになります。
3.各チームのWin Shares
それでは実際に各チームの値を見ていきましょう。各チームのWin Sharesは下記の通りです。
総合の列(青色)で打撃と守備は野手、投球は投手を評価するものです。合計は打撃・守備・投球の3つを合わせたもの。WS(Win Shares)は最終的な評価になります。右の守備(赤色)の項目は野手がどのポジションで守備のWin Sharesを記録したかを表します。
■ソフトバンク
多村・川崎・本多が主力としてチームに貢献。打撃でそれほど数字を残せなかった本多選手ですが、守備での評価が高くなっています。投手でも和田・馬原・杉内・ファルケンボーグ・摂津が高い数字を残しています。

■ロッテ
ロッテは西岡・井口の二遊間の貢献が非常に高い構成です。今江選手を合わせた内野陣の攻撃が今季ロッテを支えています。ただ、ポスティングで移籍する西岡選手の穴を埋めるのはなかなか大変な作業になりそうです。

■西武
シーズンを通じて故障者にたたられた西武ですが、栗山・中島・片岡と主力野手はまずまずの内容。涌井・シコースキー投手の数字も高くやはりポテンシャルは高い。FAでソフトバンクに移籍が決まった細川捕手は、守備面での貢献が高いのが分かります。

■日本ハム
田中・糸井の両選手はリーグでもトップクラスの活躍。ダルビッシュは投手でもリーグトップの貢献。武田勝・ケッペルなどの数値も高く、チームの骨格は依然としてしっかりしている内容。

■オリックス
カブレラ・T-岡田の長距離砲はまずまずの評価。エース金子も投手では日本ハムのダルビッシュに次ぐ貢献。先発陣は2番手の木佐貫投手以降の人材が苦しいところ。ブルペンの平野・岸田はさすがの内容。カブレラが移籍なら攻撃はかなり苦しい陣容になりかねません。

■楽天
岩隈・田中・永井の三本柱は流石の内容。長距離砲が軒並み調子を落とした今季ですが、聖澤・嶋など新しい戦力の台頭がみられます。ブルペンも小山・青山・片山の貢献も問題なく、攻撃が僅か41%程度しかWin Sharesの分配を受けていない点を見ても打力の強化で順位を上げられる要素は揃っています。

セ・リーグWin Sharesはこちら
4.Win Sharesでの比較
それではWin Sharesで上位の選手を見てみましょう。ロッテの西岡選手が31WSでリーグトップの働きをしています。田中賢(日本ハム)、井口(ロッテ)、多村(ソフトバンク)、糸井(日本ハム)などリーグでも屈指のプレーヤーが並んでいます。

