Baseball Lab守備評価~Right Fielder
岡田友輔 [ 著者コラム一覧 ]
今週から始まったBaseball Lab守備評価ですが、本日は右翼手の評価を行います。近年はセンターほどの守備範囲はありませんが、ある程度の守備力と肩の力を要求されるポジションとなっています。今回の評価にあたって基本とするのはゾーンデータを基にしたUZRになります。前回紹介したUZR(2009年UZRプロトタイプ)は打球の強さなどを考慮しませんでしたが、今回の分析では打球の強さを考慮して評価をしています。さらに個人の評価になるので、アウトにした数は分かりますが、ゾーン別にヒットにしてしまった数については、守備イニング数を基にして選手に責任安打を割り当てています。外野手の評価は主に守備範囲と肩の強さになります。
1.守備範囲の評価
守備範囲の基準になる打球はゾーン分割図を基に入力されています。

ライトが関与したフライの打球についてはP~Xが主要な守備ゾーンになります。もっとも打球が飛んできたゾーンはTゾーンで、守備の定位置としてもこの付近の打球が多くなっています。

ゾーンと距離、さらに打球の強さを基にその打球がリーグの右翼手全体でどの程度処理されたのかが評価の基準となります。定位置に近いゾーンは処理率が高く、定位置から離れる、強い打球になればアウトになる割合が基本的に下がっていきます。リーグの平均的な処理率とゾーンに飛んできた打球数をどれだけアウトに出来たのかが守備範囲の測定の基本になります。

それではまずセ・リーグのライトの選手を見ていきましょう。上のグラフは対象選手がゾーン毎に平均的な処理率に比べどれだけ多く(少ない)のプレイを成立させたのかを表しています(ゾーン毎にまとめていますが、ゾーンに飛んできた打球を距離や打球の強さで調整してから処理すべき打球数を求めています)。
ヤクルトの飯原選手や中日の野本選手はどのゾーンに対しても平均かそれ以上のアウトを記録しています。守ったイニングはそれほど多くはありませんが、ムラのない守備力を見せています。横浜の内川選手はセンター寄りの打球に対してはまずまずの成績ですが、ライト線の打球に対しては脆いところがありそうです。巨人の長野選手もデータで見ると同じタイプに分類でき、センター寄りの打球に比べ、ライト線の打球に対して処理する割合が大きく落ち込んでいるのがわかります(V~Xゾーンで平均に比べ2以上処理数が少ない)。広島の広瀬選手はセンター寄りの打球に比べライト線の打球処理が大きく上回っています。長打の割合が多いライト線付近での好成績は、失点を抑止する効果も大きくなります。

広瀬選手の成績をもう少し詳しく見てみましょう。上の表はゾーン距離別での処理割合を表しています。前後の動きでは距離6と定位置よりやや浅めの打球の処理が非常に優れています。先ほどの折れ線グラフはライト線付近で多くのアウトを記録していました。ライト線では距離6・7付近で多くのクレジットを得ていたようです。

同じようにパ・リーグの右翼手についても見ていきましょう。パ・リーグはプレイ数の抑止幅がセ・リーグに比べやや大きくなっています。どのゾーンに対しても満遍ない処理をしているのは、オリックスの赤田選手、西武の高山選手になります。ソフトバンクの多村選手はSとTゾーンの出入りが激しいですが、分類的には赤田・高山両選手と同じタイプになるかもしれません。日本ハム勢は稲葉選手、陽選手ともに同じような処理率に落ち着いています。ロッテのサブロー選手は定位置付近からライト線にかけてやや弱いゾーンが存在するようです。
最もパ・リーグの処理率で特長があるのは楽天の鉄平選手です。正面付近での処理が悪い半面、その周りの処理が非常に高くなっています。また、ライト線付近の打球処理が高いのは大きな魅力です。

鉄平選手も同じようにゾーン距離別の処理割合について見てみましょう。正面付近でやや数字を落としていましたが、前方(ゾーンU、距離5あたり)の打球に対してやや数字を悪くしています(もちろんサンプルは限られているので明確な弱点とは言えません)。対して定位置の左側(Sゾーン)とライト線(V~Xゾーン)にかけては、やや深めの位置でクレジットを得ているのが分かります。

