ダルビッシュは20勝できるのか? Part.1
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1.はじめに
贔屓のチームのエースが今年何勝するか?と,シーズン開幕前に,予想することはプロ野球のひとつの楽しみでもあります。そして,シーズン序盤戦を順調に滑り出したりすると期待は更に高まります。また,ダルビッシュ選手くらい球界を代表する選手になると,贔屓のチームではなくともその結果は気になるところです。
しかし,投手の勝ち星というものは投手自身の努力ではなんとかできない要素もはらんでいます。投手がいくら無失点で抑えても打線が援護してくれなければ白星がつかないからです。
と,いうことは「ダルビッシュは20勝できるのか?」といくら案じたところで,投手本人の努力ではどうにもならない要素があるということにあります。
では,投手の勝ち星はどれくらい打線の援護に左右されるのでしょうか?今回はこれをテーマに分析をしていきたいと思います。
2.分析データ
2006年から2010年までに1シーズンに40イニング以上登板した先発投手376名を分析対象としました。
分析の前に,防御率と援護率の分布を示します。表1に平均値と標準偏差,最小値・最大値を示します。図1には防御率と援護率の分布を示します。


似たようなデータではありますが,若干援護率の方が値が高くなっています。
3.防御率と援護率と勝ち星の関係
これらの投手のデータを対象に,以下の予測式をたててみました。
・勝率 = 防御率 + 援護率
勝ち星だけでは登板回数が多い方が有利になるので,勝率で分析してみました。結果は以下のようになりました。
・勝率 =-0.98 × (防御率) + 0.85 ×(援護率) + 0.523
防御率と援護率についた係数は,表1と図1で示したように分布が異なるので,この値をそのまま比較することはできません。この分布の違いを調整した防御率と援護率と,勝ち星,勝率との関係を以下の図2-1と図2-2に示します。

予測式で表した関係を図示するとこのような関係となります。防御率と援護率の係数は矢印と同色の値で示してあります。
この分析の結果より,勝率の約6割強が防御率と援護率によって説明されるということがわかります。また,約6割強の内訳は,防御率が約4割,援護率が約2割の割合となっています。
以上の分析より,投手の勝敗に防御率と援護率が及ぼす影響が具体的にわかるようになりました。基本的には防御率の方が重要であることがわかりましたが,援護率も勝敗に影響することがわかりました。
4.ダルビッシュ選手の勝率予想
さて,この分析結果を元に,タイトルにもあるように,ダルビッシュ選手が20勝できるかどうかを検証してみたいと思います。ダルビッシュ選手の成績は以下の表2のようになっています

この防御率と援護率から,先ほどの予測式を使って予想勝率を計算すると以下のようになります。
2006年:0.592
2007年:0.646
2008年:0.637
2009年:0.757
2010年:0.664
実際の成績も20勝に届きませんでしたし,全ての試合で勝敗がつくと無理な仮定をしてこの予想勝率で計算しても20勝には届きません。つまり,この防御率と援護率では20勝には届かないということになります。
では,ダルビッシュ選手が20勝するには何が足りないのでしょうか?という分析は,長くなってきましたので,また次回にやっていきたいと思います。
贔屓のチームのエースが今年何勝するか?と,シーズン開幕前に,予想することはプロ野球のひとつの楽しみでもあります。そして,シーズン序盤戦を順調に滑り出したりすると期待は更に高まります。また,ダルビッシュ選手くらい球界を代表する選手になると,贔屓のチームではなくともその結果は気になるところです。
しかし,投手の勝ち星というものは投手自身の努力ではなんとかできない要素もはらんでいます。投手がいくら無失点で抑えても打線が援護してくれなければ白星がつかないからです。
と,いうことは「ダルビッシュは20勝できるのか?」といくら案じたところで,投手本人の努力ではどうにもならない要素があるということにあります。
では,投手の勝ち星はどれくらい打線の援護に左右されるのでしょうか?今回はこれをテーマに分析をしていきたいと思います。
2.分析データ
2006年から2010年までに1シーズンに40イニング以上登板した先発投手376名を分析対象としました。
分析の前に,防御率と援護率の分布を示します。表1に平均値と標準偏差,最小値・最大値を示します。図1には防御率と援護率の分布を示します。


似たようなデータではありますが,若干援護率の方が値が高くなっています。
3.防御率と援護率と勝ち星の関係
これらの投手のデータを対象に,以下の予測式をたててみました。
・勝率 = 防御率 + 援護率
勝ち星だけでは登板回数が多い方が有利になるので,勝率で分析してみました。結果は以下のようになりました。
・勝率 =-0.98 × (防御率) + 0.85 ×(援護率) + 0.523
防御率と援護率についた係数は,表1と図1で示したように分布が異なるので,この値をそのまま比較することはできません。この分布の違いを調整した防御率と援護率と,勝ち星,勝率との関係を以下の図2-1と図2-2に示します。

予測式で表した関係を図示するとこのような関係となります。防御率と援護率の係数は矢印と同色の値で示してあります。
この分析の結果より,勝率の約6割強が防御率と援護率によって説明されるということがわかります。また,約6割強の内訳は,防御率が約4割,援護率が約2割の割合となっています。
以上の分析より,投手の勝敗に防御率と援護率が及ぼす影響が具体的にわかるようになりました。基本的には防御率の方が重要であることがわかりましたが,援護率も勝敗に影響することがわかりました。
4.ダルビッシュ選手の勝率予想
さて,この分析結果を元に,タイトルにもあるように,ダルビッシュ選手が20勝できるかどうかを検証してみたいと思います。ダルビッシュ選手の成績は以下の表2のようになっています

この防御率と援護率から,先ほどの予測式を使って予想勝率を計算すると以下のようになります。
2006年:0.592
2007年:0.646
2008年:0.637
2009年:0.757
2010年:0.664
実際の成績も20勝に届きませんでしたし,全ての試合で勝敗がつくと無理な仮定をしてこの予想勝率で計算しても20勝には届きません。つまり,この防御率と援護率では20勝には届かないということになります。
では,ダルビッシュ選手が20勝するには何が足りないのでしょうか?という分析は,長くなってきましたので,また次回にやっていきたいと思います。
Baseball Lab「Archives」とは?
Baseball Lab「Archives」では2010~2011年にかけてラボ内で行われた「セイバーメトリクス」のコンテンツを公開しております。
野球を客観視した独自の論評、分析、および研究を特徴として、野球に関するさまざまな考察をしています。
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