下の表がポジション別で最もWin Sharesが高かった選手になります。記者投票や選手投票と若干違う部分も見受けられます。また読者の皆さんが選ぶ選手とも違う場合もあるでしょう。ただ、データ面(B.ジェームズの視点)から選出する一つの見解として捉えて頂けると野球の視野が広がるのかもしれません。
もちろんWin Sharesが選手の評価全てというわけではありません。実はWin Sharesにも色々不備があります。例えば、まったく貢献できない成績を基準にすることで、本来評価しなくてもよい選手に貢献値を与えてしまうこと。投手に対してかなり厳しい貢献の割り振りなどが大きな問題点です。古くから選手の活躍を勝利数に換算する指標がありますが、今でも試行錯誤を重ね改善を図っています。ここ最近のトレンドは当サイトでも何度か記述のある控え選手を基準にした手法です。今後も勝利に変換する様々な方法が試されるでしょう。
繰り返しになりますが、なぜ選手の活躍を勝利に変換するのかといえば投手と野手を同じ土俵で比較出来るからです。さらに過去の選手との比較も可能になります。ダルビッシュ投手と稲尾投手の比較や野村克也捕手と阿部慎之助捕手の比較などをするには、ただ単純に打撃成績や投手成績を比べれば良いものではありません。その時代の環境などを調整したうえで比較をすることになります。選手の活躍を勝利に変換した指標で比較する方が、選手の力を比較しやすいのです。今回紹介したWin Sharesなどはそういった視点から作成された代表的な指標でもあります。
これから過去の選手のレポートも出てくるかと思います。その際は勝利に変換された指標が出てくるかもしれません。比較に有効なためにこの様な指標を使っていると理解していれば、過去選手の力と今の選手の力をより多面的に理解できるでしょう。
プロ野球担当記者の投票で決まる今年度のペナントレース表彰選手が11月18日に発表され、東京都内で表彰式が行われた。記者投票による最優秀選手(MVP)はパ・リーグが和田毅投手(ソフトバンク)、セ・リーグは和田一浩外野手(中日)が、ともに初めて受賞。最優秀新人(新人王)には、パが榊原諒投手(日本ハム)、セは長野久義外野手(巨人)が選ばれています。また、日本プロ野球選手会が12月4日に開催した、「ベースボール・クリスマス2010in駒沢」でも選手が選ぶMVPなどが発表されました。
選手・記者に続いてデータから選手の評価をしてみようというのが今回の試みです。セイバーメトリクスの創始者B.ジェームズが作った評価方法で検証してみましょう。
Win Shares(ウィン・シェア)はB.ジェームズが開発し、選手がチームの勝利にどれだけ貢献したかを算出した指標になります。数字の基になるのは、打撃・投球・守備などをチームの得点・失点への働きに換算した値です(これまで各著者が紹介してきた選手の活躍を得点や失点に変換する方法に酷似しています。その値を積み上げて選手の評価をしています)。チームの勝利数を3倍(NPBだけの引き分けは1.5倍して計算)にして、選手の活躍に応じてその勝利ポイントを分配しています。Win Sharesが優れている点は、打撃や投手成績に比べ、投手と野手を同じ土俵で比べられるところです。
道作氏のオールタイムシルバースラッガーで指摘があったように、選手の成績は「相対的に得られた利益の形にして初めて指標は意味を持ちうる数字となります。生の数字でスケールを比較しうるのは同じシーズンの同じリーグの中だけのことなのです」。選手の活躍を勝利への貢献という形にすることで、過去にさかのぼって比較をすることもできるようになります。
Win Sharesは攻撃・投球・守備それぞれで相対的な比較の基準から選手を評価したものになります。Win Sharesが30を超えるような活躍ならMVPレベル、投手では20を超えると超一流とされています(NPBは試合数が10%程度少ないので少し基準が下がります)。
2.勝利数分割の流れ
チームの勝利数を具体的に選手に落とし込んでいく工程を少し紹介します。さらに実際にパ・リーグ各チームのWin Sharesを算出して、選手の比較をしていきましょう。
分割手順 | ソフトバンク |
リーグ得点 | 3858 |
リーグイニング | 7706 1/3 |
得点/イニング | .501 |
球場が与える得点への影響を補正 | .952 |
球場補正考慮後の得点(失点)/イニング | .476 |
守備についたイニング | 1294 1/3 |
予想される失点(守備イニング×1イニングあたりの得点) | 616.7 |
攻撃したイニング | 1287 1/3 |
予想される得点 | 613.3 |
予想される得点×0.52 | 318.9 |
実際の得点 | 638 |
攻撃の貢献=実際の得点-予想された得点×0.52 | 319.1 |
予想される失点×1.52 | 937.3 |
実際の失点 | 615 |
守備の貢献=予想される失点×1.52-実際の失点 | 322.3 |