上の表はプレイ数の増減を基に選手の処理能力で失点を抑えた(増やした)値になります。ライト線で高い処理を記録した広島・広瀬選手や楽天の鉄平選手、守ったイニングは少ないですが満遍なく打球を処理した飯原選手は多くの失点を防いでいるのが分かります。反対に打球処理に弱いゾーンがあったロッテのサブロー選手やヤクルト・ガイエル選手、巨人の長野選手は失点を増やしてしまったようです。
2.肩の評価
肩の評価については以前(外野手の肩~Part1、外野手の肩~Part2)お話ししましたが、簡単におさらいをしましょう。
・走者が一塁にいて単打を打たれたケース(二塁に走者がいる場合は除外)
・走者が二塁にいて単打を打たれたケース
・走者が一塁にいて二塁打を打たれたケース
・走者が三塁にいて外野フライを打ち上げられたケース
上記の状況で外野手が走者に進塁をあきらめさせたり、進塁を狙った走者をアウトにした数をリーグの平均的な選手と比べて外野手の肩の能力を評価します。平均的な選手との差を基にして、プレイ前後の得点期待値の変化から肩の能力でどれだけ失点を防いだかを算出しています。
上の表は各選手が肩で失点を抑止できた(出来なかった)値になります。広島の広瀬選手や楽天の鉄平選手などがここでも優秀な成績を残しています。特に広瀬選手は一塁から三塁、二塁から本塁の走塁を上手く抑止し、9.5失点もの失点を防ぐ活躍をしています。これは外野の単一ポジションでは2010年最高の値になります。
3.失策の評価
外野手の主な評価は守備範囲と肩の力ですが、失策もUZRでは評価に加えています。ただし、外野手の失策は内野手に比べ記録される数が非常に少なく、影響は限定的です(その分を守備範囲のところで評価されています)。

外野手のアウトを取ったプレイに対して失策を犯し出塁を許したケースとそれ以外の失策を別にしています。 出塁を許した以外の失策で阪神の桜井選手や楽天の鉄平選手のマイナスが目立ちます。ただし、守備範囲や肩の評価に比べるとその影響はやはり限定的です。
4.UZR総合評価
ここまで守備範囲・肩・失策それぞれでライトを守った選手を評価してきました。最後にすべての項目をまとめてどのくらい失点を防いだのか見てみましょう。すべての項目をまとめたのはUZRの項目になります。さらに出場した割合が選手それぞれで違いますので、1000イニング出場した場合に想定される失点抑止を表したのがUZR/1000になります。

ライトでゴールデングラブ賞に選出されたのは広島の広瀬選手のみになります。広瀬選手は守備範囲・肩・失策出塁の項目で最も良い成績。守備イニングも1100を超え、データ面で見ても非常に優秀な守備能力を見せています。ヤクルトの飯原選手や中日の野本選手は今季の能力を維持して、出場イニングが増えれば広瀬選手の有力な対抗馬になりそうです。
パ・リーグでは楽天の鉄平選手が飛びぬけた成績になっています。なかでも守備範囲・肩の項目で高い能力を発揮しているのが分かります。鉄平選手はUZRで評価すると、実は昨年もセンターで非常に優秀な成績を残していました。2年連続で非常に高い守備能力を見せていますが、ゴールデングラブ賞には選出されていません。昨年の広島・赤松選手同様に守備の能力を過小評価されている代表格の選手といえるかもしれません。
私の右翼手の最終ランキングは1位を広島の広瀬選手、2位に楽天の鉄平選手を選出しています。ヤクルトの飯原選手がUZR/1000で鉄平選手を上回っていますが、これは出場が615イニング余りと鉄平選手に比べやや少なく、951イニングで実際に失点を防いだ点を少しだけ重視した結果です。
1.守備範囲の評価
守備範囲の基準になる打球はゾーン分割図を基に入力されています。

ライトが関与したフライの打球についてはP~Xが主要な守備ゾーンになります。もっとも打球が飛んできたゾーンはTゾーンで、守備の定位置としてもこの付近の打球が多くなっています。