攻撃のMR算出割合 | 49.7% |
チーム勝利数(勝率数+引き分け×0.5) | 78.5 |
チームWS=チーム勝利数×3 | 235.5 |
攻撃のWS=チームWS×攻撃のMR算出割合 | 117.2 |
守備のWS=チームWS-攻撃のWS | 118.3 |
それでは7年ぶりにパ・リーグを制覇したソフトバンクを例にします。
最初にリーグ全体の総得点・イニング数から工程が始まります。今シーズンはパ・リーグ全体で3858得点、7706と1/3イニングになります。ここから1イニング当たりの得点を求めます。リーグの総得点をイニング数で割ることで、1イニング当たりおよそ0.5得点が見込まれることが分かります。ただし、各球場の特性を考慮しなければなりません。パークファクターと呼ばれる、球場の得点への影響を考慮して球団ごとに1イニング当たりの得点見込みを算出します。ヤフードームは比較的得点が入りにくい環境で、およそ5%の得点減少が見込まれます。リーグの1イニング当たりの得点をパークファクターの値で割ることで、ヤフードームの1イニング当たりの得点見込みを算出できます。この値が攻撃・守備の分割をする上で重要な数字になります。
続いてリーグの平均的なチームの失点を算出します。先ほど算出したヤフードーム1イニングあたりの得点とソフトバンクの守備イニングを掛け合わせることで、予想される失点が導けます(0.476×1294と1/3=616.7失点)。攻撃も同じように攻撃イニングと1イニング当たりの得点を掛け合わせることで導きます(0.476×1287と1/3=613.3)。
ここから、少し複雑になります。WSはチームにまったく貢献できていない成績が基準になっています。
B.ジェームズはこの基準を
攻撃なら、見込まれる得点×0.52
守備なら、見込まれる失点×1.52
と定義しています。
先ほどの予想される得点(613.3)に0.52を掛け合わせた318.9が、まったく貢献できていない選手で打線を構成した場合の総得点と想定します。同じように失点(616.7)も1.52を掛け合わせ937.3と想定することができます。この値と今季のソフトバンクが記録した得点と失点の差が攻守の勝利数を分配するもとになります。ソフトバンクの実際の得点は638。先ほどの全く貢献できない打線の318.9を引いた319.1が攻撃側の貢献。一方の失点は、937.3から実際の失点615を引いた322.3が守備側の貢献になります。
これで具体的に攻撃と守備側の勝利の算出に移れます。まず攻撃の貢献は319.1と先ほど求めました。この値を攻撃と守備の貢献を合わせたもので割ることで、攻撃の割合を算出することができます。
攻撃319.1÷(319.1+322.3)=0.497となります。
ソフトバンクは攻撃・守備の貢献はほとんど同じくらいになることが分かります。最後に勝利数をWin Sharesに変換して分配します。ソフトバンクの勝利数は76勝。MLBでは想定されていない引き分けは0.5勝と換算して計算しています(76+0.5×5=78.5勝分)。この78.5勝を3倍にした235.5がチーム全体のWSになります。Win Shares全体の235.5に0.497をかけた117.2が攻撃のWin Sharesになり、全体から攻撃のWin Sharesを引いた118.3が守備に分配されます。
分割 | ソフトバンク | 西武 | ロッテ | 日本ハム | オリックス | 楽天 |
攻撃のWin Shares | 117.2 | 119.8 | 127.6 | 97.0 | 93.9 | 78.6 |
守備のWin Shares | 118.3 | 115.7 | 100.4 | 129.5 | 119.1 | 111.9 |
攻撃の割合 | 49.7% | 50.9% | 56.0% | 42.8% | 44.1% | 41.3% |
パ・リーグ全体を見るとBクラスのチームは攻撃の貢献が少なかったようです。
守備はここから投手と守備に分割して、選手の活躍にポイントを振り分けていきます(これ以降の工程は非常に細かいので割愛)。この様な工程を繰り返して、チームの勝利を選手の活躍に落とし込んでいくのがWin Sharesになります。
3.各チームのWin Shares
それでは実際に各チームの値を見ていきましょう。各チームのWin Sharesは下記の通りです。
総合の列(青色)で打撃と守備は野手、投球は投手を評価するものです。合計は打撃・守備・投球の3つを合わせたもの。WS(Win Shares)は最終的な評価になります。右の守備(赤色)の項目は野手がどのポジションで守備のWin Sharesを記録したかを表します。
■ソフトバンク
多村・川崎・本多が主力としてチームに貢献。打撃でそれほど数字を残せなかった本多選手ですが、守備での評価が高くなっています。投手でも和田・馬原・杉内・ファルケンボーグ・摂津が高い数字を残しています。

■ロッテ
ロッテは西岡・井口の二遊間の貢献が非常に高い構成です。今江選手を合わせた内野陣の攻撃が今季ロッテを支えています。ただ、ポスティングで移籍する西岡選手の穴を埋めるのはなかなか大変な作業になりそうです。

■西武
シーズンを通じて故障者にたたられた西武ですが、栗山・中島・片岡と主力野手はまずまずの内容。涌井・シコースキー投手の数字も高くやはりポテンシャルは高い。FAでソフトバンクに移籍が決まった細川捕手は、守備面での貢献が高いのが分かります。
■日本ハム
田中・糸井の両選手はリーグでもトップクラスの活躍。ダルビッシュは投手でもリーグトップの貢献。武田勝・ケッペルなどの数値も高く、チームの骨格は依然としてしっかりしている内容。

■オリックス
カブレラ・T-岡田の長距離砲はまずまずの評価。エース金子も投手では日本ハムのダルビッシュに次ぐ貢献。先発陣は2番手の木佐貫投手以降の人材が苦しいところ。ブルペンの平野・岸田はさすがの内容。カブレラが移籍なら攻撃はかなり苦しい陣容になりかねません。

■楽天
岩隈・田中・永井の三本柱は流石の内容。長距離砲が軒並み調子を落とした今季ですが、聖澤・嶋など新しい戦力の台頭がみられます。ブルペンも小山・青山・片山の貢献も問題なく、攻撃が僅か41%程度しかWin Sharesの分配を受けていない点を見ても打力の強化で順位を上げられる要素は揃っています。

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4.Win Sharesでの比較
それではWin Sharesで上位の選手を見てみましょう。ロッテの西岡選手が31WSでリーグトップの働きをしています。田中賢(日本ハム)、井口(ロッテ)、多村(ソフトバンク)、糸井(日本ハム)などリーグでも屈指のプレーヤーが並んでいます。

下の表がポジション別で最もWin Sharesが高かった選手になります。記者投票や選手投票と若干違う部分も見受けられます。また読者の皆さんが選ぶ選手とも違う場合もあるでしょう。ただ、データ面(B.ジェームズの視点)から選出する一つの見解として捉えて頂けると野球の視野が広がるのかもしれません。
名前 | チーム | 打撃 | 守備 | 投球 | 合計 | WS | |
P | ダルビッシュ 有 | 日本ハム | 0.0 | 0.0 | 19.6 | 19.6 | 20 |
C | 嶋 基宏 | 楽天 | 10.0 | 3.8 | 0.0 | 13.9 | 14 |
1B | カブレラ | オリックス | 19.0 | 1.4 | 0.0 | 20.4 | 20 |
2B | 田中 賢介 | 日本ハム | 22.4 | 5.7 | 0.0 | 28.1 | 28 |
3B | 今江 敏晃 | ロッテ | 17.1 | 4.8 | 0.0 | 21.9 | 22 |
SS | 西岡 剛 | ロッテ | 24.6 | 6.7 | 0.0 | 31.2 | 31 |
OF | 多村 仁志 | ソフトバンク | 24.1 | 2.5 | 0.0 | 26.6 | 27 |
OF | 糸井 嘉男 | 日本ハム | 20.5 | 4.5 | 0.0 | 25.0 | 25 |
OF | 栗山 巧 | 西武 | 21.0 | 3.9 | 0.0 | 24.9 | 25 |
もちろんWin Sharesが選手の評価全てというわけではありません。実はWin Sharesにも色々不備があります。例えば、まったく貢献できない成績を基準にすることで、本来評価しなくてもよい選手に貢献値を与えてしまうこと。投手に対してかなり厳しい貢献の割り振りなどが大きな問題点です。古くから選手の活躍を勝利数に換算する指標がありますが、今でも試行錯誤を重ね改善を図っています。ここ最近のトレンドは当サイトでも何度か記述のある控え選手を基準にした手法です。今後も勝利に変換する様々な方法が試されるでしょう。
繰り返しになりますが、なぜ選手の活躍を勝利に変換するのかといえば投手と野手を同じ土俵で比較出来るからです。さらに過去の選手との比較も可能になります。ダルビッシュ投手と稲尾投手の比較や野村克也捕手と阿部慎之助捕手の比較などをするには、ただ単純に打撃成績や投手成績を比べれば良いものではありません。その時代の環境などを調整したうえで比較をすることになります。選手の活躍を勝利に変換した指標で比較する方が、選手の力を比較しやすいのです。今回紹介したWin Sharesなどはそういった視点から作成された代表的な指標でもあります。
これから過去の選手のレポートも出てくるかと思います。その際は勝利に変換された指標が出てくるかもしれません。比較に有効なためにこの様な指標を使っていると理解していれば、過去選手の力と今の選手の力をより多面的に理解できるでしょう。
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野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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