ゾーンと距離、さらに打球の強さを基にその打球がリーグの右翼手全体でどの程度処理されたのかが評価の基準となります。定位置に近いゾーンは処理率が高く、定位置から離れる、強い打球になればアウトになる割合が基本的に下がっていきます。リーグの平均的な処理率とゾーンに飛んできた打球数をどれだけアウトに出来たのかが守備範囲の測定の基本になります。
それではまずセ・リーグのライトの選手を見ていきましょう。上のグラフは対象選手がゾーン毎に平均的な処理率に比べどれだけ多く(少ない)のプレイを成立させたのかを表しています(ゾーン毎にまとめていますが、ゾーンに飛んできた打球を距離や打球の強さで調整してから処理すべき打球数を求めています)。
ヤクルトの飯原選手や中日の野本選手はどのゾーンに対しても平均かそれ以上のアウトを記録しています。守ったイニングはそれほど多くはありませんが、ムラのない守備力を見せています。横浜の内川選手はセンター寄りの打球に対してはまずまずの成績ですが、ライト線の打球に対しては脆いところがありそうです。巨人の長野選手もデータで見ると同じタイプに分類でき、センター寄りの打球に比べ、ライト線の打球に対して処理する割合が大きく落ち込んでいるのがわかります(V~Xゾーンで平均に比べ2以上処理数が少ない)。広島の広瀬選手はセンター寄りの打球に比べライト線の打球処理が大きく上回っています。長打の割合が多いライト線付近での好成績は、失点を抑止する効果も大きくなります。

広瀬選手の成績をもう少し詳しく見てみましょう。上の表はゾーン距離別での処理割合を表しています。前後の動きでは距離6と定位置よりやや浅めの打球の処理が非常に優れています。先ほどの折れ線グラフはライト線付近で多くのアウトを記録していました。ライト線では距離6・7付近で多くのクレジットを得ていたようです。

同じようにパ・リーグの右翼手についても見ていきましょう。パ・リーグはプレイ数の抑止幅がセ・リーグに比べやや大きくなっています。どのゾーンに対しても満遍ない処理をしているのは、オリックスの赤田選手、西武の高山選手になります。ソフトバンクの多村選手はSとTゾーンの出入りが激しいですが、分類的には赤田・高山両選手と同じタイプになるかもしれません。日本ハム勢は稲葉選手、陽選手ともに同じような処理率に落ち着いています。ロッテのサブロー選手は定位置付近からライト線にかけてやや弱いゾーンが存在するようです。
最もパ・リーグの処理率で特長があるのは楽天の鉄平選手です。正面付近での処理が悪い半面、その周りの処理が非常に高くなっています。また、ライト線付近の打球処理が高いのは大きな魅力です。

鉄平選手も同じようにゾーン距離別の処理割合について見てみましょう。正面付近でやや数字を落としていましたが、前方(ゾーンU、距離5あたり)の打球に対してやや数字を悪くしています(もちろんサンプルは限られているので明確な弱点とは言えません)。対して定位置の左側(Sゾーン)とライト線(V~Xゾーン)にかけては、やや深めの位置でクレジットを得ているのが分かります。

上の表はプレイ数の増減を基に選手の処理能力で失点を抑えた(増やした)値になります。ライト線で高い処理を記録した広島・広瀬選手や楽天の鉄平選手、守ったイニングは少ないですが満遍なく打球を処理した飯原選手は多くの失点を防いでいるのが分かります。反対に打球処理に弱いゾーンがあったロッテのサブロー選手やヤクルト・ガイエル選手、巨人の長野選手は失点を増やしてしまったようです。
2.肩の評価
肩の評価については以前(外野手の肩~Part1、外野手の肩~Part2)お話ししましたが、簡単におさらいをしましょう。
・走者が一塁にいて単打を打たれたケース(二塁に走者がいる場合は除外)
・走者が二塁にいて単打を打たれたケース
・走者が一塁にいて二塁打を打たれたケース
・走者が三塁にいて外野フライを打ち上げられたケース
上記の状況で外野手が走者に進塁をあきらめさせたり、進塁を狙った走者をアウトにした数をリーグの平均的な選手と比べて外野手の肩の能力を評価します。平均的な選手との差を基にして、プレイ前後の得点期待値の変化から肩の能力でどれだけ失点を防いだかを算出しています。
リーグ | チーム | 登録名 | ①⇒③ | ②⇒④ | ①⇒④ | ③⇒④ | 合計 |
セ・リーグ | 広島 | 廣瀬 純 | 2.9 | 5.2 | 0.4 | 1.0 | 9.5 |
パ・リーグ | 楽天 | 鉄平 | 1.0 | 3.5 | 0.1 | -0.7 | 3.9 |
パ・リーグ | ソフトバンク | 多村 仁志 | -1.6 | 0.0 | 2.4 | 1.4 | 2.2 |
セ・リーグ | 巨人 | 長野 久義 | -0.2 | 1.1 | 0.6 | -0.1 | 1.5 |
セ・リーグ | ヤクルト | 飯原 誉士 | -0.5 | 2.6 | -1.2 | 0.4 | 1.3 |
パ・リーグ | オリックス | 赤田 将吾 | 0.1 | 1.1 | -1.1 | 0.0 | 0.1 |
セ・リーグ | ヤクルト | ガイエル | 0.2 | -1.4 | 1.2 | -0.1 | 0.0 |
セ・リーグ | 中日 | 野本 圭 | -0.2 | 0.2 | 0.2 | -0.4 | -0.1 |
パ・リーグ | 日本ハム | 陽 岱鋼 | 0.4 | -0.3 | -0.1 | -0.2 | -0.2 |
パ・リーグ | 日本ハム | 稲葉 篤紀 | 0.2 | -1.0 | -0.2 | -0.3 | -1.3 |
セ・リーグ | 横浜 | 内川 聖一 | -1.0 | -2.5 | 0.8 | 1.3 | -1.3 |
パ・リーグ | 西武 | 高山 久 | -0.5 | -0.5 | -0.5 | -0.4 | -1.9 |
パ・リーグ | ロッテ | サブロー | -0.8 | -1.1 | 0.2 | -0.5 | -2.2 |
セ・リーグ | 阪神 | 桜井 広大 | -1.1 | -1.7 | -1.9 | -1.7 | -6.4 |
上の表は各選手が肩で失点を抑止できた(出来なかった)値になります。広島の広瀬選手や楽天の鉄平選手などがここでも優秀な成績を残しています。特に広瀬選手は一塁から三塁、二塁から本塁の走塁を上手く抑止し、9.5失点もの失点を防ぐ活躍をしています。これは外野の単一ポジションでは2010年最高の値になります。
3.失策の評価
外野手の主な評価は守備範囲と肩の力ですが、失策もUZRでは評価に加えています。ただし、外野手の失策は内野手に比べ記録される数が非常に少なく、影響は限定的です(その分を守備範囲のところで評価されています)。

外野手のアウトを取ったプレイに対して失策を犯し出塁を許したケースとそれ以外の失策を別にしています。 出塁を許した以外の失策で阪神の桜井選手や楽天の鉄平選手のマイナスが目立ちます。ただし、守備範囲や肩の評価に比べるとその影響はやはり限定的です。
4.UZR総合評価
ここまで守備範囲・肩・失策それぞれでライトを守った選手を評価してきました。最後にすべての項目をまとめてどのくらい失点を防いだのか見てみましょう。すべての項目をまとめたのはUZRの項目になります。さらに出場した割合が選手それぞれで違いますので、1000イニング出場した場合に想定される失点抑止を表したのがUZR/1000になります。

ライトでゴールデングラブ賞に選出されたのは広島の広瀬選手のみになります。広瀬選手は守備範囲・肩・失策出塁の項目で最も良い成績。守備イニングも1100を超え、データ面で見ても非常に優秀な守備能力を見せています。ヤクルトの飯原選手や中日の野本選手は今季の能力を維持して、出場イニングが増えれば広瀬選手の有力な対抗馬になりそうです。
パ・リーグでは楽天の鉄平選手が飛びぬけた成績になっています。なかでも守備範囲・肩の項目で高い能力を発揮しているのが分かります。鉄平選手はUZRで評価すると、実は昨年もセンターで非常に優秀な成績を残していました。2年連続で非常に高い守備能力を見せていますが、ゴールデングラブ賞には選出されていません。昨年の広島・赤松選手同様に守備の能力を過小評価されている代表格の選手といえるかもしれません。
私の右翼手の最終ランキングは1位を広島の広瀬選手、2位に楽天の鉄平選手を選出しています。ヤクルトの飯原選手がUZR/1000で鉄平選手を上回っていますが、これは出場が615イニング余りと鉄平選手に比べやや少なく、951イニングで実際に失点を防いだ点を少しだけ重視した結果です。

Baseball Lab「Archives」とは?
Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
月別著者コラム
最新コラムコメント
|
|
|
|
|
コメント